goo blog サービス終了のお知らせ 

政治そのほか速

政治そのほか速

本格的な準備をしよう ~人編<1> ボランタリーチーム~

2015-02-09 13:44:04 | キャリア・教育
 

最初は「自分1人」が基本

  • <noscript></noscript>インターン(左)と打ち合わせ(2012年秋ごろ)。このインターンはその後、事務所スタッフになった
  •   今回は、本格的な準備の「人」について述べる。

      立ち上げの段階では、お金はほとんどない。なので、「最初は自分1人で動く」が基本だ。助成金やクラウドファンディングでお金が獲得できたとしても、いきなりスタッフ採用のために使ってしまうのはリスクがある。初期の段階では、基本的には固定費を最小限に。これが鉄則である。

      とはいえ、立ち上げ時とはいえ、「たった1人で動く」には限界がある。そこで活用したのが「スタートアップ・ボランティア」だ。彼らに手伝ってもらい、ボランタリーチームをつくるのだ。

      ボランティアには2種類ある。ひとつが「学生インターン」、もうひとつが「社会人プロボノ」。両者では、「コミットメント」(関与)してもらえる程度が異なる。ゆえに「仕事の内容・範囲」もおのずと違ってくる。

    • <noscript></noscript>

        
       

      「時間」を提供してくれる学生インターン

        学生インターンの多くは、社会人経験がほとんどないがゆえに、仕事の能力をいきなり社会人並みのものを期待することはできない。しかし、彼らの強みは、「時間」を提供してくれることにある。休みの時は週5日。平日でも最低でも週3日。期間は基本的に半年だ。前半3か月は慣らし期間。後半3か月でようやく戦力となってくれるとイメージするといいだろう。「休学して参加します」くらいにコミットしてくれるやる気がある人が理想だ。

        仕事の内容は、立ち上げの際に必要な仕事のアシスタントが基本。具体的には、助成金などの申請書類作成や事業計画などの議論に加わってもらう、などだ。

        フローレンスの場合も、古橋君という立命館アジア太平洋大学の学生インターンとして立ち上げに関わってくれた。彼は社会起業家志望で、大学を1年休学して九州から東京に出てきたツワモノ。立ち上げに際して、本当に大きな力となってくれた。
       
       

      「知識」や「技術」を提供してくれる社会人プロボノ

        一方、社会人プロボノは、プロとして仕事を持ち、その専門性でお手伝いをしてくれる人たちだ。時間に限りはあるが、知識や技術を提供してくれる存在。関わってもらえるのは、仕事後アフター6の数時間や休日などとなる。

        こうした立ち位置ゆえに彼らには、期間限定で、「これ」と区切ったかたちで仕事をお願いするのがいい。たとえば、デザイナーの人だったら「このチラシの作成を2週間でお願いします」、マーケッターの人だったら「この市場の調査を1か月でお願いします」といった形式だ。

        それぞれのプロフェッショナリティーとモチベーションの在処(ありか)、コミットできる時間や期間を連立方程式に入れて、最適な仕事を任せよう。
       
       

      どのようにして集めるか

        こうしたボランティアたちをどう集めるかだが、たとえば、学生インターンならば、その募集をサポートしてくれる組織を利用しよう。代表的なものにNPO法人ETIC.の「アントレプレナー・インターンシップ・プログラム」がある。

        また、社会人プロボノの場合は(学生インターンもだが)、フェイスブックやツイッターなどのSNSや、知人のツテを活用して募るという方法があれば、NPO法人サービスグラントのように、プロボノ支援NPOもある。
       
       

      ボランタリーチームの適正人数は4~5人

        立ち上げ時のボランタリーチームは、4、5人が適正規模である。「手伝います」と言ってくれる人がたとえ10人、20人集まっても、そこまで規模を広げるのはよしたほうがいい。なぜなら、そんな大人数をマネジメントすることはできないからだ。

        ボランティアマネジメントでは、「お金」以外のもので彼らのやる気を引き出す必要がある。

        そもそも、彼らがなぜ手伝ってくれているのか。学生インターンであれば、みずからも起業家志望で、社会起業を手伝う経験がほしかったり、あるいは経営者のビジョンに惚(ほ)れていたり、何かやりがいを得たかったり……。社会人プロボノの場合は、起業のプロセスなど会社では味わえない経験をしたい、何か社会貢献がしたい……などであろう。

