アカバネーゼのささやき

夫の裏切り!妻の仕返し!夫婦とは?自立に目覚めた私が起業するまで!

何も見えない二人

2006年06月25日 | Weblog
仕事が終わると、彼の販売センターの近くの路地で逢う事が日課になっていた


そこは仕事仲間もよく通る道

目の前のパーキングは社内の人もよく使う

ついさっき接客したお客さんが通るかも・・・


そんな事も、二人には見えないらしい


彼の目には私しか映っていないし、私も彼以外、何も見えなかった

危ない、危ないよ・・・



話したいことが山ほどあるのに、逢うとただ手を繋いで看板の前でうつむいていた

たった5分の充電時間だったが、二人には不可欠な時間だった


一日にあったことを話す・・・お互いに頑張ったね…と認め合う

ただ、それだけだったが、その時間のために、一生懸命に営業ウーマンも妻も母も主婦もPTAも全てこなした


「今度何を着て行こうかな?」

「長いスカート」

「オバサンっぽくない?」

「誰か他の人にキミの足を見られるのが悔しいから・・」

「その意見、異常だよ!誰がオバハンの足を見るの?」

「キミが思っているほど、おばさんじゃないよ。僕は心配で仕方がない!」


・・・他の誰かが聞いたら、後ろから飛び蹴りされそうな台詞。。


調子に乗ってついでに、もう一つ自慢しておこう!


会社の帰りの待ち合わせ場所で、看板の前で立っている私に、手でほっぺを挟んで


「ねぇもっと老けてよ」

「は??」

「今のままだったら心配だよ」

「これ以上おばちゃんになって、どうするの?」

「そうしたら、誰もキミに振り向かないもん・・」


友達にその台詞を言ったら

「車、一台くらいそのコに貢いだでしょ!」

と言われた

車一台貢いでも、そんな台詞を言う人は、たぶん一生で彼だけだと思う!

ありがたい、、、ありがたい!!


私も必死で働いたが、彼も相当忙しかったようだ

自分の送別会が二日おきに開催され、毎晩さんざん飲まされて、そのまま、また会社まで戻って仕事をこなす日々が続いていた

私と主人の間の出来事を聞いてから、彼は、とても気を使うようになり、どんな夜中でも、私のおやすみメールに対して、必ず、今現在の状態をメールで伝えてくれるようになっていた

「今、販売センターのパソコン前だよ」

「今日は同期で飲んでるよ」

「今、本社ビルの前でタクシーに乗ったよ」

「今日はオールになりそうだよ。キミの写メールを置いて仕事してるよ」


必ず、写メールで自分のデスクや、本社ビルを見上げた写真、販売センターのエントランス・・・いろんな写真が毎晩送られて来る

「別に疑っていないKら、写真はいいよ。」

「ずっと、安心して欲しいから」

どんな状態でも返事をくれた

いいよ・・といいつつ、なんだかその誠実さが嬉しかった


「私も誠実よ!」

・・と言いたいところだが、私は、家に『他の人』がいた

それだけヤキモチ焼きの彼が『他の人』の事を、悪く言わないのが不思議だった

彼と『他の人』の関係は、これからもずっとずっと続いて行くのだが、二人の間に不思議な連帯感や、特別な信頼感があるのはなんだろう・・?



いよいよ明日から旅立ち…だという日、私は夕食のとき、

「予定通り、いつものメンバーで明日1泊で温泉行ってくるね~。お留守番よろしくね」

子供も主人も、テレビを観たまま何も言わずに

「は~い」

と言っている

主人は、もともととてもマメな人だっただから、私が旅行に出かけても、ご飯も作ってくれるし、いつも安心して出かけることができた

私が母と海外に行った時なんて、子供のお弁当まで作ってくれた


平和な顔でテレビを観ている主人を横目で見ながら、ふと

『もしも、主人がこの旅行の相手を知ったら、殺されるだろうな・・・』

と、頭をよぎった・・・


でも、私の頭の中は、明日、一緒に彼と過ごしたい・・というその気持ちでいっぱいだった


この行為が主人を裏切る、家族を裏切る…主人を深く深く傷つける行為だと気づかされるのに、あまり時間はかからなかった




・・・つづく