茂木健一郎『クオリアと人工意識』、講談社現代新書2576(2020.7)
クオリアの伝道師が久しぶりに書いた本です。
人工知能に関連する話題を極めて広い範囲で紹介しており、著者の博識ぶりに驚かされます。
私は、茂木が人工意識についてどのような分析をしているのかを知りたいためにこの本を購入しましたが、人工意識に関する説明は殆どありません。
その点は期待外れでした。
哲学的議論が大半を占めています。
本のタイトル『クオリアと人工意識』は、内容を反映していません。
「人工意識」が入っている以上、これに関する研究の紹介もすべきでした。
看板に偽りありのタイトルです。
人工意識の研究でよく参照されるトノーニの統合情報理論についても一切触れていません。
茂木は、この理論を評価していないのでしょう。
茂木は、意識の定義について議論するのは無駄であると断言しています。
それにも拘わらず本書の至る所で意識について触れていることに釈然としないものがあります。