千体もの仏像が荘厳に堂内を埋め尽くす三十三間堂で、その千体仏(千手観音立像)がまもなく国宝になります。この国宝指定を記念して、「国立博物館から里帰りし全1,001体が勢揃い」&「風神雷神像と同じ目線の高さから千体仏にお会いできる」という、ダブルイベントが行われています。
通常はひな壇上に安置されている千体仏を下から眺めます。奥にある仏様はよく見えないのが正直なところです。今回設置されている高壇は高さが1.2mですが、堂内空間の眺望はケタ違いに見事になります。東寺の講堂の立体曼荼羅と並んで日本の仏教美術を代表する空間美です。見渡す限り仏様の顔です。圧巻の群衆美をぜひお楽しみください。
今回の指定で三十三間堂内の仏像はすべて国宝になります。建物も国宝であり、堂宇丸ごと国宝になっている例は聞いたことがありません。
千体仏は普段、東京・京都・奈良の国立博物館に5体が寄託されています。三十三間堂が万が一災害に襲われた場合に備え、永遠に失われてしまうのを防ぐためです。里帰りし全1,001体が勢揃いするのは26年ぶりです。前回の里帰りは三十三間堂を建立した後白河法皇の800回忌法要の際でした。このクラスの出来事がないと里帰りは行われないでしょう。
なお高壇の設置だけは、毎年3月3日の一日だけ行われます。ただしこの日は三十三間堂が無料開放されることもあり、とても混雑します。
【公式サイトの画像】 千手観音坐像と千体千手観音立像
5体のうち3体は本尊に向かって左端の最前列、2体は本尊の両隣がホームポジションですが、普段でも欠けていることに気づいていた仏像ファンもいらっしゃるでしょう。今回のように欠けておらず、縦横斜め、どの方向から見ても千体仏が綺麗に並んでいる光景は本当に壮観です。本尊や風神雷神、二十八部衆のお顔もどこか晴れ晴れしく見えます。
現代の価値観ではこれだけの規模の仏像空間を造るとなると理解に苦しむ方も少なくないでしょう。しかし三十三間堂を平清盛に造らせた後白河法皇が生きた平安時代末期の貴族たちの価値観は、この圧巻の空間を手にすることが何よりも喜ばしいものでした。現世の救いと極楽浄土へ行けることを祈ることが最高の贅沢だったのです。
そんな800年ほど前の極上空間を今見られることは、本当にかけがえのないことだとの思いをあらためて強くします。
千体仏のお顔が、西安の兵馬俑のように一体一体違うこともよくわかります。運慶の長男・湛慶(たんけい)の最高傑作である本尊の千手観音坐像と千体仏のお顔もぜひ見比べてみてください。本尊の洗練された落ち着きの表情がさらに美しく感じられます。
また少し前の夏(2018年7月)には、風神雷神や本尊周囲の天の位置を、過去の資料から創建当初の姿になるよう入れ替えています。最前列の左端にあった風神と右端にあった雷神が逆になっています。風神雷神や二十八部衆は主に最前列に安置されていますのでとても見やすくなっています。こちらの仏様にも祈りましょう。
三十三間堂は長い
三十三間堂は北から入り東側から仏様を拝観した後、西側のひな壇の裏の廊下を通って出入口に戻ります。この裏廊下も三十三間堂の歴史を学べる史料が多く展示されていますので、ぜひお見逃しなく。またお堂の中心・本尊の裏には1,001体目の千手観音立像が普段から公開されています。とても近い位置から見られます。本尊に比べ小さいながらも、手の込んだ意匠が施されていることがわかります。
こんな仏様を、よくぞ1,001体も造りました。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
洛中洛外図に京都名所はどのような理由で描かれたのか?
蓮華王院 三十三間堂
風神・雷神の目線、千手観音像どう見える? 三十三間堂に壇設置
【京都新聞サイト】
会期:2018年10月3日(水)~11月26日(月)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:00~16:30(11/16以降は9:00~15:30)
蓮華王院 三十三間堂
【公式サイト】http://sanjusangendo.jp/
◆おすすめ交通機関◆
京都市バス「博物館三十三間堂前」下車、徒歩0分
京阪電車・七条駅下車、3,4番出口から徒歩7分
JR京都駅から徒歩20分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:10分
京都駅烏丸口D1/D2バスのりば→市バス86/88/100/106/110/206/208系統→博物館三十三間堂前
【公式サイト】 アクセス案内
※休日の午前中を中心に、京都駅ではバスが満員になって乗り過ごす場合があります。
※休日の夕方を中心に、渋滞と満員乗り過ごしで、バスは平常時の倍以上時間がかかる場合があります。
※この施設には無料の駐車場があります(公道に停車した入庫待ちは不可)。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。
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