今でも主人が言う
「あの時ほど家の中がきれいだったことはない!」・・と
一泊の逃避行をするために、私は毎日万全の準備で頑張った
まずは自分磨き・・・
いつもよりも高級なシャンプー&リンスに変えた
毎日、腹筋を50回やる!
今までもったいなくて、ほんのちょっとしか使わなかったエスティローダーの栄養クリームを顔にたっぷり塗ってから寝る!
次は家の掃除
きれい好きの主人のご機嫌をとるために、どの部屋も念入りに掃除をした
捨てたゴミは大晦日の掃除よりも多かった!
フローリングもピカピカ
カウンターやテーブルの上には何も乗っていない
ピカピカのキッチン
どこも全くぬめりのない浴室!
入居したてのような爽やかなトイレ!
主人のワイシャツは全部クリーニングに…
シーツを久しぶりに交換して、糊をきかせて浴室で夜中にジャンジャン乾かした
たった1日の留守たが、その日のためにカレーもハッシュドビーフも作り置きして、バッチリ冷凍した
着々と準備は進む・・・
その間に、彼からは何十通メールが来ただろうか?
「どこに行きたい?」
「すごい豪華なところ見つけたよ」
「ここは行ったことある?」
「こんな旅館はどう?」
「高原はどう?」
「ロープウェイだって!」
「どんなご飯が食べたい?」
「平日限定だって!」
「部屋に露天風呂がついてるのがあったよ」
「すごいよ~、早くネットで見てみて~」
「自転車に乗れる?」
「大学の時の写真持ってきて!」
「歩いても痛くない靴で来て」
「おい!聞いてるの?」
一日中、ポケットの中で携帯は振動し続け、私は何度トイレに行ったことか!
メールの中身はウキウキ、ワクワクがいっぱい詰まった宝物ばかり!
どれも幸せな悩み!
「ちゃんと仕事してるの?ネットでそんな物ばかり調べてたらダメよ!」
「いいんだよ。すごい重要案件だから!」
「場所はお任せします。ただ、誰か他のコと行ったところはちょっとイヤかも」
「じゃあ、行ってないところなんてないなぁ…」
「うっそ~、信じられない!もう、いい」
「そんなの嘘だよ、、、○○温泉はゴルブでしか行ったことがないよ」
「その辺、あまり良くわからないから任せるよ」
「ネットで打ち出すから、今日、夕方会える?」
まるで、子供のようにはしゃいでいる彼を見て、反対に私は動揺していた
遠い昔、新婚旅行を決めた時でも、私と主人はこんなに熱心ではなかったと思う
結婚してから、他の男の人と親しく話す…なんて事もなかったのに、いきなり『旅行!!』なんて、、、なんと大胆な事!
日に日にどうすればいいのかわからなくなってきた
楽しみな気持ちと、不安な気持ち・・・
今なら引き返せる…という気持ちと、このまま後悔したくない…という気持ちの戦いだった
でも・・「泊まる」という行為はとても照れくさかったが、それよりも、彼と一緒に時間を気にせずに、山ほど話したかった
その日の夕方、販売センターからそう遠く離れていない路地で、二人は「緊急会議」を開いた
何事にもまじめなN所長は、一冊の物件マニュアルが出来上がるほど、旅行資料を集めていた!
「ねぇ、本当に仕事してるの?」
そんな質問には答えずに・・
「ここは?○○料理が有名なんだって!」
「いいねぇ」
「ほら!ここ見て!すごいきれいでしょ?」
「いいねぇ」
「そうそう、ここあと一部屋で満室なんだけど、すごい評判が良かったよ」
「いいねぇ」
「ねえ!あかばねっち、本当に行きたいの?」
「Nクンが必死で探しているのが嬉しいな」
「じゃあ、真剣に見てくれよ!」
「こうして探してる時間が楽しいね」
「じゃあもう、ここに決めるからね!」
そこは、1泊一人4万円もする旅館だった
「ちょ・ちょっと!こんなに高いところは無理だよ!車の中で話しててもいいくらいなのに・・・無理するのはやめようよ。今、物入りでしょ?」
「いいよ、最高の時間にしたいから。これが、きっと最初で最後だから・・・」
胸がドキっとした
もう、これで最後なんだ
もう、逢えなくなるんだ・・
せっかく出逢ったのに、こんなに楽しいのに、、二人はこんなに気が合うのに・・・
人通りのある路地裏で、黙って二人は手を繋いだままうつむいていた
ただ、それだけで充電できた
それだけで、心の中はいっぱい満たされていた
・・・つづく
「あの時ほど家の中がきれいだったことはない!」・・と
一泊の逃避行をするために、私は毎日万全の準備で頑張った
まずは自分磨き・・・
いつもよりも高級なシャンプー&リンスに変えた
毎日、腹筋を50回やる!
