「船に乗ろうよ?」
手をつないだまま、彼が言った
「え?船に?いったいどこに行くの?」
「”飛鳥”に乗って世界一周…は、ちょっと”まだ”乗せてあげられないよ」
「まだ…なの?」笑いながら尋ねた
「いつか、僕が乗せてあげる」
「それは楽しみだな~!!長生きしなくっちゃ!」
彼はクリスマスの人ごみを掻き分け、どんどん引っ張っていく
「さっきお店の人に聞いたら50分発だって言ってたから急がなきゃ!」
「いつの間に聞いたの?なかなか計画的だねぇ…」
「コレができなきゃ、マンションを完売させられないよ!」
「お!カッコいいね~、ちょっと惚れちゃうかも!」
「あ、それも計画のうち!」
なんて楽しいんだろう!
歳をとったから、こんな事が嬉しいのだろうか?
どんな言葉も、ハートにズンズン突き刺さる
山下公園から出る船というのは、ほんの近くまで移動するだけのシーバスらしい
でも私たちのクリスマスには充分な演出で、それだけでまるで世界一周に出かけるみたいな気分だった
二人は息を切らせて走り続けた
船着場についたが、クリスマスの夕方…同じようなカップルがいっぱいいて、50分発のシーバスに乗り遅れてしまった
「僕ね、約束に遅れたり、間に合わなかったりした時、いったい今日の行動の何がロスだったかなぁ…て、よく考えるんだけど、今日は1秒も無駄な時間はなかったと思うな…」
「ふふふふ!理屈っぽいけど、それはなかなか明言ですねぇ~」
「う~ん、全く明言ですよ、さすがですよ!」
と、同じ会社の同僚のモノマネをして言った
「あらぁそうかしらぁ、どうかしらねぇ~Nさ~ん」
と、私も年配の女性上司のマネをしてこたえた
「あ、やめてよ!せっかくのデートなのに、○△さんがいるみたいで怖すぎるよ!」
急に、彼が改まって立ち止まった
「今日さ、7時半から、みなとみらいの○○ホテルの最上階のクリスマスディナーの予約してあるんだ!」
「え?ディナー?」
「それまで、クリスマスのプレゼントを探しに行こうよ」
「・・・」
時計をみた。もう5時を過ぎて、周辺はすっかり暗くなってきた
世の中は、今からがクリスマスイブのゴールデンタイムだ…
・・・子供はどうしているだろう?
お友達のところに朝から預けっぱなしで、きっと迷惑をかけているに違いない
急に、いろんなことが心配になってきた・・
繋いだ手を見ていると、急に罪深く思えてきた
どうしよう?帰らなきゃ、、
きっと主人が今年もクリスマスケーキを買って帰ってくるに違いない
「ねぇ、何が欲しい?僕が考えていたのはさぁ…」
バッグの中から、デパートのクリスマスのプレゼントカタログがどんどん出てくる…
いきなり、近くにいたカップルがベンチを立ったので、彼はすぐに座った
カタログのあちこちに付箋が貼ってあって、まるで仕事の資料のようだ!
「赤羽っちは、いつも高価そうな時計やアクセサリーをつけてるから、あんまり安い物だったら、つけてくれないかと思ってたんだ。」
「そんなの持ってないってば!コレもニセモノダイヤのピアスだよ…、それに、プレゼントなんてもらわなくてもいいよ。」
「ダメダメ!だってクリスマスなんだから!」
「本当に、そんなのいいの。今日、美味しいランチができただけで、本当に幸せだったから…」
「今日、プレゼントできなかったら、次のお誕生日まで、何もあげられないよ!」
「違うの、、本当にそんな事しないで。。」
「だって、ずっと計画立てていたんだから。ずっと逢えなかったから、付箋をつけて聞こうと思ってたんだ。」
「・・ほんとに、いいから…」
「ディナーもね、宅建の発表の日に、もうすぐに予約入れたんだよ」
「う、うん、、でも、…」
どうしよう…
彼は、手をつないだまま「早く行こう?」と言った
子供の顔と主人の顔が浮かんだ
頭の中では、『ここから帰ったらどのくらい時間がかかるのだろう…?』と計算が始まっていた
…と同時に、彼がタクシーを停めた
このまま、ずっと一緒にいたい・・・悪魔が「いいよ」とささやいた
・・・つづく
手をつないだまま、彼が言った
「え?船に?いったいどこに行くの?」
「”飛鳥”に乗って世界一周…は、ちょっと”まだ”乗せてあげられないよ」
「まだ…なの?」笑いながら尋ねた
「いつか、僕が乗せてあげる」
「それは楽しみだな~!!長生きしなくっちゃ!」
彼はクリスマスの人ごみを掻き分け、どんどん引っ張っていく
「さっきお店の人に聞いたら50分発だって言ってたから急がなきゃ!」
「いつの間に聞いたの?なかなか計画的だねぇ…」
「コレができなきゃ、マンションを完売させられないよ!」
「お!カッコいいね~、ちょっと惚れちゃうかも!」
「あ、それも計画のうち!」
なんて楽しいんだろう!