        経営者はこうした動機に応えて、彼らをモチベートしていく必要がある。

        そこで重要になっていくのが「コミュニケーション」だ。彼ら一人ひとりに役割を与え、適宜、その進捗(しんちょく)を確認し、仕上がりをほめ、感謝する。こうして彼らのやる気を引き出し、かつ維持していくのだ。それを1人の経営者が行っていくとなると、4、5人が限度であることが多い。
       
       

      一人ひとりに合った関わり方をする

        ボランティアたちとのコミュニケーションでは、おさえておくべきことがいくつかある。

        その1つが、仕事をお願いするたびに、最初にそのゴールを明確に定義することだ。あいまいだと困惑させかねないし、モチベーションも下げてしまいかねない。

        また、それぞれのコミットメントの度合いによって、仕事の幅を変えていくことも重要だ。

        たとえば、学生インターンのようにほぼ毎日という頻度でかかわってくれる人には、「何でも一緒にやろうよ」くらいに仕事の幅を広げてあげて、経営者と共に事業を創っている感覚を得てもらうことが、すなわち彼らのモチベーションに繋(つな)がることも多い。一方、社会人プロボノのように関われる時間が限られている場合は、「この期間に、この仕事の、この部分を手伝ってください」と、仕事の幅をある程度しっかりと区切ってあげたほうがいい。リソースに限度があるのに、「あれもこれも」では、結局、仕事がとっちらかってしまうからだ。

        さらに忘れてはいけないのが「情報共有」だ。

        まず、メーリングリスト等を使って、連絡事項を全員で共有する。しかし、すべてをメールですませるのは、危険性もある。メールは基本的には連絡ツール。体温を乗せづらい面もあるため、メンバーのモチベーションの向上には限定的だ。直接話すコミュニケーションもコンビネーションで入れこまなければならない。

        そこで、週1回の定例会議を設けるなど、メンバーが顔を合わせる場をしっかりと確保することだ。ただし、メンバー全員が一堂に会するのは容易ではない。なので、「●●プロジェクト会議」等、テーマごとに関係のある人が集まれるとかたちをとるのが妥当だろう。メンバーが遠隔地の場合等、直接が難しければ、スカイプ等のビデオ会議システムを活用する手もある。
       
       

      チームがまわりつづける「仕組み」づくり

        立ち上げ期のボランティアマネジメントにおいて(またそれ以外の期間においても)、コミュニケーション以外にもう1つ重要なことがある。「仕組み化」がそれだ。

        ボランティアはかなりの頻度で入れ替わる。たとえば、フローレンスでは、学生インターンは基本的に半年で交代だ。経営者は彼らが入れ替わることを前提に、それでもチームがまわっていくように仕組み化していくことの必要がある。

        それには、「先輩が後輩を教える」という引き継ぎ方法を仕組み化しておくことだ。つまり、新しい学生インターンに対して、経営者ではなく、いまのインターンが教える仕組みをつくるのだ。そのための「仕事のマニュアル」も学生インターンに作成してもらう。

        更に、例えばチームの進捗に関してブログやSNSで発信しておくと、それがアーカイブになり、チームの歩みといった暗黙知も伝えやすい。こうした仕組み化によって、学生インターンが入れ替わっても、チームは「一からやり直し」といった事態を防げ、ある程度の推進力を維持していけるわけだ。
       
       

      大切なのは、ほめて伸ばすこと

        最後に、ボランティアとのコミュニケーションにおいて、特に大切にしたいことを述べておこう。

        「ほめて伸ばす」

        彼らはボランティアである。お金をもらってやっているわけではないのだ。そこが「金もらってるんだから、やって当たり前」な通常の仕事と大きく違う。また必ずしも、100パーセント期待に完璧に応える仕事ぶりではない場合も多い。学生インターンにいたってはほぼ社会経験ゼロなので、なおさらだ。

        そうした中でも、良いところを見つけてほめる。完璧からの遠さを指摘する前に、アウトプットしたことをまずほめ、改善点はその後だ。

        お金を払わないで、最高のパフォーマンスを上げてもらうボランティアマネジメントをマスターすれば、お金を払う普通のマネジメント能力はいやが上でも向上するだろう。


マネタイズモデル(行政事業受託モデル)

