君の一番

　『ピアノの森』最新話を読んだ。

　パン・ウェイ。

　つらい幼少時を乗り越え、ただひとりの、阿字野 壮介のピアノを受け継ぐピアニストになろうとしている青年。

　他者を寄せ付けようとはせず、自分自身を信じ、過去のトラウマやしがらみにがんじがらめになりながら、それでも救いを求めてピアノにすがっているピアニスト。

　その彼が、神のようにすがっている阿字野 壮介と初めて出会う。

　自身の過去を恥じながら、彼に受け入れて貰おうと、許して貰おうと言葉をつぐむ。

　そんな彼に対し、阿字野は彼に望みを託す。

　自分のピアノの先を。

　事故により辿り着けなかったその先に、彼なら行けるんじゃないかと。

　阿字野は言う。

『君の一番が聴きたい』

　たとえそれが、教え子の一ノ瀬海を倒すことになったとしても、君の最高の一番が聴きたい。

　僕も聴きたい。

　くだらないこの世の中の一切合財から解き放たれた、パン・ウェイの最高の一番が聴きたい。

　聴く人を、そして自分自身をも幸せにするような、そんな最高のピアノが聴きたい。

　もちろん、漫画の話だけど、パン・ウェイの最高が聴きたいんだ。