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興福寺で11/15まで根津美術館コラボ ~梵天・帝釈天100年ぶり再会

2018年10月06日 | お寺・神社・特別公開

奈良・興福寺が300年間待ち望んだ寺で最も大切な堂宇・中金堂の再建が完成し、国宝館では記念の特別展示が行われています。明治の廃仏毀釈の混乱で興福寺が手放さざるをえなかった帝釈天立像が、約100年ぶりに里帰りし、本来ペアである梵天立像と再会している姿にお会いできます。

帝釈天は、三井財閥の益田鈍翁を経て昭和初期に東武鉄道の根津嘉一郎が購入し、現在も東京・根津美術館が所有しています。根津美術館の厚意で実現したコラボ企画で、根津美術館に巡回しては行われません。

両像とも、国宝・維摩居士坐像など多くの美仏を残す定慶(じょうけい)の作です。西域や中国の神であることを思わせる衣や頭部の造形がエキゾチックで、運慶・快慶とは異なる落ち着いた写実性が魅力です。



定慶として知られる鎌倉初期の仏師は実は2人います。今回展示の梵天・帝釈天の作者である定慶は、運慶の父・康慶(こうけい)の弟子と考えられています。となると快慶と定慶は兄弟弟子になります。定慶の作品は興福寺にしか残っていないことから、運慶・快慶ほどは全国を股にかけて注文を受けてはいなかったようです。しかし興福寺にのこした作品は一級品ばかりです。

【公式サイトの画像】 東金堂 国宝・維摩居士坐像
【公式サイトの画像】 国宝館 国宝・金剛力士立像

維摩居士(ゆいまこじ)坐像は、北円堂の運慶作の無著・世親像のように今にも動き出しそうなリアルさは完璧な美しさです。また同じく東金堂で維摩居士とペアになる国宝・文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、国宝館で筋肉隆々のボディがとても美しく造形された国宝・金剛力士も定慶の作とする説があります。すごいラインなップであることはお分かりいただけると思います。

もう1人は区別するため肥後定慶(ひごじょうけい)と呼ばれています。近年の研究では運慶の次男・康運(こううん)が改名したと考えられています。

著名な作品は、現在東京国立博物館で開催中の特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」でお会いすることができる重文・六観音(ろくかんのん)菩薩像や、鞍馬寺の重文・聖観音(しょうかんのん)立像岐阜・横蔵寺の重文・金剛力士像などが知られています。

【東京国立博物館公式サイト】 特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」

興福寺の梵天は重文ですが、根津美術館の帝釈天は国の文化財指定はありません。帝釈天は興福寺の手を離れてから頭部と腕が大きく補修されているためと考えられます。しかしながら胴体と下半身に残った彩色や衣・鎧の造形が優美で、見とれてしまいます。修理で復元されたお顔がエキゾチックで衣装にとてもよく合っています。

【公式サイトの画像】 仮講堂 重文・梵天立像

興福寺の梵天は少年のようなお顔ですが、鋭い目線が観る者を圧倒します。帝釈天のように鎧を付けていないことから、かえって芯の強さを感じさせます。力強く安定感のある見事な造形です。


再建なった中金堂

梵天・帝釈天と並行して展示されている香川県の志度寺・縁起絵には、興福寺を現在地に移転した藤原不比等や中金堂本尊の釈迦如来に関する伝承が収められています。こちらも中金堂の再建を記念して志度寺の厚意で実現したコラボ企画です。南北朝時代ごろに製作されたものですが、奈良時代の息吹がひしひしと伝わってくる名品です。重要文化財です。

梵天・帝釈天や志度寺・縁起絵の展示中も、興福寺国宝館が世界に誇る阿修羅に代表される美仏に通常通りお会いすることができます。中金堂の一般公開や正倉院展など、2018年の奈良の秋はビッグイベントが目白押しです。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



仏像イラストレーター・田中ひろみが届ける美仏が心を安らげる


興福寺 国宝館
中金堂再建落慶記念特別展示
再会 ―興福寺の梵天・帝釈天
【寺による展覧会公式サイト】

主催:興福寺
会期:2018年10月1日(月)~11月15日(木)
※あわせて行われる「邂逅 ―「志度寺縁起絵」特別展示―」の会期は10月31日(水)までです
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:45

※「再会」は会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※「邂逅」は10/15までの前期展示、10/16以降の後期展示で一部展示作品が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。



◆おすすめ交通機関◆

近鉄奈良線「近鉄奈良」駅下車、東改札C出口から徒歩5分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間5分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→近鉄奈良駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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