2015-02-09 13:44:04 | キャリア・教育
 

  
 

行政事業受託モデルとは

  簡単に言うと、行政の仕事のアウトソース(外注)である。

  • <noscript></noscript>
  •   行政が税金と公務員を使って行う事業を、民間に代わりにやってもらう。税収が右肩上がりの時は、何でもかんでも行政が自分たちでやっていたが、税収が頭打ちとなり、予算制約がある中で、施設を管理し、事業を行っていかなくてはならなくなり、企業やNPO等の民間に外出しを行うようになっていった。
     

    どうやって受けるのか

      基本的に、受託のお仕事の情報は、「公募」というプロセスにかけられる。つまり、「いついつまでにこういうお仕事をしてくれる事業者を募集していますよ」ということが、役所のホームページ等に掲載される。

      そこに書かれている要項や、説明会に行き、所定の様式に従って公募用紙を埋め、書類審査を受ける。更には面接等プレゼンテーションの機会を経て、晴れて受託成功となる。
     

    受託のメリット

    • <noscript></noscript>フローレンスが運営する「おうち保育園」で子どもと遊ぶ。おうち保育園は、マンションの空き部屋や空き一軒家を使い、小規模で家庭的な保育を提供する

        何といっても、行政事業受託は、安定している。毎年、必ずお金は入ってくる。通常の事業の場合はお客さんが来ないと潰れるが、行政事業受託の場合は、成果と連動していない場合も多い。この事業をとりあえずやったら、いくら、という形でもらえる。(無駄遣いのように聞こえるかも知れないが、利用者の有無にかかわらずセーフティーネットとして必要なものもあるためだ)

        また、行政事業を受託すると、ある程度の信頼性が付与される。「◎◎市の事業を受託しています」とホームページに書けるため、どこの馬の骨か全く分からないNPO、という状態からは脱却できる。
       

      受託のデメリット… (1)ペイしない

        一方、デメリットもある。まず、信じがたいことだが「そもそもペイしない」条件の受託事業もある。例えば、「NPOはボランティアだから」と、正当な人件費を入れこんでいないという例もいまだに存在する。

        完全に足元を見られているのだが、それでも実績づくりのために申し込むNPO等がいるので、役所としても値上げするインセンティブが湧かない。よってそのまま、という悪循環になっている。こういう事案には手を出してはいけない。後でつらくなる。

        また、ペイする案件もあるが、全体的には利益率は低い場合が多い。最初の見立てと異なり、後から色々な費用がかさんできて、結局、利益が出ないと忙しいだけ、というケースもよくある。事業に手を挙げるかどうかは、同様の事業を行っている事業者にヒアリングを行い、費用を厳しめに見ておくのは基本だ。
       

      受託のデメリット…(2)資金繰り悪化

        また、自治体の予算の関係で「支払いが年度末一括」というケースもある。立ち上げ当初のNPO等の資金繰りは厳しい。数百万円を立て替えざるを得なくなり、キャッシュフローが悪化することもある。

        ちなみにこうした場合は、役所との契約書を担保に「ブリッジローン」を政府系金融機関と組むのをお勧めする。通常だと信用力のない弱小NPOでも、役所からの支払いはほぼ確実なので、年度末までの間の資金ということで貸してくれるのだ。
       

      受託のデメリット…(3)士気の低下

        役所の委託事業は、仕様書によってガチガチに決められている場合が多い。例えば何かの施設であれば、開所時間から閉所時間、人員配置、提供サービス内容等々。

        役所としては、最低限の住民サービスを担保したいし、どんな事業者が入ってこようと、つつがなく事業が回ってほしい。

        しかしNPOとしては、自分たちの独自色を出し、住民たちのニーズを拾い上げ、新たなサービスをしたいと思ってくる。

        例えば、私たちがある自治体の施設を受託した時の話だ。働く親の子どもを預かるのだが、18時に閉所時間が定まっていた。しかし企業の定時は18時が一般的なので、通勤時間を考えて、18時半まで開所時間を延ばしたいと自治体に申し入れた。それが住民サービスを向上すると信じて。けれど自治体から返ってきた答えは「NOだ。他の施設と整合性を取らなくてはいけない。もし、あなたたちだけが違ったサービスをしたら、他の施設が『なぜ、あそこはここまでやってくれて、他はやらないのか』というクレームが来る」というものだった。

