蔵王山 地蔵山(1,736m)・熊野岳(1,841m)
紀行作家の宮脇俊三氏の本に、蔵王の観光道路「蔵王エコーライン」を廃止し、その跡に「蔵王鉄道」を開業させようという計画が出てきます。
「~ わが蔵王鉄道は冬期も運休せず、自然の猛威と樹氷の美に接していただく所存だが、そのためには風雪対策は十分になさねばならない。「吹雪のため運休」にしたくない。 ~」
「~ お金のかかることばかりだから、厳冬期は割増運賃にし、この期間は「樹氷列車」と呼ぶことにする。運賃は高くても大いに人気を博し、八両編成の列車を十五分間隔で運転しても乗りきれない客がでるだろうと私は皮算用している。 ~」
(『夢の山岳鉄道』宮脇俊三(新潮文庫))
この本には「蔵王鉄道」のイラストもあります。山形新幹線の車体を短くしたような姿で、夢のある文章よりは少し現実的な感じがしました。スイスの氷河急行や、箱根登山鉄道のような姿ではありませんでした。
「蔵王鉄道」の路線は、有名な御釜の淵を通っていませんでしたが、標高1,595mの「樹氷台」駅からスノーモンスターを見られたら、壮観に違いありません。
『夢の山岳鉄道』では、御釜へは同じく1,595mの「蔵王高原」駅から、ロープウェイで達しているのです。
蔵王山は、日本百名山で半分の五十座目に登った山です。
蔵王温泉から、鉄道ではなくロープウェイを乗り継ぎ、1,661mの地蔵山頂駅から歩き始めます。
1,736mの地蔵山まで登り、いったん下った場所が「ワサ小屋跡」です。
「おワサさんという老婆がここにあった山小屋の番をしており、参拝者の面倒をみていたといわれています。」という紹介文がありました。
山形新幹線の車窓から見上げると、蔵王は横に広がる大きな山ですが、最高峰の熊野岳は、山というよりも、断崖絶壁と丘を足して2で割った姿をしていました。コマクサの花が多かったです。
ロープウェイを降りてからたった1時間と少しで山頂に着き、「半分」登頂を祝った後、斜面を下って御釜の水面が姿を現した時の驚きは忘れられません。
御釜は火口に水がたまってできた火口湖です。御釜の水は、火山活動によって沸騰したこともあるそうです。あるいは冬になれば、御釜の水は凍りつくそうです。
この標高に、凍ったり沸騰したりする大きな湖があるのが凄いです。凍っているのも沸騰しているのも見たことはありませんが、振幅の大きさを感じる景色です。
ここに来れば誰しも、山に登ったより、湖に登った気分になってしまうだろうと思いました。
斜面に建つ小さな避難小屋は、外国の山のような風情でした。石造りであるところも魅力を感じました。改装すれば蔵王の純喫茶に出来そうでした。
(登頂:2014年8月中旬)