対話

　週刊マガジンで大ヒット連載中の『オーバードライブ』（著者：安田剛士）が大好きです、という話は散々しているから、長いお付き合いの方には知って頂けていると思いますが、今日はちょっぴり長いお話し。

　今週号で、主人公の頼れる先輩寺尾晃一と、『皇帝』鷹田大地の死闘に決着がつきました。
　互いに全てを出しきった長い長い戦いの最後は、二人の静かな対話でした。
　残り僅かとなった坂を二人で懸命に登りながら、目を見ることなく、口を開くことなく語り合います。
　思えば、この漫画は最初からこうでした。登場人物たちがよく喋る。それは実際に口を開いていることもあるけれど、それだけではなく、ペダルを漕ぎながら、心の中で言葉を紡いでいくのです。
　時に一方的に、時にちぐはぐな会話を繰り返し、そして理解し合っていく。
　ロードレースはそんなにもコミュニケーションに優れた競技には見えないのに、魂を振り絞って走る彼等は、時間を空間も超越し相手のことと自分のことを理解する。
　その姿があまりに美しすぎて、その姿があまりに羨ましくて、僕はこの漫画に惹かれているのかもしれません。

　去年の話だけど、『早春拳』という中編小説を書きました。格闘技ものではあるけれど、実を言うとこの漫画に影響されて書いたものです。この漫画のように、理解し合うキャラクター達を描きたくて書いた小説ですが、果たしてそれがうまくいっていたかどうか。

　今週号の『オーバードライブ』を読んで、またそんな話が書きたくなりました。嬉しいような、困ったような。

　今年はアニメも始まるし、ますます『オーバードライブ』から目が離せません。
　そして来週は、山岳に全てをかけるクライマー『大和　武』の出番です。