        これで現場は「より良くしていこう」という気をなくしたのは言うまでもない。
       

      受託の(わな)

        さて、上記のようなデメリットのある仕事を続けていくとどうなるかというと組織の中で「受託文化」が形成されていく。

        分かりやすく、通常の自前のアイディアで、顧客(利用者)からお金をもらう「自主事業」と比較してみよう。
       
       

      自主事業受託事業お金を払ってくれる人利用者(顧客)行政(役所)事業の自由度高い。むしろ創意工夫しなくては生き残れない低い。基本的には仕様書に書かれた通りやる事業の安定度低い。うまく行かなければ数ヶ月で終了高い。基本的には年度単位の契約だが、永続性を暗黙的に求められることが多い事業のスピード速い。間違ったら、すぐに軌道修正遅い。何か問題が出ると、役所にお伺いを立てて、その返信を待たなくてはいけない場合がある成果の位置づけ成果=収入なので、成果志向に成果=収入にならない場合は、成果に対する貪欲さはなくなっていく現場職員のモチベーション管理成果を出すことが人助けと収入増になるため、成果と連動した評価によって動機付け収入とは関係しないが、組織内部の独自ルールとして目標を定め、それをクリアさせるようにする

       
       

        ある意味、インセンティブの構造が真反対なのをお分かり頂けるだろうか。この受託事業に慣れるとどうなるか。
       
       ・利用者よりも役所寄りの姿勢
       ・新規事業へのリスクを取らない
       ・改善への貪欲さをなくす
       ・徹底してニーズを読むシビアさがない
       

        という受託文化ができてしまう。すると受託事業しかできなくなる。そうなると、事業に占める受託の割合が増え、いつしか完全な行政下請け組織が出来上がってしまう。

        行政受託事業は利益率が低い場合が多く、案件の数も限られていることから、組織の全体戦略を描こうにも広がりを持てない。
       

      受託事業の使い方

        こうした難点を持っている受託事業だが、使いようによってはうまく機能する。

        まず、組織の魂がこもったイノベーティブな自主事業をあくまで主体にし、受託事業は全収入のうちの何%と定めて、それ以上の大きさにしない、という自主制約を持つ。

        さらに、受託事業を人材の育成の場として、ここで所定の期間学んだ後、本業である自主事業に職員を異動させることで、技能や知識をつけさせる。また、新規で採用した職員の研修の場として活用してもよいだろう。
       

      行政への提案

        最後に自治体や行政の方々に言いたいのは、行政受託事業のパフォーマンスを上げる方法だ。

        はっきり言って今の日本の行政委託事業は、事業者のモチベーションを上げる仕組みになっていない。むしろ事業者のイノベーションを殺す仕組みと言っても言い過ぎではない。

        参考になるのは、米ニューヨークのセントラルパークの受託事業だ。セントラルパークはセントラルパーク・コンサーバンシー(CPC)というNPOに委託されているが、市はCPCとガチガチの仕様書に基づいた契約書ではなく、抽象度の高い契約内容にしておき、CPC独自でボランティアを集めたり、寄付集めをする自由を認めたりしている。結果、市からの委託金の6倍以上の寄付を集め、世界中から観光客を引き寄せている。要は「好きにやってくれ。でも成果は出してくれ。でなければ契約更新しないよ」という形式だ。

        プロセスを縛る仕事の出し方ではなく、成果を約束させる仕事の出し方へ。住民もNPOも役所も、そっちの方が幸せなのではないかと思うが、どうだろうか。


「経済的にどう成り立たせるか」を考える(1)

2015-02-09 13:44:04 | キャリア・教育
 
  • <noscript></noscript>オフィスの机の上にはあまりモノを置かない
  •   NPOのマネタイズ。

      奇妙な響きに聞こえるかも知れない。日本ではNPOは「ボランティア団体だからお金なくても大丈夫でしょ」という認識が圧倒的多数を占めている。

      これに対して、僕は明確に解答がある。

      そんなわけがないでしょ、と。

      あらゆる団体は、その活動のために資金を必要とする。そして定常的に社会の問題解決に挑むためには、収入から活動経費を差し引いた額がプラスにならなくてはいけない。つまり、利益がないとダメなのだ。

