入籍記念日にと、久しぶりに奮発して食事をしようと言うことになり、以前から気になっていた店を予約した。女鳥羽川沿いの時計博物館の向い側のビルの2階にある「そらのかなた」である。予約しないと中々入れない高級和食店として有名な店だ。夫婦揃って多少の緊張を覚えつつ予約の日時に店を訪問。清楚で落ち着きのあるカウンターに案内を受け着席。実は予約の際にカウンターが一杯だったので日にちをずらしてまでこのカウンターにたどり着いたのだ。それだけこの店のカウンターで見る板前さんの仕事が楽しみだった。さてビールを1本頼み乾杯していると1皿目の料理が。先に途中まで出てきた料理を書いておこう。(メニューがないので板前さんが説明してくれた内容を覚えている感じで)
1皿目 茶碗蒸しのかぶらあんかけ
ウニの入った茶碗蒸しに暖かくダシの利いたあんかけがかかった1品 冷えた体に暖かい出迎えがうれしい
2皿目 ひらめの炙り フキノトウの香り
軽く炙ったひらめの刺身にペースト状のフキノトウが乗った春らしい一皿 日本酒に合う。ここで愛知の銘酒「醸し人九平次」を頂く。香り高い純米吟醸が美味い。
3皿目 アイナメと菜の花のお椀
カニを包んだアイナメを炙りお出汁をはったお椀 生ワサビの香りがたまらない。
4皿目 お造り (醤油は刷毛で塗るのである)
奄美大島の炙り大トロ まぐろの赤身づけ 中トロ さよりの昆布締め ひらめの肝巻
ひらめのエンガワ 生湯葉とウニ 真鯛 金目鯛 炙りフグ 赤貝のミニちらし寿司。この辺でお酒も燗酒に移る。兵庫の「奥播磨」の山廃をぬるめにつけてもらう。うまし!
5皿目 たけのこと金目鯛の菜の花仕立て
茹でたたけのことおそらく麹で香り付けした金目鯛を炙り、上にペースト状の菜の花を。この菜の花ペースト極めてが美味い!板さんに話しを聞いたので家で再現してみよう。
6皿目 自家製うどん そら豆ソース
自家製のコシのある細いうどんにそら豆のソースをかけ、周りにダシの利いたゼリーが。この辺でお酒は「大七」の燗酒をもらい、嫁さんは自家製イチゴと日本酒のカクテルを。
7皿目 フグの炙り
目の前で炭火で焼いたフグ みりんと醤油で下味がついており、ブリブリして甘い!
8皿目 たけのこ饅頭
たけのこを砕き、千切のたけのことで作った饅頭に濃いダシの餡がかかる一皿。
9皿目 金目鯛の炊き込みご飯
2種類あるご飯から選択。2人分だけを土鍋で炊き上げる。上品で香ばしい。それぞれ2杯を平らげたら、残りはお持ち帰りにしてくれるうれしい心意気。お漬物も美味かった。
僕は最後に「大信州」の「手いっぱい」を頂く。フルーティーで美味い。大信州はやはり美味い。最後はデザート 6種類あるデザートから嫁さんは自家製黒糖プリンを。僕はうぐいすきな粉のアイスクリームを。どちらも甘すぎず丁寧な大人の味。お茶も濃く香り良く美味い。
最初から最後まで心置きなく楽しめた。丁寧な仕事を目の前に見つつ、夫婦で色んな話しをしながら最高の料理を楽しんだ2時間ちょっとの至福の時。このお店はお客さんがここで食事をする時間を繊細に、暖かく、ちょうど良い距離感で満たしてくれる。必要以上に話してこないし、おしぼりの差し替え、お茶の交換するタイミングなど、とにかく気持ちが良いのだ。そして僕がもっとも驚いたことは、お椀が供される際の板さんの不思議な行動であった。お椀に料理を盛り付け、フタをかぶせた後、そのフタの上に霧吹きで軽く水をかけたのだ。何かの香り付けかと思ったが何の匂いもしない。おもわず今のはなんだったのか聞いてみた。答えはこう「フタを触ると指紋がつきます。水滴をつけることでだれも手をつけてないことを示すための作法です。だれもお椀をあけてませんよ、という意味です」と。知らなかった和食の作法。感動した。とにかく意を決して開いた扉の奥には素敵な空間と時間があったのだ。サービス業とはかくのごとくあるべし。その見本となる和の心づくしを堪能した夜であった。