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京の夏の旅「旧邸御室」 ~とても保存状態の良い昭和の数寄屋邸宅

2018年07月19日 | 城・屋敷・歴史遺産

夏に京都の寺社を中心とした非公開施設の特別公開を行うキャンペーン「京の夏の旅」で、双ヶ岡にある昭和初期の和風邸宅・旧邸御室(きゅうていおむろ)が公開されています。

双ヶ岡の斜面を利用して作られた庭に向き合うよう作られた22畳の大広間には、昭和の富裕層が好んだ数寄屋の風情がそのまま残されています。洋間のガラスには手作りのような色気が感じられます。

京都はこうした邸宅が少なくありませんが、ほとんどは公開されていません。公開のチャンスは見逃せません。


庭を独り占めできる浴室

旧邸御室は昭和12年の建築であることはわかっていますが、建設時のオーナーや設計者はわかっていません。現在は京都の住宅・不動産会社の社長がオーナーで、1969(昭和44)年に先代社長が入手しています。入手時には、NHKの朝の連続ドラマ「マッサン」の主人公のモデルとなったニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝をスコットランドへ留学させた大手酒造メーカー社長・阿部喜兵衛の孫の住居でした。

普段はイベントやセミナーなどのレンタルスペースとして使用されており、観光目的では公開されていません。写真撮影や食事会、ジャズコンサートなどにも使われるように、昭和の邸宅としての美しさがとても良質に保存されています。代々のオーナーが大切に使ってきたことが想像できます。

【公式サイトの画像】 室内や庭の保存状態の良さがよくわかります

建物は国の有形文化財として登録されています。観光で不特定多数が建物に入る常時公開を行うと、やはり木造建築の傷みや汚れにつながります。こうした公開時期を限った鑑賞方式は合理的でしょう。なお床が汚れるため、裸足での見学はできません。夏のサンダル履きでは忘れやすくなりますが、忘れず靴下を持参するようにしてください。



仁和寺のある御室は閑静な住宅街です。仁和寺のバス停と嵐電の駅から旧邸御室へと続く道は、双ヶ岡の小高い山の緑にそよぐ風の音しか聞こえないほど静かです。



中庭をのぞむ1Fの洋間の東側はガラス張りで、戦前までの邸宅によくみられる手作りのようなぬくもりがあります。天井の格子の一部に描かれた花の絵は、この洋間の佇まいにとてもよくあっています。読書をする書斎と考えれば、極上の空間です。



大広間からは南側の斜面に広がる庭が絶景です。縁側に近づくのではなく少し奥から眺める方が、敷居や欄間の数寄屋デザインが額縁のように視界に入るため、より風情を感じることができます。

庭は回遊できます。高台にある茶室からは、緑に囲まれた御室の街並みを眺めることができます。猛暑を忘れるような心地よい風景とそよ風を味わうことができます。


仁和寺から見た嵐電・御室仁和寺駅と双ヶ岡

御室は京都盆地の西北の端にあります。京都駅付近より30mほど標高が高いことから、夏にはそよ風が幾分心地よく感じます。双ヶ岡の山の周辺は、平安時代は貴族の別荘地でした。風光明媚は平安時代から変わっていないのでしょう。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



戦災を免れた京都の100年前の姿が詳細にわかる


第43回「京の夏の旅」 旧邸御室
https://kyokanko.or.jp/natsu2018/natsutabi18_01.html#07

主催:京都市観光協会
会期:2018年7月7日(土)~9月30日(日)
休館日:8/14~16
開館(拝観)受付時間:11:00~16:00
※他の京の夏の旅公開施設より開館時間が1時間遅くなっています。
※この施設は裸足では見学できません。靴下を持参していない場合は受付で購入する必要があります。

旧邸御室
https://www.omuro-kyoto.jp/

※この施設は観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。

おすすめ交通機関:
「御室仁和寺」バス停下車徒歩6分、嵐電(京福電鉄)北野線「御室仁和寺」駅下車徒歩3分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→JRバス高雄京北線栂ノ尾行→御室仁和寺バス停
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設に駐車場はありません。
※道路の狭さと駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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