      なぜなら、利益がなければ活動を大きくすること(そして、より多くの人を助けること)に投資できないからだ。今年100人の人を助けた。来年200人の人を助けるために、今より多くの人にチラシを配ろう、というのも利益があってこそだ。

      じゃあノンプロフィット(非営利)じゃないじゃないか。と多くの人は言う。これまで100万回NPO業界の人間が言っても、この社会的誤解はいまだ解けていない。けれど100万1回目の説明をしよう。非営利とは、利益を得てはいけないのではなくて、利益追求「のために」存在するのではない、ということ。

      営利団体(株式会社が代表)と非営利団体の違いはシンプル。利益を株主等に分配する(できる)営利団体と、利益を株主等に分配しない(できない)非営利団体、という違い。
     

    非営利団体も利益が大事

    • <noscript></noscript>立ったままスタッフと談笑

        これだけだと分かりにくいから、分かりやすく歴史のお話をしよう。歴史上初めての近代企業と言われるのは、東インド会社等の貿易会社。遠くアジアまで胡椒(こしょう)を取りに行って儲(もう)けよう、と。しかし航海は暴風雨や海賊に襲われるリスクが高い。一人じゃお金を出しきれない。だから何人かでお金を出そうね。儲けもこの何人かで山分けね。というのが、株式の始まりだ。

        なので、歴史的には株式会社というのは、株主(リスクを取ってお金を出した人)の利益を最大化するための道具として始まったのだった。

        一方NPOというのは、病院や大学等、企業が歴史に誕生するはるか前から存在していた。すなわち、「病気で困っている人がいるから治そう」「知りたいことを頭の良い人と研究しよう」という、直接お金を稼ぐことを目的とせず始まった仕組み。多くは村人の寄付や、自前で畑を持ったりして運営していたのだった。

        そんなわけで、原則的には営利団体(株式会社)は利益を最大化し、それを株主に配分するという装置だし、非営利団体は利益を株主に分配せず、利益が出たらもっと目的追求のためにそれを使う、ということになる。

        (なので会計上は利益と呼ばず、剰余金〈余ったお金〉と言う)

        さて、そういうことで、NPOといえども利益は出して良く、むしろ利益を出さねば健全な経営はできないのである。しかし、市場の中で受益者がお金を払う営利事業と異なり、NPOの受益者はホームレスだったり難民だったり子どもたちだったりして、直接お金を請求できない場合が多い。こうした中、それでも利益を出して健全に経営していくのはどうすれば良いのか、というのが「NPOのマネタイズ」のテーマになる。

        と、ここまでで紙幅が尽きてしまったので、次回からマネタイズの具体的な部分に入っていきたいと思う。


「感じろ!そして考えろ」

2015-02-09 13:44:04 | キャリア・教育
 
  • <noscript></noscript>病児保育を手がけるNPO法人フローレンスのオフィス
  •   「痛みを感じろ」と前回言った。心の棘(とげ)と向き合うことで。

      そこから問題意識を獲得できる、と。では問題意識を獲得できた人間は、そこから何をすべきか。

      名作SF「スター・ウォーズ」では、「考えるな、感じろ(Don’t think. Feel.)」という有名なフレーズがあるが、ソーシャルビジネススタートアップでは、「感じろ。そして考えろ」である。

      例をあげて話したい。僕は子どもが熱を出してどこにも預けられないことで、失職してしまう母親たちの話を聞き、憤った。心の痛みを「感じ」た。そしてそこから考えた。「なぜだろう?」と。

      「なぜ、保育所は預からないのか」

      「なぜ、会社を休めないのか」

      「なぜ、代わりに預かるサービスはないのか」

      その「なぜ」の答えを、現場に分け入って、人の話を聞いて探しまわった。なぜ保育所は預からないのか。他の子どもたちが感染してしまうからだ。感染リスクは行政サービスである保育所は避けたい。

      なぜ会社を休めないのか。看護休暇制度は存在しているが、職場の空気は休みを許容しない。なぜだろう。それは仕事がその人に張り付いていて、休むと仕事自体が止まるからだ。

