
野菜、果樹…見た目と味楽しむ
- <noscript></noscript>花豆(中央)やナスの葉(手前右)などが庭を彩る。「どうしたらこんなに立派に育てられるのかと聞かれるのがうれしい」と名小路さん(長野県小諸市の「停車場ガーデン」で)
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長野県東部にある小諸市。中心部のしなの鉄道小諸駅前に市立公園「停車場ガーデン」がある。
その公園内に「おいしいガーデン」が先月新たにオープンした。約250平方メートルの敷地には、主に野菜が植えられている。
9月中旬のガーデンで目立つのは、花豆(ベニバナインゲン)の赤い花。長さ約3センチある大きな実を小諸市周辺では赤飯に入れたり、煮豆にしたりして食べる。地域で愛されている農産物だ。花豆はパラソル型の支柱で誘引され、2メートル以上の高さにこんもり茂っている。
この庭では、異なった葉の色の野菜を立体的に組み合わせてあり、畑のようにはみえない。バジルなどのハーブ類やイチゴも植えられている。
「野菜畑で花の美しさや葉の形の面白さに驚いた人も多いはず。そこで、庭園に野菜の美しさを取り入れようと考えたのです」と管理するNPO法人「こもろの杜(もり)」の名小路(なこうじ)雄さんは話す。収穫した野菜やハーブは一部、隣接するカフェの料理に使うが、基本的には見て楽しんでもらう庭だ。
公園近くには、小諸城跡にある観光名所の「懐古園」があり、多くの観光客が訪れる。「花豆のような独特の食文化も、その植物を植えていれば観光客に説明できる。庭から地域の文化を発信していきたい」と名小路さんは話す。
野菜や果樹などを植え、観賞もできるこうした庭は「エディブルガーデン」と呼ばれ、最近、各地で広がっている。エディブル(edible)とは食べられるという意味だ。
昨年6月にオープンした、横浜市の商業施設「マークイズみなとみらい」5階屋上にも“食べられる庭”が作られた。約1000平方メートルの敷地には約30種類の果樹のほか、年間約100種類の野菜やハーブが植えられる。
「身近な野菜や実のなる果樹が多いので、親しみを持って見てもらえるようです」と管理する「グリーン・ワイズ」の清水章子さん。今の時期、温州ミカンが実り始めており、10~11月にかけてオレンジ色に色づくという。
こちらは、収穫や試食のイベントを毎週のように開いており、キュウリにテナントのみそ専門店のみそを付けて食べるといったプログラムが好評だという。
食べられる植物を植えた庭作りは、高齢者施設でも広がっている。東京都足立区で10月開業するサービス付き高齢者向け住宅「グレイプスガーデン西新井大師」(62戸)でも1階の庭に、サトイモやラッカセイ、シソなどを植えた。生花販売大手の日比谷花壇が事業主で、得意分野を生かした施設運営を目指すという。「庭を見るだけでなく、味見できると生活が楽しくなる」と日比谷花壇の担当者。
“食べられる庭”作りを自宅で手がけ、講演なども行っている建築家の芝静代さんは「果樹や野菜を植えることで、視覚だけでなく、嗅覚や味覚などの五感を刺激する体験型の庭になります。子どもにとってもよい経験になります」と話している。
停車場ガーデン「おいしいガーデン」 長野県小諸市相生町1の1の9、しなの鉄道・JR小諸駅前マークイズみなとみらい 横浜市西区みなとみらい3の5の1、みなとみらい線みなとみらい駅直結