きのうは秋晴れの良い天気でした。家の廻り掃除しようと外に出ると隣の爺いさんが、道路の端っこの陽だまりにに座り込んでます。
「おとっちゃん、どしたん?クルマ通ると危ないし、ケツ冷えるだろ?」
「家追い出されたがや、ワシ。このまえ病院いっとったスキに、黙ってワシの車売ってしもたがいよ、くそババァ。んで、文句言って外に飛び出したら、ババァ、家の鍵閉めて自転車乗って出かけてしもたが」
しょーがないから、いつも競技会に持ってく折りたたみ椅子に座らせて、それとなく様子見てた。
そういえば、ここ2,3日前から爺さんのクルマ見えないな、車検かなぁ、と思ってたんよ。きっと家族がじーさんに黙ったまま、処分しちゃったんだよ。相談すると嫌だっていうの分かってるから。
徘徊軽トラが、小学生の列に突っ込んだニュースから暫くして、隣のじーさんの車は消えたんだ。
長くタクシーの運転手やってて、愛車はクラウンだった。休みの日には丁寧にワックスかけて、大事に大事に乗ってた。ツマの車のバッテリーがあがった時、自分の車と接続させて充電して助けてくれたよ。
頑固で偏屈なジーサンだったけど、車に関してはマメだったね。もちろん運転も上手だったしね。
リタイアして大分経って、小さな車に乗り換えた頃から、様子おかしくなってきてさ。ボディは傷だらけ、バンパーもボコボコにして、そのままほったらかしで、平気になっちゃったんだ。ボケてきたんだよ。
暫くして奥さんが帰って来て、じーさんは椅子を返しに来た。
俺はひどく悲しくなったので、シャワーを浴びてからビールを飲んで、ちょっと泣いた。