>>パリへ留学中の鉄幹を追って、渡欧したときの歌が収められている『夏より秋へ』。
ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君も雛罌粟(こくりこ)われも雛罌粟
もう一冊、晶子の歌集をあげよと言われたら迷わず『白桜集』だ。 晶子が亡くなって後に編まれた遺歌集で、ここには鉄幹への挽歌
が収められている。 挽歌といっても、ほとんど相聞歌と呼べる内容だ。
青空のものと楓のひろがりて君亡き夏のはじまれるかな
晶子の生涯を知ると、恋は数じゃないな、とつくづく思う。 もちろん、平和な相思相愛の状態ばかりではなかっただろう。 けんかして鉄幹が家出したことや、浮気を告白されて晶子が傷つくことなども、あったようだ。 そういうことをも含めて、恋愛というものを、晶子は味わいつくしたのだと思う。 その相手は、鉄幹というたった一人の男性で、十分だった。
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