2.屋根葺きの手順と部材構成 

2022-11-14 16:44:13 | 同:屋根

2.屋根葺きの手順と部材構成

屋根葺きは、一般に、①垂木上に野地板を張り②軒先納め材(広木舞等)、けらば納め材切妻部分がある場合、登りよど等)を取付け③アスファルトルーフィング(防水紙)を敷き屋根葺き材を葺く④軒天井を取付ける、という手順を踏む。

・工事は、雨による木材の汚れを防ぐため、上棟からルーフィング張りまでは、間をおかずに作業を進めることが肝要である。

・瓦葺きの場合、ルーフィング張りまでを大工職、瓦桟を瓦職が打つ場合が多い。

 

野地板:厚さ12㎜程度のスギなど針葉樹系の無垢板材(相ジャクリ)、構造用合板(特類)、木毛セメント板、木片セメント板などが使われる。

耐久性の点で、スギなどの無垢材の方が適切(合板の場合、長年のうちに蒸れて腐る:ふける事例がある)

    構造用合板 特類:屋外又は常時湿潤状態となる場所(環境)において使用される構造用合板 主な接着剤 フェノール樹脂。

    合板の場合は、F☆☆☆☆適合品を使用。 F☆☆☆☆~F☆:ホルムアルデヒド放散濃度の基準。F☆が最も多く、建材として使用できない。F☆☆☆・F☆☆は使用面積制限がある。

軒先広小舞(ひろこまい)  野地板先端部分に広小舞を設ける。

   広小舞は、垂木の振れ止めの役割を持つ部材であり、野地板の切り口に雨水が侵入するのを防ぐ水留めでもある。瓦以外の葺き材の場合、広小舞に金属板を被せる。

よど():瓦葺きの場合には、広小舞の上に、瓦の納めのためによど()と呼ぶ材を設ける場合もある。

鼻隠し(端隠はなかくし):垂木の先端は、1)垂木の木口を表す2)鼻隠しで木口を隠す

軒の出:軒の出は外壁の防雨、日射調節を考えて決める。

      通常は側柱(がわばしら)通り芯から広木舞下端角まで外壁からとする場合もある。軒裏を塗り込める不燃材を張る場合は、その部分が屋根 葺き材と当たる位置。)     

軒の出:通常通り芯から広木舞下端角までの寸法

瓦葺き屋根の軒の出寸法は、瓦割付けによって決まり任意の数字にすることはできない。

洋風の外観にするため、また敷地面積の狭隘化(きょうあいか)にともない、建ぺい率や斜線制限の点で、軒の出を短くし、あるいはなくす例を見かけるが、雨が風をともなうことの多いわが国の建物では、外壁の防水・汚れ防止のため適切とは言えない。

側軒(そばのき)切妻部分では、外壁の防雨上、側軒の出が重要。 側軒の出は、見えがかりにも大きく影響する。

けらば登りよど  切妻部分では、側軒の野地板の端部に、勾配なりに登りよどを設ける。瓦以外では、金属板で包む。

    通常、軒先の広小舞けらば側にまわり、登って行く形をとる(「登り広小舞」と呼ぶ方が適切か)。

破風板(はふいた)切妻屋根の場合、破風板は、母屋の木口の腐朽・風化を防護する。 腐朽に強いスギ、サワラ、ヒノキなどを使う。 

        通常、垂木外側に破風板垂木型たるきがたとも呼ぶ)を取付け、登りよど破風板に被せて取付ける。破風板なしで垂木表しとする場合もある。

        破風板を金属板でくるむことがあるが、金属板の内側への水分の滞留→腐朽に注意が必要。

 日本建築辞彙 明治39年発行

       【広木舞】軒先に於て、垂木上に取り付けたる長き木なり。・・その幅三寸六分、厚さ八分程を普通とす。・・・  

       【】  広木舞の上にある木にして、幅四、五寸、厚さ一寸五分程度のものなり。に連続して<垂木形(破風板)>に平行する木を<登り淀>という。

  :葺き材により異なる。

防水紙:葺き材下面に生じる結露などの影響を防ぐための下葺き材。一般にアスファルトルーフィング*が用いられる。かつては杉皮が用いられている。

    *有機繊維を主成分とした原紙にアスファルトを浸潤させ両面に鉱物質粉末を付着させたもの。 

    アスファルトルーフィング  940:幅1×21m(従来の1巻22kg品 通常使われる)、同1500:幅1×16m(従来の1巻35kg品)、

    改質アスファルトルーフィング:厚み1.5㎜ 幅1×16m 破れにくい 合成高分子系ルーフィングシート:厚み1~2㎜ 軽量

葺き材金属板(銅板、鋼板、ステンレス板、アルミニウム板など)、補強成型セメント板彩色ルーフィング(アスファルトシングル)など 

     彩色ルーフィング(アスファルトシングル)は、法22条区域では使用不可。→不燃シングル

 

軒天井の仕様

 a.垂木表し 広小舞、淀、垂木、野地板表し。 準防火・防火地域では不可。   

b.鼻隠し付き垂木表し 広小舞、淀、垂木、野地板表し。準防火・防火地域では不可。

 

a・b)’垂木、野地板表し 準防火地域 (令和元年告示195号、平成16年告示789号)

①準耐火45分 野地板30㎜以上、面戸板45㎜以上  

②準耐火1時間 野地板30㎜以上、面戸板12㎜以上、漆喰等厚40㎜以上 

 ③準耐火1時間 野地板30㎜以上、面戸板30㎜以上、外か内に漆喰等20㎜以上

 

c.鼻隠し付き勾配天井張り 垂木下面に天井材を張る(下地を設ける場合もある)。母屋を隠す場合もある。 

d.鼻隠し付き陸天井張り天井下地を設け、天井を張る。

    

広小舞は厚7分(21㎜)以上の耐朽性のある材を用いる。(垂木を欠き込み野地板同面どうづらで取付けると確実。)

鼻隠しには、垂木の振れ止め、垂木の木口保護の役割がある。耐朽性のある材を用いる。

 素地仕上げ(+塗装)が普通(金属板で包む場合もある)。耐朽性のある材:ヒノキ、スギなどの針葉樹。

鼻隠しの取付け角度は任意。通常は垂木に直角、または垂直が多い。 

  古建築、和様の建築では一般に鼻隠しを用いる例は少ないが、東大寺南大門(奈良県奈良市)、浄土寺浄土堂(兵庫県小野市)など大仏様建築では鼻隠しが用いられている。また明治期の擬洋風の建物にも用いられている。

 

に使われる天井仕上げ材は、板材、合板または補強成型セメント板などが一般的で、必要に応じて塗装をかける。

準防火地域では、延焼の恐れのある部分の軒天井は防火構造としなければならない。

 

浄土寺浄土堂 軒先鼻隠し 鎌倉時代1200年頃 兵庫県小野市 

 垂木先端に鼻隠しを取り付ける。垂木は2本おきに鼻隠し平ほぞ差し(他は斜め大入れ)、鼻隠しから釘打ちとし、垂木の捩れ、暴れを防いでいる。東大寺・南大門も同様。 

    部分矩計図及び鼻隠板仕口図 国宝 浄土寺 浄土堂修理報告書(極楽山浄土寺)より 

 

 外観 日本の美術№198(至文堂)より

 

旧登米高等尋常小学校校舎 軒先鼻隠し 1888年(明治21年)竣工 宮城県登米市 

 広木舞下端に繰形を施した鼻隠しを垂木に取付ける。 

  部分立面図・部分矩計図 図は重要文化財旧登米尋常小学校校舎保存修理工事(宮城県登米町)より 

 

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