物理(還元)主義は、意識やクオリアなど心に関する現象をすべて脳神経回路内の物質現象として物理的に説明できると主張します。
この主張が「心脳同一説」と呼ばれるものです。
ところで、近年深層学習を用いた人工知能(AI)が急速に進展し、その驚異的な学習効果には想像を超えるものがあります。
数十年後には、人間の知的作業の多くは人工知能が代用することになるそうです。
この人工知能の本質について考えてみましょう。
人工知能で重要な役割を担っているのは脳神経回路における現象を数理科学的にモデル化した通称ニューラルネットと呼ばれるものです。
このニューラルネットに流れるパルスは、0または1を表現します。
この部分が物理主義では認められません。
何故なら、物理学ではパルスの物質的属性は電圧や電流などの物理量に限られるからです。
物理学は、物理量ではない0あるいは1の数的属性をパルスに与えることを認めません。
従って、
(結論1)心脳同一説は人工知能を説明できません。
人工知能は、人間の知的機能と同等あるいはそれ以上の機能を持ちます。
更に、人工知能は与えられた画像や音声に対して人間が認識する結果を正確に予測できます。
この予測能力は、人工知能の学習則が正しいことを実証しています。
脳神経回路には回路に流れるパルスに非物理的な数的属性を付与して情報処理を行う機能があるのです。
言い換えると、脳の情報処理を実現するためには脳神経回路に流れるパルスに数的属性を付与することが不可欠なのです。
しかし、物理主義や心脳同一説は脳神経回路に流れるパルスに非物理的な数的属性があることは認めません。
従って、
(結論2)心脳同一説は、間違っています。