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僧侶の名前で功績がわかる:美術鑑賞用語のおはなし

2018年06月10日 | 美術鑑賞用語のおはなし



お寺に続いて僧侶の格式や役職を表す名称を整理してみたいと思います。

僧侶の名前は寺の縁起や肖像画などの美術品にもよく登場します。ほとんどが敬称付きで表示されています。その僧侶がどのような役割を果たし、どのような評価をされていたのか、敬称でわかるようになります。寺の歴史を僧の功績を理解する上でも、とても役に立つ知識となります。


住職、和尚の違いは? <寺の代表の役職名>

寺の管理運営責任者のことを住職(じゅうしょく)と言います。主に禅宗寺院で使われていた住持(じゅうじ)も同じ意味です。各宗派で住職を指す役職名は多岐に渡っていますが、現代において宗派共通で使えるのは住職です。

明治以降はどの宗派でも妻帯が認められたため、住職は世襲が多くなっています。副住職という役職名もよく耳にしますが、多くは現住職の後を継ぐことが決まっているその住職の実子です。

現代では女性が住職の跡を継ぐことも珍しくありません。住職がいない寺を無住(むじゅう)と言います。


興福寺

和尚は、元は修行僧に仏法を教える師を指しました。宗派によって(おしょう、わじょう、かしょう)と読み方が異なります。現代では住職や僧侶を広く指すあいまいな表現になっています。

坊主(ぼうず)は、元は僧房の主である住職を指しました。これも現代では住職や僧侶を広く指すあいまいな表現になっています。

法師(ほうし)は、元は学識や経験豊かな尊敬される僧侶を指しました。琵琶法師など、僧形に扮した中世の物語の主人公によく用いられています。

【Wikipediaへのリンク】 住職
【Wikipediaへのリンク】 和尚
【Wikipediaへのリンク】 坊主
【Wikipediaへのリンク】 法師


開山と開基 <寺の創始者>

開山(かいざん)とは、寺を創建する行為を指し、転じて創建した寺の初代住職も指します。開基(かいき)とは、寺の創建を発願し建設資金を提供するオーナーを指します。浄土真宗や曹洞宗では開祖を開山と呼びます。

禅宗では、実質的な開山僧(=創建開山)が、師に敬意を表して死後であっても形式的に開山とする勧請開山(かんじょうかいざん)の習慣もよく見られます。

【Wikipediaへのリンク】 開山


大師、国師 <天皇が与える尊称>

中国の皇帝や日本の天皇は、高僧の業績をたたえるためにしばしば尊称を与えています。主に諡(し、おくりな)として死後に与えられたものです。高僧への尊称としては3つがよく知られていますが、格式の違いを示す基準はありません。


東寺

大師(だいし)は、清和天皇が866(貞観8)年、最澄に「伝敎大師」、円仁に「慈覚大師」を贈ったのが最初です。もっとも有名なのは空海の「弘法大師」でしょう。

各宗派の開祖や中興の祖に贈られている例が多く見られます。法然は江戸時代から現代にいたるまで50年毎の遠忌の際に大師号が贈られ続けており、一人で8つの大師号を持っています。

国師(こくし)のほとんどは、臨済宗の開山に贈られています。臨済宗の高僧は大師号が贈られることが多宗派に比べて少なめです。大師・国師以外に禅師(ぜんじ)もあります。禅宗の僧が中心ですが、他の宗派でもあります。

【Wikipediaへのリンク】 大師
【Wikipediaへのリンク】 国師
【Wikipediaへのリンク】 禅師


上人、聖人、老師 <他の尊称>

上人(しょうにん)も高僧の尊称の一つですが、天皇から下賜されたものに限りません。平安時代に諸国を行脚して民衆に布教・社会事業を行った空也(くうや)に名付けられたのが始まりとされます。

聖人(しょうにん)は、各宗派内で宗派の開祖を呼ぶ尊称として多く見られます。キリスト教やイスラム教の聖人(せいじん)とは概念が異なります。

老師は高齢になった層を指す場合に加え、禅宗では修行僧の師となる僧を意味します。

【Wikipediaへのリンク】 上人
【Wikipediaへのリンク】 聖人


僧位 <僧侶の官位>

日本で僧侶に対して国家が与えた位階を僧位(そうい)と言い、平安時代に確立しました。平安時代以降は絵師や仏師などの文化人に与えられるようになり、江戸時代には医師や学者にまで拡がりました。

位階の順位

  1. 法印(ほういん)、僧正(そうじょう)僧侶名に付ける
  2. 法眼(ほうげん)、僧都(そうず)を僧侶名に付ける
  3. 法橋(ほっきょう)、律師(りっし)を僧侶名に付ける


【Wikipediaへのリンク】 僧位


僧禄

僧禄(そうろく)とは、僧侶の人事管理を統括する役職名で、日本では主に臨済宗で使われていました。室町時代は足利幕府の指揮のもと相国寺の塔頭・鹿苑院が、江戸時代には徳川幕府の指揮のもと南禅寺の塔頭・金地院が、それぞれ僧禄を務めていました。臨済宗全体の住職の任命権を握っており、絶大な権力をふるいました。

【Wikipediaへのリンク】 僧禄


出家と還俗 <僧になる、やめる>

僧侶を厳密に定義すると「仏教の戒律を守ることを誓い、修行する人」を指します。

僧侶になるためには俗世間を離れて寺で修行生活を始めます。これが出家(しゅっけ)です、落飾(らくしょく)とも言います。出家の際に行われる儀式が得度(とくど)で、修行者の生活規範である戒律(かいりつ)を授かり、それを守ることを誓います。


一休寺

修行僧のことを古くは小僧(こぞう)と呼んでいましたが、現代では「未熟者、年少者」に意味が変わっています。禅宗では修行僧を雲水(うんすい)と呼びます。

還俗(げんぞく)とは、出家して僧侶になった者が世俗に戻ることです。江戸時代までは武家・公家から出家していた次男以下の者が、家督相続する長男が亡くなったため、還俗して相続する例が珍しくありませんでした。

【Wikipediaへのリンク】 僧
【Wikipediaへのリンク】 出家
【Wikipediaへのリンク】 戒律
【Wikipediaへのリンク】 得度
【Wikipediaへのリンク】 還俗


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