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新・アドリアナの航海日誌

詩と散文、日記など。

誰ひとりとして

2021-08-23 21:54:30 | 感受性の木
わたしたちはこの世で
誰ひとりとして
たやすいところに立ってはいない
細い綱の上を渡る
じつに不器用な軽業師である
わたしたちはこの世で
誰ひとりとして
何も失わなかったひとはいない
大切な何かは
しばしばどこかへ運びさられた
だから
あなたを愛すると
言ってはいけないだろうか
友よ あなたのことだ
かたわらにいる友
たとえまだ会ったことがなくても
永遠に会うことはなくても
どこかで生きている友
命がけで細い綱の上を渡っている
私とよく似た
あなたのことだ

途方に暮れて

2021-08-23 21:53:22 | 感受性の木


どこかで木の実の落ちる音
聞こえるような秋の夜
どこかでぴゅうぴゅう風の音

風も迷うことがあるかしら
途方に暮れて
帰り道を見失うことがあるかしら

あのかたに出会ったときの
わたしのように
戸惑うことがあるかしら

どこかで夕べの鐘が鳴る
帰り道を見失った風のために
やさしい歌を歌ってる