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美術館えきKYOTO「新版画展」 ~ぬくもりのある新版画が勢揃い

2018年07月09日 | 美術館・展覧会

京都駅にある美術館「えき」KYOTOで「新版画展」が始まりました。新版画は大正から昭和初期にかけて隆盛した木版画で、当時モノクロしかなかった写真に代わってフルカラーでリアルに人物や風景を表現したことで人気を博しました。

この展覧会では、川瀬巴水(かわせはすい)と吉田博(よしだひろし)、郷愁のある日本の風景を描いた新版画の二人のスターの作品をたっぷりと鑑賞できます。写真では味わえない木版画のぬくもりの世界にぜひ足を踏み入れてみてください。


展覧会チラシ表面
【画像出典】 美術館「えき」KYOTO公式サイト

川瀬巴水と吉田博は、どちらかといえば日本よりも欧米で人気があります。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブスは川瀬巴水、イギリス王室のダイアナ妃は吉田博のコレクターであったことはよく知られています。

新版画の風景画は、なぜ欧米の人たちに人気があるのでしょうか。新版画は、遠近法や光と影の表現を取り入れて写実的に表現している点が、江戸時代の浮世絵とは異なります。一方で画家・彫師・摺師が三者一体となって制作するスタイルは江戸時代と同じです。

江戸時代の浮世絵よりリアルで、かつ三者のセンスが融合して木版画特有の温かみのある表現に仕上がっていることが、人気の秘密だと思います。ほのぼのとした日本の原風景の版画を見ていると、本当に心が軽くなります。

出展作品は、日本の浮世絵コレクションとしてはトップクラスの質と量を誇る平木浮世絵財団と、大正・昭和初期の新版画の版元だった銀座の美術商・渡邊木版美術画舗の協力で多くが構成されています。

川瀬巴水は東京を中心に全国の自然や都市の風景をモチーフにし、光と影の使い方がとても上手な画家です。人物は、風景の中に顔が判別できないほど小さく表現することが多く、それが逆に自然や都市の風景に生き生きとしたぬくもりを付け加えています。

「元箱根見る南山荘風景(5) つつじ庭に遊ぶ二美人」は、巴水得意の富士山を借景に、つつじが満開であることを、赤を大胆に使って表現しています。これほど赤を多用した巴水作品は他になかなかありません。

山と海の新版画で名高い吉田博による山肌や水の表現は、まるで動き出すかのように生き生きとしています。大自然がもたらす豊かな恵みと美しさがひしひしと伝わってきます。生命感を風景版画に与え、写真ではできない表現をしたのが吉田博です。

「瀬戸内海集 第二 潮待ち」は、静かに潮の流れが変わるのを待っている帆船を描いています。そよ風でわずかに揺れる水面のさざ波と緑が豊かな山肌からは、瀬戸内の温かさが伝わってきます。水面に映る帆船や山の姿は、大自然の恵みがあってこそ人間が豊かな暮らしができることを象徴しているようです。

二人以外にも、関東大震災から復興していく昭和初期の東京の街並みを描いた小泉癸巳男や笠松紫浪の作品も、とても当時のエネルギーを感じる名作です。

新版画の魅力が凝縮されています。行きやすも抜群ですので、ぜひ。


展覧会チラシ裏面
【画像出典】 美術館「えき」KYOTO公式サイト

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



新版画で定評のある千葉市美術館学芸員が選りすぐった名品集


美術館「えき」KYOTO 「新版画展 美しき日本の風景」
http://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_1808.html

主催:美術館「えき」KYOTO、京都新聞、公益財団法人平木浮世絵財団
会期:2018年7月5日(木)~8月1日(水)
原則休館日:会期中なし
開館(拝観)受付時間:10:00~19:30
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。

おすすめ交通機関:
JR京都駅下車、ジェイアール京都伊勢丹7Fへ
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:5分
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には有料の駐車場があります。


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