今までもったいなくて、ほんのちょっとしか使わなかったエスティローダーの栄養クリームを顔にたっぷり塗ってから寝る!
次は家の掃除
きれい好きの主人のご機嫌をとるために、どの部屋も念入りに掃除をした
捨てたゴミは大晦日の掃除よりも多かった!
フローリングもピカピカ
カウンターやテーブルの上には何も乗っていない
ピカピカのキッチン
どこも全くぬめりのない浴室!
入居したてのような爽やかなトイレ!
主人のワイシャツは全部クリーニングに…
シーツを久しぶりに交換して、糊をきかせて浴室で夜中にジャンジャン乾かした
たった1日の留守たが、その日のためにカレーもハッシュドビーフも作り置きして、バッチリ冷凍した
着々と準備は進む・・・
その間に、彼からは何十通メールが来ただろうか?
「どこに行きたい?」
「すごい豪華なところ見つけたよ」
「ここは行ったことある?」
「こんな旅館はどう?」
「高原はどう?」
「ロープウェイだって!」
「どんなご飯が食べたい?」
「平日限定だって!」
「部屋に露天風呂がついてるのがあったよ」
「すごいよ~、早くネットで見てみて~」
「自転車に乗れる?」
「大学の時の写真持ってきて!」
「歩いても痛くない靴で来て」
「おい!聞いてるの?」
一日中、ポケットの中で携帯は振動し続け、私は何度トイレに行ったことか!
メールの中身はウキウキ、ワクワクがいっぱい詰まった宝物ばかり!
どれも幸せな悩み!
「ちゃんと仕事してるの?ネットでそんな物ばかり調べてたらダメよ!」
「いいんだよ。すごい重要案件だから!」
「場所はお任せします。ただ、誰か他のコと行ったところはちょっとイヤかも」
「じゃあ、行ってないところなんてないなぁ…」
「うっそ~、信じられない!もう、いい」
「そんなの嘘だよ、、、○○温泉はゴルブでしか行ったことがないよ」
「その辺、あまり良くわからないから任せるよ」
「ネットで打ち出すから、今日、夕方会える?」
まるで、子供のようにはしゃいでいる彼を見て、反対に私は動揺していた
遠い昔、新婚旅行を決めた時でも、私と主人はこんなに熱心ではなかったと思う
結婚してから、他の男の人と親しく話す…なんて事もなかったのに、いきなり『旅行!!』なんて、、、なんと大胆な事!
日に日にどうすればいいのかわからなくなってきた
楽しみな気持ちと、不安な気持ち・・・
今なら引き返せる…という気持ちと、このまま後悔したくない…という気持ちの戦いだった
でも・・「泊まる」という行為はとても照れくさかったが、それよりも、彼と一緒に時間を気にせずに、山ほど話したかった
その日の夕方、販売センターからそう遠く離れていない路地で、二人は「緊急会議」を開いた
何事にもまじめなN所長は、一冊の物件マニュアルが出来上がるほど、旅行資料を集めていた!
「ねぇ、本当に仕事してるの?」
そんな質問には答えずに・・
「ここは?○○料理が有名なんだって!」
「いいねぇ」
「ほら!ここ見て!すごいきれいでしょ?」
「いいねぇ」
「そうそう、ここあと一部屋で満室なんだけど、すごい評判が良かったよ」
「いいねぇ」
「ねえ!あかばねっち、本当に行きたいの?」
「Nクンが必死で探しているのが嬉しいな」
「じゃあ、真剣に見てくれよ!」
「こうして探してる時間が楽しいね」
「じゃあもう、ここに決めるからね!」
そこは、1泊一人4万円もする旅館だった
「ちょ・ちょっと!こんなに高いところは無理だよ!車の中で話しててもいいくらいなのに・・・無理するのはやめようよ。今、物入りでしょ?」
「いいよ、最高の時間にしたいから。これが、きっと最初で最後だから・・・」
胸がドキっとした
もう、これで最後なんだ
もう、逢えなくなるんだ・・
せっかく出逢ったのに、こんなに楽しいのに、、二人はこんなに気が合うのに・・・
人通りのある路地裏で、黙って二人は手を繋いだままうつむいていた
ただ、それだけで充電できた
それだけで、心の中はいっぱい満たされていた
・・・つづく