これが本当にカードのイメージを上げると思っているのかと、最初はびっくりしまいた。
インドを思わせる異郷の地の市場のような所で、小さな女の子が鳥を5羽求める。
少女の持っている金では、一羽しか買えないと商人はいう。少女はがっかりした顔をするが、それでもその一羽を買っていく。なんでもおにいちゃんのためだと言う。本当の肉親なのか、親しい年上の知人なのかはわからない。そして、そのおにいちゃんが今どういう状態にあるのかもわからない。でも、少女の希望からは、買った鳥をおにいちゃんがいるであろう建物に向けて空に放てばとてもよろこばしいことなのだろうと察しられる。そして、どうやら、その鳥の数も多い方がいいようだ。
その傍らで少女と商人とのやりとりを見ていた金持ちのアメリカ人観光客(リチャード・ギア)は、おもむろにVISAゴールドカードを取り出して商人に目配せする。商人はすべて心得まいたとの顔でこたえる。そして…
少女がなけなしのお金で買い求めた一羽の鳥を、こんなんでは足らないかもしれないけど、でもあたしが一生懸命工面して貯めたお金だから、おにいちゃん、みてて、とばかりにまさに駕篭から鳥を放とうとしたその時、彼女の背後で起きたできごとは少女にはあまりにも衝撃的だった。
あらかじめ金持ちのアメリカ人がふくんだとおりに一斉におびただしい数の鳥が羽ばたいていく。空を覆い尽くさんばかりの数だ。おそらく、少女が何年働いても手に出来ないほどのお金が必要な数の鳥。
あまりのできごとに驚いて少女が振り返ると、そこには意味深な目配せをする商人とアメリカ人の姿が。見事なまでに描く金のチカラ。
アメリカ人は商人に目で言う。
「このことは内緒だ。何を聞かれてもオレのことはその子にしゃべるんじゃないぜ」
商人も目で答える。
「もちろんですとも、だんな。聞かれたってあたしは何もしらねえよ、きっとアラーの神の思し召しだろうぜっていってやりまさあ」
そして、満足げに笑い合う。
少女も心の中で叫ぶ。金がない自分の願い事を助けてくれたことへの感謝の気持ちを? とんでもない。
少女は心の中でこう叫んでいる。
「まったく、なんてことをしてくれたんだ、あんたらは! この籠から鳥が飛び立ったら、あたしも元気でいると教えてあげられる、とあらかじめ決めてあったのに、それは一羽よりも数羽は飛ばしたいって思ったけど、あれはなあに? あんなにたくさんの鳥が飛んでしまったら、もう何もメッセージがつたわらないの。台無しだわ。なんで? なんであんな余計なことをしてくれたの。あのアメリカ人が大金持ちで、道楽で人の計画をめちゃくちゃにしてくれたの? そんな大金持ってたように見えなかったけど、あのキラキラ光る四角いカードをつかったのだとしたら、あんなものは大嫌い! 一生軽蔑してやる!」
しかし、彼女の目の前で、いかにも彼女をこの上なく幸せにしてやったと疑わない愚かな大人たちの子供じみた仕草を見ると、少女は苦笑いする他なかった。
インドを思わせる異郷の地の市場のような所で、小さな女の子が鳥を5羽求める。
少女の持っている金では、一羽しか買えないと商人はいう。少女はがっかりした顔をするが、それでもその一羽を買っていく。なんでもおにいちゃんのためだと言う。本当の肉親なのか、親しい年上の知人なのかはわからない。そして、そのおにいちゃんが今どういう状態にあるのかもわからない。でも、少女の希望からは、買った鳥をおにいちゃんがいるであろう建物に向けて空に放てばとてもよろこばしいことなのだろうと察しられる。そして、どうやら、その鳥の数も多い方がいいようだ。
その傍らで少女と商人とのやりとりを見ていた金持ちのアメリカ人観光客(リチャード・ギア)は、おもむろにVISAゴールドカードを取り出して商人に目配せする。商人はすべて心得まいたとの顔でこたえる。そして…
少女がなけなしのお金で買い求めた一羽の鳥を、こんなんでは足らないかもしれないけど、でもあたしが一生懸命工面して貯めたお金だから、おにいちゃん、みてて、とばかりにまさに駕篭から鳥を放とうとしたその時、彼女の背後で起きたできごとは少女にはあまりにも衝撃的だった。
あらかじめ金持ちのアメリカ人がふくんだとおりに一斉におびただしい数の鳥が羽ばたいていく。空を覆い尽くさんばかりの数だ。おそらく、少女が何年働いても手に出来ないほどのお金が必要な数の鳥。
あまりのできごとに驚いて少女が振り返ると、そこには意味深な目配せをする商人とアメリカ人の姿が。見事なまでに描く金のチカラ。
アメリカ人は商人に目で言う。
「このことは内緒だ。何を聞かれてもオレのことはその子にしゃべるんじゃないぜ」
商人も目で答える。
「もちろんですとも、だんな。聞かれたってあたしは何もしらねえよ、きっとアラーの神の思し召しだろうぜっていってやりまさあ」
そして、満足げに笑い合う。
少女も心の中で叫ぶ。金がない自分の願い事を助けてくれたことへの感謝の気持ちを? とんでもない。
少女は心の中でこう叫んでいる。
「まったく、なんてことをしてくれたんだ、あんたらは! この籠から鳥が飛び立ったら、あたしも元気でいると教えてあげられる、とあらかじめ決めてあったのに、それは一羽よりも数羽は飛ばしたいって思ったけど、あれはなあに? あんなにたくさんの鳥が飛んでしまったら、もう何もメッセージがつたわらないの。台無しだわ。なんで? なんであんな余計なことをしてくれたの。あのアメリカ人が大金持ちで、道楽で人の計画をめちゃくちゃにしてくれたの? そんな大金持ってたように見えなかったけど、あのキラキラ光る四角いカードをつかったのだとしたら、あんなものは大嫌い! 一生軽蔑してやる!」
しかし、彼女の目の前で、いかにも彼女をこの上なく幸せにしてやったと疑わない愚かな大人たちの子供じみた仕草を見ると、少女は苦笑いする他なかった。