アカバネーゼのささやき

夫の裏切り!妻の仕返し!夫婦とは?自立に目覚めた私が起業するまで!

旅立ちの前に

2006年06月23日 | Weblog
今でも主人が言う

「あの時ほど家の中がきれいだったことはない!」・・と



一泊の逃避行をするために、私は毎日万全の準備で頑張った


まずは自分磨き・・・

いつもよりも高級なシャンプー&リンスに変えた

毎日、腹筋を50回やる!

今までもったいなくて、ほんのちょっとしか使わなかったエスティローダーの栄養クリームを顔にたっぷり塗ってから寝る!


次は家の掃除

きれい好きの主人のご機嫌をとるために、どの部屋も念入りに掃除をした

捨てたゴミは大晦日の掃除よりも多かった!

フローリングもピカピカ

カウンターやテーブルの上には何も乗っていない

ピカピカのキッチン

どこも全くぬめりのない浴室!

入居したてのような爽やかなトイレ!



主人のワイシャツは全部クリーニングに…

シーツを久しぶりに交換して、糊をきかせて浴室で夜中にジャンジャン乾かした

たった1日の留守たが、その日のためにカレーもハッシュドビーフも作り置きして、バッチリ冷凍した

着々と準備は進む・・・



その間に、彼からは何十通メールが来ただろうか?

「どこに行きたい?」

「すごい豪華なところ見つけたよ」

「ここは行ったことある?」

「こんな旅館はどう?」

「高原はどう?」

「ロープウェイだって!」

「どんなご飯が食べたい?」

「平日限定だって!」

「部屋に露天風呂がついてるのがあったよ」

「すごいよ~、早くネットで見てみて~」

「自転車に乗れる?」

「大学の時の写真持ってきて!」

「歩いても痛くない靴で来て」

「おい!聞いてるの?」


一日中、ポケットの中で携帯は振動し続け、私は何度トイレに行ったことか!

メールの中身はウキウキ、ワクワクがいっぱい詰まった宝物ばかり!
どれも幸せな悩み!


「ちゃんと仕事してるの?ネットでそんな物ばかり調べてたらダメよ!」

「いいんだよ。すごい重要案件だから!

「場所はお任せします。ただ、誰か他のコと行ったところはちょっとイヤかも

「じゃあ、行ってないところなんてないなぁ…

「うっそ~、信じられない!もう、いい

「そんなの嘘だよ、、、○○温泉はゴルブでしか行ったことがないよ」

「その辺、あまり良くわからないから任せるよ」

「ネットで打ち出すから、今日、夕方会える?」


まるで、子供のようにはしゃいでいる彼を見て、反対に私は動揺していた


遠い昔、新婚旅行を決めた時でも、私と主人はこんなに熱心ではなかったと思う


結婚してから、他の男の人と親しく話す…なんて事もなかったのに、いきなり『旅行!!』なんて、、、なんと大胆な事!

日に日にどうすればいいのかわからなくなってきた

楽しみな気持ちと、不安な気持ち・・・

今なら引き返せる…という気持ちと、このまま後悔したくない…という気持ちの戦いだった


でも・・「泊まる」という行為はとても照れくさかったが、それよりも、彼と一緒に時間を気にせずに、山ほど話したかった


その日の夕方、販売センターからそう遠く離れていない路地で、二人は「緊急会議」を開いた

何事にもまじめなN所長は、一冊の物件マニュアルが出来上がるほど、旅行資料を集めていた!

「ねぇ、本当に仕事してるの?

そんな質問には答えずに・・


「ここは?○○料理が有名なんだって!

「いいねぇ

「ほら!ここ見て!すごいきれいでしょ?」

「いいねぇ

「そうそう、ここあと一部屋で満室なんだけど、すごい評判が良かったよ」

「いいねぇ

「ねえ!あかばねっち、本当に行きたいの?

「Nクンが必死で探しているのが嬉しいな

「じゃあ、真剣に見てくれよ!」

「こうして探してる時間が楽しいね

「じゃあもう、ここに決めるからね!


そこは、1泊一人4万円もする旅館だった

「ちょ・ちょっと!こんなに高いところは無理だよ!車の中で話しててもいいくらいなのに・・・無理するのはやめようよ。今、物入りでしょ?」


「いいよ、最高の時間にしたいから。これが、きっと最初で最後だから・・・」


胸がドキっとした

もう、これで最後なんだ

もう、逢えなくなるんだ・・

せっかく出逢ったのに、こんなに楽しいのに、、二人はこんなに気が合うのに・・・


人通りのある路地裏で、黙って二人は手を繋いだままうつむいていた


ただ、それだけで充電できた

それだけで、心の中はいっぱい満たされていた




・・・つづく