「白木蓮」
春が来たと告げるように
街路樹の白木蓮が咲いた
その白い花を見て思う
あなたに会いたい と
まるで
ハンバーグやいちごが好きだと言うみたいに
さりげなく
あなたに恋しています と言ったひとよ
ワインの酔いのままに
そのとき
わたしはやわらかな
白木蓮のはなびらのようなものに
包まれたのでした
まだほとんど知らないひとの
少女でもないわたしが
少女のように頬を赤らめたことに
あなたはお気づきになったでしょうか
それとも
ほどよい酔いのせいだと
見過ごされたでしょうか
その夜の思い出のために
書いておきたいのです
白木蓮のような甘い香りが
いつまでもわたしを包んでいるのですから
あなたに
会いたい と。