3.金属板葺き
軽量で、雨仕舞、耐候性に優れる。
熱伝導率が大きく、熱による膨張・収縮が大きいため、接合部に注意が必要。
遮音性能、遮熱性能は劣るので、雨音や熱の室内への影響を防ぐ対策が必要。
1)主要金属板葺き材
金属板の規格:定尺:3×6(サブロク、3尺×6尺、909×1,818㎜)、1×2(メーター板、1,000×2,000㎜) 小板:320㎜×1000㎜、365×1200㎜・・・・等
コイル:幅914㎜ 幅1000㎜ 等
2)木造建築に使われる主な金属板の葺き方の種類・特徴・勾配
3)金属板の接合法と留め方の基本
接合法:水の侵入防止(水返し)と、金属板の膨張・収縮に対処するため、はぜ掛けが一般的である。はぜ掛けには、平はぜと立てはぜがあり、立てはぜは勾配方向にのみ用いられる。
通常は一重はぜとするが、水密性を高めるときには二重はぜとする。はぜ部分には、収縮に対して逃げを用意するのが原則。
留め方:通常、仕上げ材には釘を打たず、吊り子を下地に釘打ちで取付け、仕上げ材をはぜ架けで吊り子に留める。リベット接合、はんだ付けの方法もある。
金属板葺きは、葺き方によらず、雨・風に対する軒先・けらば・棟の納め方が重要。
4)平葺き(一文字葺き)の各部の納め
a.軒先・けらば
① 広小舞・登りよどは、雨水の水切りをよくするため、垂木先端(鼻隠しを付けるときは鼻隠し先端)、登りよど側端から1寸(30㎜)程度以上外に出して取付ける。注 最近は「野地板切り放し」納めの例も見かけるが、材の小口は水を吸いやすく、広小舞を用いた方が垂木の振れ止め、雨水の侵入に対して確実である。
② 葺き材と同材で加工した唐草(からくさ)を広小舞・登りよどに釘で取付け、アスファルトルーフィンを端まで敷き込む。 はぜを設けた葺き材を唐草先端に引掛ける。
注 唐草は、軒先、けらばの補強と水切りをよくするために設ける材で、元来、1枚の金属板を上図左のような形状に加工した。
イ部分は捨てと呼び、幅は3寸程度(90㎜)、この部分を野地板に釘留めする。捨て上端の折り返しで、万一侵入した雨水を返す(水返し)。ロ部分に葺き板のはぜを掛ける。
近年は、イ部分を省略した唐草を、正面から広小舞に釘打ち留めとして、釘の頭をはんだ付け、あるいはシーリングする方法が増えた。
b.葺き板の留め方
① 先ず一列目の下端のはぜ(下向き)を軒先の唐草に掛け、上端のはぜ(上向き)に吊り子のはぜを引掛け、吊り子を釘で野地板に留める。
吊り子は、幅1~1寸5分(30~45㎜)程度、葺き板1枚(長さ914㎜)につき2箇所以上設ける(屋根面が大きいときには、葺き板の長さの通し吊り子を用いる)。
② 二列目の下端のはぜ(下向き)を一列目の上端のはぜ(上向き)に掛け、上端を吊り子で留める。
以下繰り返し。
③ けらばは、葺き板側面のはぜをけらば唐草先端に引掛ける。次項「瓦棒のけらば」参照。
c.棟 基本的な棟の納め方
① アスファルトルーフィングを野地板棟部分に被せ、棟板(あおり板・雨押え)でアスファルトルーフィングを押さえる。
注 板を先に取付け、アスファルトルーフィングを棟板側面で敷き終わらせる例もあるが、防水効果が減少する。
棟板側面に、棟包み板取付け用の吊り子(丁寧な仕事の 場合は通し吊り子)を釘留めする。
② 葺き板の上端は、棟板側面の高さまで折り上げ、 立ち上げる(吊り子は隠れる)。立ち上がりの上端には水返しのためにはぜを設ける。
③ 棟包み板を、吊り子のはぜに掛ける。 注 棟包み板の全幅(はぜ部分を含んだ寸法)を、原板幅914㎜の1/2以下(450㎜程度)にすると、材料に半端が出ない(棟板寸法を決めるときに考慮)。
他に各種の納め方があるが、水返しの原則は同じ。
d.谷
葺き板と同材の谷葺き板(できる限り長尺)を吊り子で取付ける。
谷葺き板の端部には、水返しのためのはぜを設ける。水返しを確実にするには二重はぜにする。「瓦棒の谷」参照。
谷葺き板の幅は、勾配、雨の降り方によって決める。 注 谷部は雨漏りの可能性が高く、設計にあたり、できる限り谷を設けない屋根形状とする。
e.壁との取り合い
葺き材を直接壁に納めることは避ける。
基本的な納め方
① アスファルトルーフィングを、野地板より壁側に立ち上げ被せ、雨押え板で押さえる。
注 雨押え板を先付けし、アスファルトルーフィングを雨押え板側面で敷き終らせる例もあるが、防水上効果が減少する。
②雨押え板の側面に、雨押え包み板取付け用の吊り子(丁寧な仕事では通し吊り子)を釘留めする。(上図では、吊り子を省略。)
葺き板の上端は、雨押え板側面の高さまで折り上げる(吊り子は隠れる)。
葺き板の立ち上がりの上端には、水返しのためのはぜを設ける。
③ 雨押え包み板を、吊り子のはぜに掛ける。
雨押え包み板は、上部を2寸(60㎜、住宅金融支援機構テキストでは120㎜)以上、壁下地内に立ち上げる。
(塗り壁の場合、左官職によっては、壁の防水紙は、全体の剥離につながるため用いないこともある。)
真壁の場合は、柱外面に板を流し、雨押え板を取付ける。
他に各種の納め方があるが、水返しの原理は同じ。