アカバネーゼのささやき

夫の裏切り!妻の仕返し!夫婦とは?自立に目覚めた私が起業するまで!

魂のぬけた夜

2006年06月05日 | Weblog
41歳の普通のおばさんは、家路を急ぎ、帰りにいつものようにスーパーに寄った

クリスマスの夕飯のために、骨付き鶏肉とサラダ用の野菜、ミネストローネに入れるマカロニを買った

スーパーの入り口で流れているクリスマスソングは、ほんの数時間前にタクシーの中で聞いたあのマライア・キャリーだった

さっきまで彼に包まれていた手は、今は、重いスーパーの買い物袋を持ち、ネオンの光の中で輝いていたセーターのビーズは、スーパーマーケットの明かりの下ではすっかり色あせて見えた


いつもより少しだけ手の込んだ夕食・・・

でも夜景もキャンドルもない
そして、あの安心できる笑顔もない...


子供がしきりに今日のケーキ作りの話をしている
私は大げさに驚き、主人は嬉しそうに笑った

テレビからはクリスマスソングが流れ、耳障りな同じ曲がしつこいくらいに聞こえている
なんだか、急に悲しみで胸が苦しくなった

トイレに入って鏡を見たら、帰り道に涙で流れたアイシャドウが色あせ、そこには疲れたおばさんが悲しい顔で立っていた

『よかったんだ、彼の前で魔法が解けなくて・・・!よかったんだ、シンデレラのまま帰って来られて、、、これでよかったんだ』

ホッとすると同時に、鼻の奥がまたツーンと痛くなってきた

私は、トイレットペーパーで鼻をかみ、ゴシゴシと目をこすった


「サンタが来るまで、今夜は寝ないから!」
と娘が頑張っている

いつもなら笑ってしまうそんな可愛い台詞も、今晩は少しうっとおしい気持ちになった

早く、一人になりたい・・

完全に「母」に戻れない私・・・


ほんの半日前に私は、タクシーに乗せられて夢の中に連れて行ってもらった

ステキな想い出…

ステキな夢のようなクリスマス・・・

ステキな…
二度と来ない、寂しい…悲しい…クリスマス・・


まるで魂をぬかれたみたいな夜だった

・・・一人ぼっちの彼は今頃どうしているのだろう?

「ごめんなさい」と伝えたい



「頭が痛いの」

主人に伝えて、一人早く布団に入った

もう、クリスマスソングは聴きたくなかった


翌朝から子供とともに冬休みに入ったが、何もする気がしなかった
仕事に燃えていた私は、もう専業主婦に戻れなくなっていた

結局、東京にいても気持ちが落ち込むだけで、何にもする気がしない。。考えたq末、主人よりも一足早く実家に帰ることにした


・・こんなに、彼の存在が大きかったのか?
安心できる家庭に戻ったはずなのに、何か大きな落し物をしたみたいだ・・

仕事ばかりしていたので、たくさん家の中の大掃除をしなければならなかったのに、何にもせずに帰ってきてしまった

今まで、専業主婦のときは、いったい毎日何をしていたのだろう?

実家に帰っても、何にもする気がしない
ただ時間だけが過ぎていく
誰にも言えない・・・
このままずっと時間が過ぎていくのかな…?

仲良しの友達に久しぶりに会ったが、キャリアウーマンの武勇伝を話しても、まさか「若いカレ」の話なんてできない…

「あのときにあんなに傷ついたのに、ご主人とおんなじ事やって、どうするの?」
と、きっと友達は言うだろう

もう、今年で夢は終わりにしよう

来年からは仕事と家族のために生きるぞ!!


大晦日・・・遠くで鐘がなっている

私はこの嵐のような一年を忘れないだろう


年が明けた

1月1日の年明けすぐに、知らない間にバッグの中にメッセージは届いていた

「あかばねっち、あけましておめでとう!
僕は、あれから毎日あなたの事を考えました。
あなたは、僕の彼女ではなく、人の奥さんであり、可愛い子供の母である…ということを忘れていました。
僕の彼女になることはできないけど、それでもあなたとの縁が切れる事だけは、考えられません。絶対にありえません。
メール友達でもいい。仕事の仲間でいい。
それでも僕にはあなたの存在が必要なのです。
いつか、おじいさん、おばあさんになっても、縁側でお茶を飲みながらあなたが楽しそうに笑っている姿を見たいと思っています。
絶対にあなたに迷惑はかけません。
今年もよろしくお願いします。N」

気が付いたのは翌日の夕方だった


・・・つづく