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《注目の書籍》日本を一番愛した外交官  ウィリアム・キャッスルと日米関係

2023-03-23 04:38:36 | 書評

《注目の書籍》日本を一番愛した外交官
ウィリアム・キャッスルと日米関係

田中秀雄 著 

芙蓉書房出版刊

定価2,700円(税込み2,970円)

 

「日本とアメリカは戦ってはならない!」
昭和初期、日米間に橋を架けることを終生の志とした米人外交官がいた! 
駐日大使、国務次官を歴任したキャッスルの思想と行動、そしてアメリカ側から見た斬新な昭和史
 

《はじめて紹介される事実の数々……》

✺排日移民法(1924年)のきっかけを作った埴原駐米大使の失言は実はヒューズ国務長官の示唆によるものとキャッスルが証言

✺パリ不戦条約(1928年)の実質的作成者はキャッスルだった

✺スティムソン国務長官の「満洲国不承認宣言」(1932年)に対しキャッスルは「満洲は日本が統治したほうが一番いい」と主張

✺日中戦争の時代、対日非難の動きに対しキャッスルは「中国を助けるべきではない。それは中国をソ連に明け渡すことを意味する」と主張(同書の帯より)

 

ウィリアム・キャッスル(1878-1963)とは

ハワイ王国生まれ。ハーバード大学卒業後、同大学で英語講師と新入生担当の副学部長を務め、1917年ワシントンDCにアメリカ赤十字局を開設、欧州派遣軍将兵とその家族の支援活動に従事。1919年国務省に入省、国務省西欧部長(ハーディング政権)、国務次官補(西欧問題担当、クーリッジ政権)。1928年パリ不戦条約の制定に関わる。1930年日本特別大使を務めた後、国務次官補、国務次官(フーバー政権)。1933年国務省を退き外交評論家として活動。1936年共和党大統領候補・ランドンの選挙参謀。1940年アメリカ第一委員会に加盟しアメリカの参戦反対の活動に従事。戦後1948年アメリカ対日協議会の名誉会長となり、1960年日本から勲一等旭日大綬章を授与される。

 

【目 次】
序 章■ハワイという橋脚の島
第1章■外交官になるまで
第2章■ハワイにおける大ストライキ
一九〇九年のストライキ/一九二〇年のストライキ
第3章■国務省西欧部長・キャッスル
異例の出世/反日感情の昂進/ワシントン会議/日本移民の国籍問題/ドイツの政情不安/排日移民法の裏にあったもの/石原莞爾の日米最終戦争論/キャッスル、国務次官補となる
第4章■キャッスル、日本特別大使となる
国務次官補からの就任は異例だった/日本協会での演説/在日米人たちに対する演説/『日本及日本人』誌のインタビュー/軍縮会議の推移/多忙なキャッスル大使/キャッスル大使、帰国へ/条約をめぐるアメリカの議論
第5章■大恐慌の時代
アメリカの保護政策/日本の戦後不況と財閥批判/日本の金解禁実行とその影響/統制経済への期待
第6章■満洲事変の勃発
キャッスル、国務次官に就任/事変の勃発/スティムソン、事変拡大にいらつく
第7章■スティムソン長官の不承認宣言
スティムソンの魂胆/三井のドル買い批判/錦州進撃と不承認宣言/第一次上海事件の勃発/日本はフィリピンをねらっている?/フーバーとスティムソンの対立/スティムソン・ドクトリンからフーバー・ドクトリンへ/フーバー、キャッスルとスティムソンの不協和音/満洲国承認は可能である
第8章■キャッスルによる満洲事変の総括
 最近のアメリカの極東政策
第9章■ブロック経済、自給自足経済体制の深化
 世界経済のブロック化/財閥の転向/キャッスルの二・二六事件評/持てる国、持たざる国/日支事変の勃発
第10章■在野において旺盛に外交を論ず
キャッスルのモンロー主義/天羽声明について/ルーズベルトの移民政策/キャッスルの中国論/中国共産党を支持するトーマス・A・ビッソン
第11章■アメリカは戦争に関わらず中立を維持すべきである
米ソの国交樹立問題/ワシントン体制の終了へ/武器禁輸と中立法/戦争に巻き込まれるな
第12章■逆風に抗して―日中戦争の時代
スティムソンの大論説/「日本の中国侵略に加担しないアメリカ委員会」/キャッスルのルーズベルト批判/日米通商条約の破棄/第二次大戦の勃発/キャッスルの不気味な予言/日中戦争における中立性について」/執筆と講演に全力を尽くす/破局に向けて
最終章■第二次大戦中の雌伏、そして戦後の日本の再生
秘策はインド洋作戦/歓迎されないキャッスル/天皇制を問題にするビッソン/終戦前後/ニューディーラーたちによる日本革命/「アメリカ対日協議会」の結成/日本の武装解除問題/日本の防衛問題/吉田茂による憲法改正/岸信介、中曽根康弘を評価するキャッスル/レッド・パージ/老雄たちは逝く

 

「日米戦争で中国は共産化する」と予言!

