アカバネーゼのささやき

夫の裏切り!妻の仕返し!夫婦とは?自立に目覚めた私が起業するまで!

たそがれの駅のホームで

2006年06月09日 | Weblog
2物件を兼務して3週間ほど経ったある朝、私はすっかり勘違いして、違う物件への坂道を登っていた

ふと、何か気になってシフト表を見てみると、

「あ!!!間違った、今日はあちらの物件だった!」

・・・あわてて、走って駅に戻り電車に乗り換えたが、もうすっかり遅刻だ!

朝礼はとっくに終わり、業務連絡も終わり、もうすっかりみんな仕事に取り組んでいる

言い訳をする私に、上司の女性が呼んだ

「赤羽さん、仕事に対する意識が低いんじゃないの?兼務の人はたくさんいますが、みんなきちんと間違えずに来ていますよ。先日も住宅ローンの変更部分の説明もきちんと覚えていなかったし、接客もちょっと無駄な私語が多いのではないかしら?」

まだまだ続き、この時とばかりにお小言は続く・・

大人になってから、人に怒られるなんて事はそうあるものではない

最初は

「すみません。気をつけます。その通りです…」

と謝っていた私だったが、なんだか情けなくなってきて、悔し涙が出てきてしまった

その日は、一日落ち込んで、誰の顔を見ても上手に笑うことができなかった

そんなときに限って、大事な書類にコーヒーはこぼすし、一度断られたお客様に間違えて電話をしてしまい、

「もう、よそで決まったといいましたよっ!」

と電話口で思いっきり怒鳴られてしまった


・・・もう辞めたいよ・・

私、この仕事向いてないのかも…?

もう帰りたい・・・


気を取り直して、郵便局に切手を買いに行った


「Nさん、元気で頑張っていますか?私は元気ではありません!

思い切って、こちらからメールをした

「どした?」

すぐに返事があった

なんだか泣きそうになってしまった


私は彼の「どした?」…が大好きだった

なんて暖かい言葉なんだろう…


「もう、大丈夫!元気になったよ」

「さては、誰かにいじめられたな~!○○所長でしょ?」

「違う、違う!もういいってば」

「今、目の前にお客さんがいるんだ!だから帰りにまたメールしてよ。」


なんだか・・・もう、すっかり元気だった

嬉しいな!すぐに返事をくれたんだ!



私は大人だもん!

いつまでもメソメソしてなんていられない

すっかり気持ちを入れ替えて、午後からはバリバリと仕事をした

みんなと冗談を言ったり、先ほどの上司のお手伝いも進んでやった


やっと定時になり、お客さんのない人からみんな帰り仕度を始めた

本当はとても、とても、とても疲れていた

でも、明るく笑顔で

「今朝は、皆さん申し訳ありませんでした~!おつかれさまで~す!お先に失礼しま~す」

と元気に笑って販売センターを後にした


電車に乗ったとき、ふと昼間の彼の言葉を思い出し…

「今、電車に乗りました~お昼はありがとうね」

とメールをした


「おつかれさま~!○△駅で一瞬おりて下さい」

??

ま、通り道だから、いっか!

電車は彼の販売センターのある駅に近づいた

お化粧を直しもしてなかったし、髪もボサボサ・・・

ま、いっか!


ホームに降りてキョロキョロしていると、彼が走ってきた

コートも着ずに、手には定期だけを持っている


私は、嬉しさと安心感と緊張が一気にほぐれて、上手に笑えない・・

疲れ果てた私はきっと「小泣きじじい」のような顔だったと思う


「わざわざありがとう…あの、もう別に…

彼は、駅のホームでいきなり私を抱きしめた


まるで、幼稚な純愛小説の一説のようで、あまりにも安っぽいドラマのような展開だけど…、本当に、夕方の込み合うホームで、彼は私を抱きしめたのでした…


耳元ではっきりした声で、彼が言った

「そんなに頑張らなくてもいいよ。」



冷たく冷え切ったシャツと彼が言ったその言葉を、私は今も忘れない





・・・つづく