      なぜ代わりに預かるサービスがないのか。調べてみると、なくはなかった。行政が病児保育の施設に補助金を出し、主に小児科の中で預かる仕組みをつくっていた。でも既に行政サービスはあるのに、なぜあの人はその仕組みを使えず、会社を辞めざるを得なかったのだろう…。

      このように、「なぜ」からリサーチは進む。リサーチを進めるためには、現場の関係者に話を聞くことになる。(時に自ら、現場で体験したり、手を動かしたりもする。)

      聞くと、最初は単なるイメージだったものが、輪郭を伴って肌触りと共に理解できるようになる。

      目の前の困っている人の姿に、我々は心の痛みを「感じる」。しかし、同時に「何がその人を苦しめる状況を生み出しているのか」を問うことで、「構造」が見えてくる。

      「構造」が見えなくては、解決策は見えてこない。「構造」の分析の無い解決策は、チープで実際にやろうとすると実現できない場合が多い。例えば「保育園が足りないなら、もっと保育園を増やせ」とか、「虐待が増えているから、親を教育しろ」というようなものが典型だ。

      「構造」を理解することで、「ここを押せば問題が解決できるかもしれない」という「仮説」を得られる。その仮説を更なるリサーチを加え洗練させ、ソーシャル・ビジネスモデルの構築に繋(つな)げていくプロセスを、次回は紹介したい。


増えてます! 「無制限有給休暇制」

2015-02-09 13:44:04 | キャリア・教育
増えてます! 「無制限有給休暇制」 

  私事ながら、夫の勤め先のテクノロジー企業が2015年から「無制限有給休暇制」を施行することになりました。

  もっと正確に言うと「有給休暇制度」を廃止し、休みたかったらいつでも周囲と相談して休むように、そして何日休んだか会社は記録しない、というシステムになったのです。

毎日出勤しない人がたくさん

 

  • <noscript></noscript>シリコンバレーから飛行機で3時間のメキシコはロスカボスのリゾート地(筆者撮影)
  •   シリコンバレーでは同様の「無制限有給休暇制」の会社が増えています。日本でもおなじみのEvernoteや、社員数が1万人を超すVMWareなどもその一社。この制度の先駆けとして知られるのはDVDレンタルや動画制作・配信を行うNetflixで、2002年からもう10年以上この仕組みです。「カリフォルニア州の規定では有給休暇制度は必須ではない」と気づいたのがきっかけとか。

      ここ10年ほど、シリコンバレーのテクノロジー企業では毎日出勤しない人もたくさんいます。顔を合わせてする必要がある会議の時間だけ会社に行く、とか、毎週1~2日は自宅勤務と決めているとか、3時くらいに会社を出て子供や家族と過ごして夜になってから自宅で仕事を再開する、とかいろいろな働き方が当然になってきました。よく日本から来た人が「フレックスのコアタイムは何時ですか?」という質問をこちらの会社でするのですが、そもそも「コアタイム」という概念がありません。

    「何を達成したか」

     

      働く人のやる気が高く、かつ仕事を成果ベースで把握しやすい、というテクノロジー企業だからこそできることではあるのですが、社員が「いつ働いているのか」ではなく「何を達成したか」にフォーカスする習慣が根付いており、その上に成り立つのがこの「無制限有給休暇制」なのです。

      実際のところ、有給休暇が無制限にとれるからといって「やった! 2カ月クルーズに行くぞ!」なんていう人はまずいません。フレックスタイムだからといって成果も出さずダラダラし続けられないのと一緒です。むしろ、どれくらい休暇を取っていいのかの目安がなくなるせいで休暇を取りづらくなるという人も多いようです。

    会社側にメリットも

     

      さらには、会社側にとっては現実的なメリットもあります。

      カリフォルニアでは会社を辞めるときにそれまでの「未消化有給休暇日」を給与に換算して支払うことになっており、それがかなりの額になることが多々あります。企業側はこうした「未消化有給休暇日分の給与」を会計上の負債として貸借対照表に載せなければなりません。しかし「無制限有給休暇制」であればこの負債が生じないのです。

      というわけで、「有給休暇が無限に取れるようになった! 社員を尊重している!」とばかりに手放しでは言えない「無制限有給休暇制」ではあるのですが、それでもやはり「会社と個人の関係」の変化をうかがわせるものではあるでしょう。