《ウィリアム・キャッスルというアメリカの外交官は現在あまり知られていません。日本大使もしましたが、歴史的にはライシャワー、グルーほどにも名前が出て来ません。グルーは日米開戦時の大使として、よく名前が出てきますが、実は、このグルーを日本大使に抜擢したのは、フーバー政権の国務次官だったキャッスルなのです。》
 著者の田中秀雄さんが関係者に送った同書に同封された挨拶文である
。実際、「へぇー、ウィリアム・キャッスルという外交官がいたなんてまったく知らなかった」という日本人がほとんどだろう。
 田中さん自身も、ラルフ・タウンゼントの「キャッスルの言論を支持して欲しい」という、非常にかすかな手掛かりから、キャッスルという人を調べ始めたそうだ。そして、「この人ほど、日本のことを理解し、友情と愛情をもって接した人はいない」という結論に至ったという。田中さんは冒頭の挨拶文で、キャッスルの人物像を、次のように手短に紹介している。
《現上皇陛下が生誕された時、いち早くアメリカの新聞で祝辞を述べたのがこのキャッスルです。日本国民と皇室の深いつながりをもよく理解していました。武士道とその忠誠心を高く評価していました。何よりもキャッスルが重要なのは、日米関係が最も悪くなった時代に堂々と、雑誌の論文で、講演会で、連邦議会の公聴会で、日本を弁護し続けたことです。日米開戦の当日にも、ニューヨーク・ヘラルドトリビューンで「日米は戦ってはならない」と論じていました。協力し合うべき日米が戦えばどうなるのか、中国は共産化されるだけだと恐ろしい予言をしていました。そしてその通りになったのです。》
 ウィリアム・キャッスルが日本のために何をしてくれたのか。キャッスルが日米戦争を避けるために尽力したにもかかわらず、両国は戦端を開く。「不必要な戦争だった」としか言いようがない。この日米戦争で一体誰が得をしたのか。ソ連(今のロシア)と中華人民共和国を増長させる結果になったことを誰も否定できないはずだ。
 キャッスルは戦後、「アメリカ対日協議会」(ACJ)の中心人物として活躍した。注目したいのは、ACJが戦後日本を支配したGHQ/SCAP(連合国軍最高司令官総司令部)が作成した「日本国憲法」の改正を主張していたことだ。またキャッスルと吉田茂との親しい関係も触れられており、「平和憲法擁護派」と目されていた吉田が憲法改正に乗り気だったということも詳しく記述されている。
 田中秀雄さんは、歴史の奥に埋もれた人物を発掘して光を当てる名人だ。ウィリアム・キャッスルこそ日本人がけっして忘れてはならない人物ではないだろうか。何はともあれ、日本を心から愛したアメリカの外交官にスポットを当てた同書を手に取ってもらいたい。戦前・戦中・戦後の日米関係史を冷静に振り返る助けになる筈である。

 また昨年暮れに田中さんは反日思想のポール・S・ラインシュの『日米戦争の起点をつくった外交官』(芙蓉書房出版)を翻訳出版した。キャッスルとは正反対の外交官だが、両書を読み比べると、近代日米関係史が手に取るようにわかるだろう。(本ブログ編集人・山本徳造)

 

■この本も読んでいただきたい!

『日米戦争の起点をつくった外交官』

ポール・S・ラインシュ 著、田中秀雄 訳

芙蓉書房出版

定価2,700円(税込み2,970円)

 

 

【田中秀雄(たなか ひでお)さんの略歴】 

昭和27(1952)年、福岡県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。日本近現代史研究家。映画評論家でもある。著書に『中国共産党の罠』(徳間書店)、『日本はいかにして中国との戦争に引きずり込まれたか』『朝鮮で聖者と呼ばれた日本人』(以上、草思社)、『映画に見る東アジアの近代』『石原莞爾と小澤開作 民族協和を求めて』『石原莞爾の時代 時代精神の体現者たち』(以上、芙蓉書房出版)、『優しい日本人哀れな韓国人』(wac)ほか。訳書に『満洲国建国の正当性を弁護する』(ジョージ・ブロンソン・リー著、草思社)、『暗黒大陸中国の真実』(ラルフ・タウンゼント著、共訳、芙蓉書房出版)、『続・暗黒大陸中国の真実』(ラルフ・タウンゼント著、共訳、芙蓉書房出版)、『日米戦争の起点をつくった外交官』(P・ラインシュ著、訳、芙蓉書房出版)ほか。

 

【本ブログでの田中秀雄さんの連載】

■「池上本門寺と近代朝鮮」 田中秀雄(近現代史研究家)
2020/01/25~03/07
 
①力道山 日本人を熱狂させたプロレスラー
https://blog.goo.ne.jp/46141105315genkigooid/e/55c53e59bef50b14fe7ff4b4e8c30f59

②花房義質 波乱の朝鮮に初代公使として赴任
https://blog.goo.ne.jp/46141105315genkigooid/e/70cc6b0a0b261bab6228e5dba6e91cdc

③岡本柳之助 「大陸浪人」の先駆け
https://blog.goo.ne.jp/46141105315genkigooid/e/8ba299bf9c525dc182b0eae4fa5f3323

④野口 遵 朝鮮に世界最大級のダムを建設
https://blog.goo.ne.jp/46141105315genkigooid/e/c9bfbe7cd0904ddf1289aea63a12326c

⑤大野伴睦  日韓国交正常化に尽くした保守政治家
https://blog.goo.ne.jp/46141105315genkigooid/e/df12ceb0d0ac698f14069794babd20d3

⑥児玉誉士夫 アメリカの落とし穴にはまった国士
https://blog.goo.ne.jp/46141105315genkigooid/e/da980b29512246d7521ee92933d42d0a

⑦町井久之 日韓政財界に人脈を広げた最強の黒幕(最終回)
https://blog.goo.ne.jp/46141105315genkigooid/e/d9f921c502e929d3e961234d0b345c19


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