
映像では、拘束されているジャーナリストの後藤健二さん(47)解放の交換条件として、ヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を要求しており、日本政府はヨルダン政府に事態打開に向けた協力を要請している。
インターネット上に投稿された映像は、写真を持つ後藤さんの静止画に、後藤さんらしき男性の声で「彼ら(イスラム国)はもう金銭を要求していない。サジダ(・リシャウィ死刑囚)を彼らに渡せば、私は解放される」などと英語の声明が付けられていた。
この映像の真偽を巡り、首相は25日のNHKの番組で、「残念ながら今の時点で、信ぴょう性は高いと言わざるを得ない状況になっている」と認めた。
菅官房長官もこの後の記者会見で、「現時点で、(湯川さんの)殺害を否定する根拠は見いだせない」との認識を示した。映像に加工された形跡がないとみられることなどを総合的に判断したという。
また、リシャウィ死刑囚釈放という新たな条件への日本政府の対応について、首相は同じ番組で、「事態が動いているので、答えは控えたい。人命第一の観点から(死刑囚を収監中の)ヨルダンとも緊密に協議、連携して対応したい」とし、明言を避けた。
政府関係者によると、リシャウィ死刑囚の釈放を求めるイスラム国の意向について、政府は映像がインターネット上に投稿される以前に、未確認ながら情報を得ていたという。菅氏は記者会見の中で、「様々な情報があったが、確たることを申し上げる状況にはなかったということだ」と述べた。
首相が24日夕にヨルダンのアブドラ国王と電話で会談した際に、死刑囚釈放要求についても対応を協議したとの見方が出ている。政府は、ヨルダンの首都アンマンの現地対策本部で指揮を執る中山泰秀外務副大臣らを通じ、ヨルダン政府との連携をさらに強めていく方針だ。
一方、首相は25日、オバマ米大統領と約10分間、電話で会談し、「(イスラム国に対し)後藤さんに危害を加えないよう、直ちに解放するよう、強く要求している。米国と連携していきたい」と協力を求めた。大統領は支援を約束した。両首脳は「テロに屈することなく、世界の平和と安定に協力していく」ことも、改めて確認した。
首相はこれに先立ち、首相公邸で岸田外相らと対応を協議した。岸田氏はその後、外務省で記者団に対し、「あらゆるルートを活用して、後藤さんの解放に向けて全力で取り組むことを確認した」と語った。