新・アドリアナの航海日誌

詩と散文、日記など。

エイエン

2022-03-24 05:46:45 | ポエム



エイエン

過ぎてゆく日々のなかに
流れない時間がある
時の本のなかに
しおりのように挟まれてある
エイエンという名の
いちまいの枯れない葉
あの日の風の香り
あの日の陽のひかり
なにもかも
手つかずのままここに



ジュテームジュテーム(改訂版)

2022-03-09 05:38:41 | ポエム
ジュテームジュテーム

je t'aime je t'aime je t'aime
風がそっと吹くように
あなたに告げたいことばがある
木の実が熟れて
木から落ちるように

je t'aime je t'aime je t'aime
何度でもひとりつぶやく
あなたの後姿を
すぐそばで眺めながら
恋はとても近くとても遠い

je t'aime je t'aime je t'aime
それは小さな鳥のかたちをして
ある日私の肩にとまる
それは雪のかたちをして
ある日私のまわりを包む

je t'aime je t'aime je t'aime
恋はまぶしい夏のひかり
恋は扉のない檻(おり)
胸の小箱にしまったままの
青いガラスの欠片(かけら)

je t'aime je t'aime je t'aime
ああ わたしはいつも
あなたのそばでまわる風車
ああ わたしはいつまでも
あなたの周りを吹き抜ける風
je t'aime je t'aime je t'aime
je t'aime je t'aime je t'aime
・・・・・・・・・・・

夜更けのピエロ

2022-03-09 05:36:47 | ポエム
夜更けのピエロ



夜更けひとり歩くピエロ
つま先立ちで軽やかに
どこかの枝にかけたままの
忘れ物を探しに

夜更けひとり歩くピエロ
月の影を踏みながら
思い出の袋につめる
忘れ物を取りに

窓辺にともる灯りの影に
寂しい娘のため息ひとつ
泣き虫坊やに出会ったピエロ
赤いお鼻で笑わせた

夜更けひとり歩くピエロ
風のゆるんだ夜のこと
茉莉(まつり)花(か)香る夜のこと
お空の上でお月さま見てた

ひみつ

2022-03-08 21:27:11 | ポエム
ひみつ

あんな
これないしょやけど
うちあのこがすきやねん
だれにもいわんとってな
めったにあわれへんけど
おうたらやさしゅうこえかけてくれる
せやけど、それはうちにだけやない
みんなにそうやねん
だれにもいうたことないけど
うちまえからずっと
あのこがすきやってん
けどおとながいうとったわ
ひとをすきになるのはあほやて
しんどいおもいするだけやて
せやなあ
うちはこどもやけど
わかるきがする
あのこがほかのことしゃべってると
やっぱりさみしなるもんなあ
かおりちゃんはどうおもう?
あきらめたほうがええやろか?
そんなことより
べんきょうせえてか
そんなことより
しゅくだいおしえててか
そらしゅくだいのほうがかんたんや
じんせいのもんだいは
なんぼかんがえてもとかれへん
わかっているのは
ひとつだけ
なんやしらんけど
あのこがすきやということだけや



うたかたの夢

2022-03-06 09:23:52 | ポエム
うたかたの夢

一度きり
そのひとと桜の下を歩いた
川からの風がほほを撫でるなか
たわいない話で笑った
まるでこいびと同士のように

二度と
こうやって歩くことはないだろうと
歩きながら思っていた
それでも
あふれてくる思いをおさえきれぬまま

  あの船はどこから出ているのですか?
  そうですね、きっとあの橋のたもとから

そんな何でもない会話に
胸をおどらせると
川を遊覧船が過ぎていった
子犬が駆けていった
散歩するひとたちが過ぎてゆき
鳩が飛び立った
桜の下を
その日が煌めきながら過ぎていった

一度きり
そのひとと桜の下をあるいた
春爛漫の青空のもと
それは神さまが与えてくれた
うたかたの夢だったか
誰の目にも止まらず
どんな形にもならないまま
いつまでも静かに燃えている
胸のなかでちいさな炎となって



うたかたの夢

いつしらず
胸に灯りし
ちいさき火
風にゆれる日かなし
夢いだく日かなし