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伽藍で時代と宗派がわかる:美術鑑賞用語のおはなし

2018年05月14日 | 美術鑑賞用語のおはなし



お寺には様々な建物が並び、独特の佇まいを形成しています。建物の配置には一定の規則がありその規則を理解することで、その寺が歩んできた時代に応じて、仏教に対するニーズの違いを知ることができます。

伽藍・境内・堂宇の違いは?

伽藍(がらん)とは、仏教寺院の主要な建物の集まりを呼ぶ総称です。現代ではお寺の敷地を意味する境内(けいだい)とほぼ同意で使われています。境内は神社など他の宗教施設でも用いますが、伽藍は仏教寺院にしか用いません。

堂宇(どうう)とは、仏教寺院の一つの建物を指します。よく使われる「お堂」と同じ意味です。伽藍は建物の“集まり”を指すため、少し意味が異なります。

主要な建物の伽藍配置を見ると、その寺が創建された時代や宗派がおおむねわかります。

古代寺院の伽藍

奈良時代以前に創建された寺はほぼ、平地にしか造られていません。主要な堂宇の配置を見るとその寺の創建時期がわかります。主要な堂宇である金堂・講堂・塔・門・回廊の配置で区別します。古いものから飛鳥寺式、四天王寺式、川原寺式、法隆寺式、法起寺式、薬師寺式、興福寺式、大安寺式、東大寺式、国分寺式が知られています。


四天王寺の伽藍配置

この内、南から北に向かって南大門→中門→塔→金堂→講堂がまっすぐ並ぶ「四天王寺式」は飛鳥時代の7世紀半ばに完成した四天王寺の伽藍配置で、創建当初の法隆寺の若草伽藍、中宮寺、橘寺など飛鳥時代の伽藍配置としては最も多くの採用例が確認できます。

飛鳥時代までは釈迦の遺物をまつる塔と、本尊の仏像をまつる金堂が並んで重視されていました。奈良時代になると徐々に、偶像であるためよりわかりやすい仏像を本尊として安置した金堂が、布教の上で重視されるようになります。

平安時代になると、平安京内の東寺は四天王寺式に近い伽藍配置で造られます。しかし平安京内に他の寺院の創建や移転が禁じられており、密教が盛んになったこともあって、平安時代初期は延暦寺や室生寺など山岳寺院が多くなります。伽藍配置は伝統的なスタイルではなく、地形にあわせて柔軟に配置するよう変化していきます。

平安時代には塔よりも金堂が明確に重視されるようになります。塔は信仰の対象よりも寺のランドマークとしての役割が重視されるようになっていきます。

浄土伽藍

【公式サイトの画像】 毛越寺の伽藍

平安時代の後期、貴族の間で浄土信仰が興隆すると、極楽浄土世界を表現した伽藍が造られます。京都の平等院・浄瑠璃寺・法界寺、平泉の毛越寺に現在も面影が残っています。大きな池の周りに堂宇を配し、あたかも理想郷のような荘厳さを表現しています。

貴族の経済力が強固だったこともあり、金に糸目をつけずに荘厳さの表現を追求しました。結果的に美術品としてもかけがえのない建物や仏像の傑作が数多く造られました。平等院鳳凰堂のように奇跡的に現存しているものも少なくありません。

禅宗の伽藍



鎌倉時代以降徐々に隆盛する禅宗寺院は、三門→仏殿→法堂→方丈と主に南北方向にまっすぐ並びます。一方塔はほとんどありません。仏殿とは金堂のことですが、禅宗独特の堂宇の呼び方をします。

現在の禅宗の本山クラスの大寺院では、明治の廃仏毀釈の影響で境内地の縮小を余儀なくされたところが多く、中心伽藍の周囲に塔頭など数多くの建物があります。そのため境内にゆとりがある寺は少数です。

浄土宗・浄土真宗・日蓮宗の伽藍

【公式サイトの画像】 西本願寺 境内案内図

本尊を祀る本堂以外に、本尊と並んであがめられる開祖をまつる御影堂(みえいどう、ごえいどう)が伽藍の中心に配されている寺院が多くあるのが特徴的です

七堂伽藍とは?

七堂(しちどう)伽藍という言葉を耳にしたことがある方は少なくないと思います。様々な役割の堂宇が完備された伽藍のことを指します。いわゆる“立派なお寺”の代名詞のように用いられます。

七堂と言うように7種類の堂宇で構成されますが、時代や宗派によってその構成はまちまちです。寺にとって大切な堂宇が7種類で収まらない場合もあります。そのため七堂に明確な意味を求めるのは困難です。

院とは?

寺院の「院」とは、壁で囲まれたエリアのことを指します。お寺の名称としてよく用いられます。正倉院のように、複数の倉庫が建てられたエリアを指す場合にも用いられます。

【Wikipediaへのリンク】 伽藍


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