理乃美

ソフトとハードと論理の覚え書き

音波を対象としたPMLの実験的考察 その2.PMLの具体化

2022-08-05 17:54:45 | 数理科学
音の伝搬をリープフロッグアルゴリズムにる時間発展の式に落とすと次のようになる。[3] 
…式3
これに安直にabsorption coefficients σ を適用すると次のようになる
…式4
σの値は、基本的に関心領域では0であり、PML層を外側に向かって多項式(polynominal)に増加させる。[1]
PML層の外側の境界条件は例えば剛な境界とする。

Fig. 1 Yee cell と σ
ここで、PMLを何層とするか、σをどのような関数にするかが問題となる。
関心領域から距離をd、PML層の厚さをdPMLとしたとき、σを次のようなM次関数とすることが提唱されている[4]が、これでもなお乗数MとσMAXの値に任意性がある。
…式5

[1] Ludovic Métivier, Laurence Halpern. Perfectly Matched Layers equations for 3D acoustic wave propagation in heterogeneous media. WAVES 2011, Jul 2011, Vancouver, Canada. ⟨hal-00826617⟩
[2] 豊田正弘 編著. FDTD法で視る音の世界, コロナ社 (2015), p12-14
[3] 豊田正弘 編著. FDTD法で視る音の世界, コロナ社 (2015), p9-10
[4] 宇野 亨編著 何 一偉, 有馬 卓司 共著、数値電磁界解析のためのFDTD法 -基礎と実践-、コロナ社(2016)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音波を対象としたPMLの実験的考察 その1. PML

2022-08-05 01:20:19 | 数理科学
音波を対象としたFDTD法においてPML (Perfectly matched layer) を利用する場合、PMLの層数やabsorption coefficenceの値に自由度がある。それらパラメータとPMLの性能との関係を数値実験で調べた。
実験結果はこちら音波を対象としたPMLの実験的考察 その3. 計算実験結果 - 理乃美
まずは、PMLについてのおさらいから。

1. Perfectly matched layer (PML)
空中の音の伝搬をシミュレートする手段としてFDTD法は手軽である。
p(X,t)を点X時刻tでの音圧、u(X,t) を点X時刻tでの粒子速度とすれば、音の伝搬は下記のように定式化できる。[1]

 ---(式 1)
Yeeセルを用いリープフロッグアルゴリズムで上記の式を逐次計算する部分は容易にプログラミングできる。
が、ここで問題となるのが境界条件である。
そのひとつは剛な境界 (rigid boundary) である。境界において「常に粒子速度が0 」とする。この場合、音波は剛な境界で完全反射してかえって行く。[2]
境界をリープフロッグアルゴリズムの粒子速度計算点に合わせれば実装は容易だ。
逆にまったく反射して欲しくない場合もある。その場合に使われるのがPML (Perfectly matched layer) である。式1を下記のように書き換え、導入したAbsorption coefficients σ によって音波を減衰させる部分を設けることで反射を減らす。[2]

…(式 2)
ここで注意しなければならない点がある。σx、σy、σz とあるが基本はどれか一つのみが値を持ち、残りはゼロとする。例えば、yz平面を境界とするPMLならば σy、σzはゼロとする。x軸方向の音波は減衰させるが、y軸z軸方向は維持するという事である。
もし、y軸z軸方向も減衰させてしまうと斜めに入射した音波に反射が生じてしまう。
実際に計算例を見てみよう。これは直方体の箱の天井面のみPMLとし、球面波がどのように反射するかを計算した。PMLにおいてσx=σy=σz とした場合、音波が天井のPMLに直角に当たった部分では音波がきれいに吸収されているが、音波面が斜めになるにつれ反射が起きていることが見てとれる。いっぽう、σy=σz=0 の場合、音波面が斜めになってもきれいに吸収されている。
図1. σx=σy=σz

図2 σy=σz=0


[1] Ludovic Métivier, Laurence Halpern. Perfectly Matched Layers equations for 3D acoustic wave propagation in heterogeneous media. WAVES 2011, Jul 2011, Vancouver, Canada. ⟨hal-00826617⟩
[2] 豊田正弘 編著. FDTD法で視る音の世界, コロナ社, p12-14
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする