
経営者や管理職になり、会議や社交の機会が増えた女性から、「立場にふさわしい装いができているのか」と戸惑う声が聞かれ出した。
専門家は「装いはその人の印象だけでなく、企業のイメージも左右する」と重要性を指摘する。服装にも戦略が必要だ。
信頼感を与える
- <noscript></noscript>丈の長いコート(左)や、上質なウール素材のスーツ(右)など、管理職向けの装いを提案(日本橋高島屋で)
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東京都のセミナー運営会社社長、A子さん(38)は5月、150人の顧客の前であいさつすることになって戸惑った。3月に一社員から社長に抜てきされたばかり。これまでカジュアルな服装が中心で、社長職に合う装いがわからない。
A子さんは仕事着に関する著書も多い国際イメージコンサルタント、大森ひとみさんに相談。グレーを基調としたツイードのえりなしジャケットに、グレーのAラインのスカートという装いであいさつに臨んだ。ジャケットにブローチを付け、華やかさも添えた。
顧客から「これまでの印象と違い、きょうは堂々としていて責任者らしい」と言われ、評価は上々だった。
大森さんは、「服装はビジネス戦略の一つ。相手から信頼を得たり、よい印象を与えて自分をアピールしたりする手段」と主張する。
ただ、その服装選びが難しい。東京都内で働く50代の部長職の女性は、セーターを着て小規模な会議に出たところ、周りはスーツ姿の男性ばかり。「居心地が悪かった」とこぼす。
男性はスーツにネクタイという定番があるが、女性は服の選択肢が豊富な上、幹部の数が男性に比べて少ないこともあり、ふさわしい装いが浸透していない。
見せ方助言の場も
女性管理職の増加とともに、その装いを考える動きが広がってきた。
情報サービス業の日立ソリューションズ(東京)は8月、女性管理職向けの装いに関する研修を初めて開催。スタイリストや化粧品メーカーの担当者を講師に迎え、好印象を与える服装やメイクについて考えた。
ダイバーシティ推進センタ長の小嶋美代子さんは、「社外での発表など、ここぞという時には、自分を効果的に見せることを意識して。さっそうと見せたいならストライプ柄、柔らかい印象にしたいならオレンジ系というように」と話す。
管理職女性向けの服を扱う売り場もある。
日本橋高島屋(東京)の売り場「エクセランクラッセ」は、ビジネスの場にふさわしいスーツやコートなどを取り扱う。ジャケットで約9万円から、スカート、ズボンで各約4万円から。
イタリア製のウールで仕立てた、シワになりにくいスーツが人気だ。管理職に多い40、50歳代の日本人の体形に合わせた作りも好評。買い付け担当者は「装いで品格や知性を感じさせることができる」と話す。
男女問わない色や柄選ぶ
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女性経営者や管理職にふさわしい装いについて、大森さんは「男性がよく着るスタイルを選んでほしい。色や柄も、男性がよく使う物にするとよい」と話す。
基本は、ウール素材のテーラードスーツだ。色は紺やグレーが一般的だが、ベージュやオフホワイトを選ぶと社交の場にも合う。柄は無地かストライプで。
「役員クラスなら、えりなしのスーツや、ジャケット、ブラウス、スカートがセットになったスリーピースのスーツを選ぶと、洗練された雰囲気になる」と助言する。
スカート丈はひざが隠れるものに。ズボンはくるぶしが隠れるほどの丈で、タイトすぎないものを選ぶ。これにヒールの高さ3~5センチのパンプスを合わせる。
シルクのスカーフを活用すると変化が出る。「細長く畳んで上着のえりに差し込んだり、首に巻いて控えめにのぞかせたりすると、印象が際立つ」と大森さん。
立場上、仕事関係の会食への出席も増える。「かしこまりつつも柔らかい雰囲気を出したい場合、ワンピースとジャケットの組み合わせがお勧め」と、小田急百貨店新宿店(東京)のスタイリングコーディネーター、川端友季子さんは話す。
パーティーでは、ネックレスなどアクセサリーを使って華やかさを添える。
売り場などで、第三者の目で装いを確認してもらい、助言をもらうとよい。(谷本陽子)
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