あと15日間、どうやって過ごせばいいのだろう?
もうすぐ逢えなくなってしまう・・・
毎日いつもいつも逢っていたわけではないし、一緒に仕事をしているわけでもない
でも、いつでも彼は飛んできてくれる
いつでも私が飛んでいけば逢える
・・・だから、その支えがあったからどんな事も越えてこられた
もう、仕事の帰りに誰も助けてくれない…
病気の彼に、熱さまシートを貼ってあげることはできない…
タクシーの中で、二人とも無言だった
彼は「お台場」と行き先を告げた
彼の手から私の手に、切ない想いが充電される
私の手から彼の手に、迷いと悲しみが放電される
どうすればいいのかわからなかった
いい大人なのに「性欲」ではない、「母性」?でもない
なんだろう?この気持ちは?
ただずっとこうしていたい、まるで母体の中にいるような安心感
「この人に任せていれば大丈夫・・・」という思い
父親がすぐ隣で見守っていてくれるような暖かさ
こんなに緊張しているシーンなのに、眠くて仕方がない
このまま少し肩にもたれてもいいかな・・・
誰かがほっぺたを指でツンツンとつついている
なんとなく目が覚めるとレインボーブリッジを渡っていた
私は、彼が隣にいることを確認したら、また眠くなってしまった
「僕もウトウトしてた。。。なんだかすごく眠たいね。でもあかばねっちのイビキで目が覚めたよ!」
「う。。うそ~っ!」
「本当だよ!グググって聞こえて、起きたんだから」
ゲッ~ガハハハハハハハ~
二人で顔を見合わせて大笑い!!
急に彼は「あ、有明の方に言ってください」
と言った
タクシーの停まったところは大きな家具屋さんだった
「今度のモデルに使うソファやインテリア、一緒にみてくれる?」
「はい、付き合います」
平日の輸入家具の店は、とても空いていた
「インテリアが好きで、いろんなところに見に来るんだ」
「私は、新居に入る前、主人と何度も家具を見に行ったよ」
「あのさ、ご主人のこと『他の人』って呼んでもいいかなぁ?なんか悔しいからさ!」
「フフフフフ、『他の人』かぁ・・わかりました」
家具屋さんの広いフロアはたくさんのエリアに分かれており、私たちは二人でゆっくりと歩いた
「いつも仕事仲間と一緒に来るか、一人で打ち合わせで来るかだったんだ。いつもカップルが一緒に家具を選びに来ていて、すごくうらやましかったんだ」
「誰かとデートで来ればよかったのに…」
「一緒に家具を見たい人は、今までいなかったな」
「僕はこんなソファが好きなんだ」
「いいねぇ、なかなかセンスいいんじゃない?」
「こんな風に使いたいんだ」
「これはどう?」
「君と一緒だったらいいのに…」
「え?」
沈黙...
「他の人の事をずっと愛してる?」
「他の人には、彼女ができちゃって・・。ま、結婚したらいろいろあるんだよ」
「他の人のこと、今でも好きなんでしょ?」
「ずっと好きだったよ。本当に好きだと思ってた。でも、今はわからない」
「どうして、こんなにステキな奥さんがいるのに、きみを悲しませるの?」
「そんなにいい奥さんじゃなかったのかも」
「僕は絶対に君を悲しませないのに」
「それはわからないよ。結婚したらみんな変わるんだよ」
「絶対に悲しませない、一生きみを愛するよ」
「そんなこと、誰も信じられないよ。時間が経てば人の気持ちは変わるから」
「どうしてそんな絶望的な考えなの?」
「もう、疑ったり裏切られたりするのが怖いから」
「じゃあ、僕と結婚して?絶対に変わらないって誓うから」
「そんなの信じられないよ。いいの、このままで 結婚なんてもう誰とも一生しないよ」
「誰がきみをそんな人に変えたの?」
彼は悲しい目をして振りむいた
キッチンの食器棚がいっぱいあるフロアで、彼は私を抱き寄せた
「絶対に悲しませないから」
二人は食器棚の影で、静かに長いキスをした
なぜだか、涙が止まらなかった
なんだか、やっとここに落ち着いた・・・というような、不思議な安堵感だった
彼はずっとそこでおでこをくっつけたまま、
「だから結婚しよう?」
と言った
私は、鼻水をすすりながら、
「私、もう結婚してるってば」
「子供さんからママを取り上げられない。だから、ずっとずっと先でいいから結婚しよう?」
「そうしたら私はおばあさんになってしまうよ」
「仲良しのおばあさんと、おじさん・・でいいじゃん!」
真新しい家具に囲まれて、私たちは会社のことも、「他の人」のことも、全部忘れて現実逃避していた
ゆっくりと幸せな時間だった
・・・つづく
もうすぐ逢えなくなってしまう・・・
毎日いつもいつも逢っていたわけではないし、一緒に仕事をしているわけでもない
でも、いつでも彼は飛んできてくれる
いつでも私が飛んでいけば逢える
・・・だから、その支えがあったからどんな事も越えてこられた
もう、仕事の帰りに誰も助けてくれない…
病気の彼に、熱さまシートを貼ってあげることはできない…
タクシーの中で、二人とも無言だった
彼は「お台場」と行き先を告げた
彼の手から私の手に、切ない想いが充電される
私の手から彼の手に、迷いと悲しみが放電される
どうすればいいのかわからなかった
いい大人なのに「性欲」ではない、「母性」?でもない
なんだろう?この気持ちは?
