「破産する者は支払不能になった以降、その財産を減らしてはならない」
この「減らす」の中には“返す”も含まれていて
本来、債権額に従って按分される財産を偏った一部の債権者にのみ返してはならないのです。
もちろん、“隠す”ことは論外で、“売る”ことも原則できません。
もしこれらが発覚するとその行為は破産管財人によって否認され
裁判所が権限によって“元の状態”に戻した上で
破産財団に組み込んで債権者に返す原資にされてしまうのです。
私の場合は、Xデーの約1カ月前に自宅を借金がある親戚に
代金の一部を借金と相殺する形を採って売却しています。
この行為に対して、以下が“私個人が憶測する”疑われた点です。
1.借金が本当にあったのか…実際にはその事実がないのにあったように装い
現金が動かない相殺の領収証を取り交わしたことで親戚と共謀して財産(自宅)を隠匿した。
2.借金が本当にあったとしても、その価格が相場を大きく下回っていないか…
絶対的に財産を減少させたことになり、他の債権者に不利益を与える行為に当たる。
3.相当価格で売却していても、隠匿の恐れを現に生じさせていないか…
不動産より隠し易い現金に換える行為そのものがこれに当たるとされる。
4.相殺という方法で一部の債権者(親戚)にのみ偏って返済していないか…
本来、破産財団に組み込まれて債権者に均等に按分されるべき財産である。
(3.と4.はそれを行った時期も問題、つまり支払不能の状態にすでにあったのかどうか)
以上、すごいですねぇ、法律は!
ちょっと勉強しただけでこんな事態まで想定していることを知りました。
1.が何の法律に抵触するかは定かではありませんが
2.~4.は破産法第160条~162条にある「詐害(さがい)行為」と呼ばれるもののようです。
また、相殺という行為に関してもそれを制限する法律があるようです。
これらを基に、破産管財人は自宅売却の行為自体を否認する権利を持っているのです。
否認されると登記簿が元に戻り
つまり、すでに親戚の名前に変わっているものが私の所有に戻るのですから
私の破産財団に組み込まれ、換金のうえで債権者に配当されるというわけです。
ただ、現実的には購入した親戚に対して破産管財人から何がしかの請求が上がり
この得た現金を配当に回す方法が採られることが多い、と聞きました。
親戚が「受益者」と呼ばれるのは、ただ一人損害を被っていないからです。
こうした破産管財人の否認権の一方で、免責不許可事由にも下記のように似た表現が2つあります。
*破産財団に属する財産を隠したり、壊したり、債権者に不利益に処分したとき。
*破産の原因があるのに、特定の債権者に特別の利益を与える目的で
担保を提供したり、弁済期前に債務を弁済したとき。
この否認権と不許可事由の相互関係を個人的に解釈するとこうなります。
当初の破産&免責申立に対して、免責不許可事由にあたる疑いがあるとされると
同時廃止にならず管財事件として扱われる。
そして、裁判所が選任した破産管財人がさまざまな調査の上で
免責を許可するかどうかの意見書を提出し、それを基に裁判官が決定を下すことになる。
破産管財人には否認権という権力が与えられ、必要なら破産法などの該当する法律に基づいて
これを行使し、債権者に配当するための原資を確保、それを債権額の比率で按分し配当する。
ところが、ここから先が分からないのです。
それを行使されたうえで、免責不許可事由に該当する行為をしたことを理由に
破産管財人は“免責不許可が相当”との意見書を提出することになるのでしょうか。
とすれば、あとは裁判官の「裁量免責」なるモノに一縷の望みを託すか
すで破産者なのに免責不許可により借金は残ったまま、という最悪の結果を待つことになってしまうのです。
とにもかくにも、免責が許可されて借金がチャラになる日を
指折り数えて待つ日々が続いています。