お願い。

　いま好きな人はいる？　あるいは大切な人はいるかな？
　仮にいるとして、その人から真夜中に電話があって、寝ているところを起こされて「ただなんとなく声が聞きたかったから」なんて云われたら迷惑かな？
　いや、そりゃあ、嬉しいってことはないだろうさ。迷惑じゃないっていったら嘘だよね。

　でも、お願い。

　怒らないで。

　お願いだから優しくしてあげて。

　それは大切なことだと思うんだ。夜中にいきなり電話をかけてくるなんて、なにかがあったはずなんだよ。あるいはなにもないのかも。でも、そうだとしても、怒らないで欲しい。
　あなたが怒らなければ、次はきっと相手が受け入れてくれるから。あなたが理由もなく寂しくなって、ふいに電話をしたとしても、相手はきっと受け入れてくれるから。

　だから、怒らないで。

　そして、電話をかけて。

　日常を過ごしていて、ふいに孤独を感じたときや、どうしようもなくやるせなくなったとき。理由なんかなくて、ただ誰かの声を聞きたくなっただけのとき、電話して下さい。
　声を聞きたいと思った人に。

　もし電話を受けた人は優しくしてあげて。電話をかける人も、次に誰かの電話を受けたらどうか優しくしてあげて。

　本当は、困った時にはいつでも電話していいよ、なんていって番号を書きたいところだけど、わかるよね？　僕じゃ駄目なんだ。悲しいけど、僕にはその資格がないんだ。

　資格を持っているのはあなただけ。

　誰かが頼りたいと思うあなただけ。

　電話のベルが鳴るのがその証拠。

　どうか、あなたの優しさに頼らせて。僕の代わりにあの人の支えになって欲しい。

　あなたにしか出来ないことだから。