ただずっとこうしていたい、まるで母体の中にいるような安心感
「この人に任せていれば大丈夫・・・」という思い
父親がすぐ隣で見守っていてくれるような暖かさ
こんなに緊張しているシーンなのに、眠くて仕方がない
このまま少し肩にもたれてもいいかな・・・
誰かがほっぺたを指でツンツンとつついている
なんとなく目が覚めるとレインボーブリッジを渡っていた
私は、彼が隣にいることを確認したら、また眠くなってしまった
「僕もウトウトしてた。。。なんだかすごく眠たいね。でもあかばねっちのイビキで目が覚めたよ!」
「う。。うそ~っ!」
「本当だよ!グググって聞こえて、起きたんだから」
ゲッ~ガハハハハハハハ~
二人で顔を見合わせて大笑い!!
急に彼は「あ、有明の方に言ってください」
と言った
タクシーの停まったところは大きな家具屋さんだった
「今度のモデルに使うソファやインテリア、一緒にみてくれる?」
「はい、付き合います」
平日の輸入家具の店は、とても空いていた
「インテリアが好きで、いろんなところに見に来るんだ」
「私は、新居に入る前、主人と何度も家具を見に行ったよ」
「あのさ、ご主人のこと『他の人』って呼んでもいいかなぁ?なんか悔しいからさ!」
「フフフフフ、『他の人』かぁ・・わかりました」
家具屋さんの広いフロアはたくさんのエリアに分かれており、私たちは二人でゆっくりと歩いた
「いつも仕事仲間と一緒に来るか、一人で打ち合わせで来るかだったんだ。いつもカップルが一緒に家具を選びに来ていて、すごくうらやましかったんだ」
「誰かとデートで来ればよかったのに…」
「一緒に家具を見たい人は、今までいなかったな」
「僕はこんなソファが好きなんだ」
「いいねぇ、なかなかセンスいいんじゃない?」
「こんな風に使いたいんだ」
「これはどう?」
「君と一緒だったらいいのに…」
「え?」
沈黙...
「他の人の事をずっと愛してる?」
「他の人には、彼女ができちゃって・・。ま、結婚したらいろいろあるんだよ」
「他の人のこと、今でも好きなんでしょ?」
「ずっと好きだったよ。本当に好きだと思ってた。でも、今はわからない」
「どうして、こんなにステキな奥さんがいるのに、きみを悲しませるの?」
「そんなにいい奥さんじゃなかったのかも」
「僕は絶対に君を悲しませないのに」
「それはわからないよ。結婚したらみんな変わるんだよ」
「絶対に悲しませない、一生きみを愛するよ」
「そんなこと、誰も信じられないよ。時間が経てば人の気持ちは変わるから」
「どうしてそんな絶望的な考えなの?」
「もう、疑ったり裏切られたりするのが怖いから」
「じゃあ、僕と結婚して?絶対に変わらないって誓うから」
「そんなの信じられないよ。いいの、このままで 結婚なんてもう誰とも一生しないよ」
「誰がきみをそんな人に変えたの?」
彼は悲しい目をして振りむいた
キッチンの食器棚がいっぱいあるフロアで、彼は私を抱き寄せた
「絶対に悲しませないから」
二人は食器棚の影で、静かに長いキスをした
なぜだか、涙が止まらなかった
なんだか、やっとここに落ち着いた・・・というような、不思議な安堵感だった
彼はずっとそこでおでこをくっつけたまま、
「だから結婚しよう?」
と言った
私は、鼻水をすすりながら、
「私、もう結婚してるってば」
「子供さんからママを取り上げられない。だから、ずっとずっと先でいいから結婚しよう?」
「そうしたら私はおばあさんになってしまうよ」
「仲良しのおばあさんと、おじさん・・でいいじゃん!」
真新しい家具に囲まれて、私たちは会社のことも、「他の人」のことも、全部忘れて現実逃避していた
ゆっくりと幸せな時間だった
・・・つづく