歳をとったから、こんな事が嬉しいのだろうか?
どんな言葉も、ハートにズンズン突き刺さる
山下公園から出る船というのは、ほんの近くまで移動するだけのシーバスらしい
でも私たちのクリスマスには充分な演出で、それだけでまるで世界一周に出かけるみたいな気分だった
二人は息を切らせて走り続けた
船着場についたが、クリスマスの夕方…同じようなカップルがいっぱいいて、50分発のシーバスに乗り遅れてしまった
「僕ね、約束に遅れたり、間に合わなかったりした時、いったい今日の行動の何がロスだったかなぁ…て、よく考えるんだけど、今日は1秒も無駄な時間はなかったと思うな…」
「ふふふふ!理屈っぽいけど、それはなかなか明言ですねぇ~」
「う~ん、全く明言ですよ、さすがですよ!」
と、同じ会社の同僚のモノマネをして言った
「あらぁそうかしらぁ、どうかしらねぇ~Nさ~ん」
と、私も年配の女性上司のマネをしてこたえた
「あ、やめてよ!せっかくのデートなのに、○△さんがいるみたいで怖すぎるよ!」
急に、彼が改まって立ち止まった
「今日さ、7時半から、みなとみらいの○○ホテルの最上階のクリスマスディナーの予約してあるんだ!」
「え?ディナー?」
「それまで、クリスマスのプレゼントを探しに行こうよ」
「・・・」
時計をみた。もう5時を過ぎて、周辺はすっかり暗くなってきた
世の中は、今からがクリスマスイブのゴールデンタイムだ…
・・・子供はどうしているだろう?
お友達のところに朝から預けっぱなしで、きっと迷惑をかけているに違いない
急に、いろんなことが心配になってきた・・
繋いだ手を見ていると、急に罪深く思えてきた
どうしよう?帰らなきゃ、、
きっと主人が今年もクリスマスケーキを買って帰ってくるに違いない
「ねぇ、何が欲しい?僕が考えていたのはさぁ…」
バッグの中から、デパートのクリスマスのプレゼントカタログがどんどん出てくる…
いきなり、近くにいたカップルがベンチを立ったので、彼はすぐに座った
カタログのあちこちに付箋が貼ってあって、まるで仕事の資料のようだ!
「赤羽っちは、いつも高価そうな時計やアクセサリーをつけてるから、あんまり安い物だったら、つけてくれないかと思ってたんだ。」
「そんなの持ってないってば!コレもニセモノダイヤのピアスだよ…、それに、プレゼントなんてもらわなくてもいいよ。」
「ダメダメ!だってクリスマスなんだから!」
「本当に、そんなのいいの。今日、美味しいランチができただけで、本当に幸せだったから…」
「今日、プレゼントできなかったら、次のお誕生日まで、何もあげられないよ!」
「違うの、、本当にそんな事しないで。。」
「だって、ずっと計画立てていたんだから。ずっと逢えなかったから、付箋をつけて聞こうと思ってたんだ。」
「・・ほんとに、いいから…」
「ディナーもね、宅建の発表の日に、もうすぐに予約入れたんだよ」
「う、うん、、でも、…」
どうしよう…
彼は、手をつないだまま「早く行こう?」と言った
子供の顔と主人の顔が浮かんだ
頭の中では、『ここから帰ったらどのくらい時間がかかるのだろう…?』と計算が始まっていた
…と同時に、彼がタクシーを停めた
このまま、ずっと一緒にいたい・・・悪魔が「いいよ」とささやいた
・・・つづく