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桜と観音まいりと紀ノ川の青い空を楽しむ_和歌山 粉河寺

2019年03月14日 | 祭・行事・季節の花

3月も半分が過ぎ、九州から関東の太平洋岸ではまもなく桜の季節を迎えます。和歌山県の観音霊場として人気の粉河寺(こかわでら)は、和歌山の有数の花見スポットでもあります。

  • 大門から中門へ至る川沿いの参道が四季を通じて美しく、観音霊場へ向かう非日常感を盛り上げる
  • 堂々とした本堂と桜のコントラストが、西国三十三所札所として賑わう境内を一層華やげる
  • 石組だけで造られたここにしかない名勝庭園から見る本堂を借景にした光景は質実剛健


記録的に早かった昨年2018年よりも桜の開花は遅いものの、平年より少し早めの予想が目立ちます。紀ノ川沿いは桃の花も楽しめます。和歌山県は花とフルーツが抜群です。


本堂

京都国立博物館に寄託されている、鎌倉時代初期に製作された国宝の粉河寺縁起絵巻が、千手観音の化身である童男行者による奈良時代の創建話を伝えています。平安時代には、数々の文献に著名な観音霊場として清水寺等と並んで登場することから、寺勢を誇っていたと考えられます。

中世には近隣の根来寺(ねごろでら)ほどではないものの、広い寺領を有し繁栄していました。1585(天正13)年、根来寺と共に秀吉の紀州征伐にあい、伽藍は全焼します。国宝の粉河寺縁起絵巻にのこる焼損はこの時の火災によるものです。

現在の伽藍は、紀州徳川家によって江戸時代半ばに再建されたものです。堂々とした風格の大門・中門・本堂は重要文化財に指定されています。


川沿いの参道も桜が美しい

粉河寺の桜は、広い境内の随所に植えられていますが、濃すぎず薄すぎず、花の密度が絶妙です。伽藍そのものの美しさを横臥してしまうことなく、観音霊場としての非日常感と両立しているのも、粉河寺の桜の魅力です。

【ジョルダン 花見特集2019】粉河寺

駅や駐車場から進むと、大門が目に飛び込んできます。2F建ての立派な朱塗りの楼門で、粉河寺の観音霊場としての繁栄ぶりを感じることができます。大門をくぐると、右にゆるやかにカーブしながら川沿いの参道を進みます。参道には創建縁起に登場する童男行者の像がまつられています。

再び見えてくる立派な楼門が中門です。粉河寺に重要文化財の立派な門が2つもあることは驚きです。京都・奈良の大寺のような風格を感じます。本堂も西国三十三所札所ではかなり大きさが目立ちます。紀州徳川家が堂宇の風格にこだわったのでしょう。


名勝庭園

中門をくぐると広場になっており、正面に石組と蘇鉄が見事な庭園が見えてきます。この庭園は一段高い本堂との間にある斜面に、石組と植生だけで作庭したとても珍しい庭です。桃山時代を彷彿とさせる質実剛健な趣から、江戸時代初めまでの作庭と考えられています。

平坦な部分を庭に取り込まなかったことから、かえって庭が目につきやすくなっています。庭の横にも桜が上品に植えられています。庭と桜の見事なコントラストから、絶好の撮影スポットになっています。

参拝者が入ることができる礼堂部分の大きさが目立つ本堂は、とても多くの参拝者で賑わっています。西国三十三所の三番札所としての人気はすっかり定着しているようです。

粉河寺の本尊・千手観音は日本トップクラスの秘密のベールに包まれた”絶対秘仏”として知られています。なにしろ「見た」記録がまったくなく、本堂下の地中に容器に入れられて埋められているとされています。いわゆる「本当にあるかどうかもわからない」という極論もあるほどです。

さらに本堂内陣に安置されている御前立本尊も秘仏で、こちらも公開されたことはありません。御前立本尊は、絶対秘仏で名高い長野・善光寺でさえ6年に一度は開帳されています。2008~10年にかけての花山法皇一千年忌で、西国三十三所すべての札所で行われた秘仏開扉でも、粉河寺だけは御前立本尊すら開扉しませんでした。


十禅律院の築地門(竜宮門)

本堂右手奥の緩やかな坂を上がると、江戸時代に粉河寺から独立した天台宗の十禅律院(じゅうぜんりついん)があります。この坂からの粉河寺境内の眺めも抜群です。中国的なデザインの白い竜宮門で、特別な場所と感じさせている佇まいも秀逸です。

粉河寺は現在粉河観音宗の総本山ですが、天台宗に近いとされています。


紀ノ川には大きな青空が似合う

根来寺や桃の花が美しいあら川の桃源郷もすぐ近くです。天気のいい日は自転車による回遊をぜひおすすめします。JR粉河駅にレンタサイクルがあり、他の観光スポットの最寄り駅でも乗り捨て可能です。紀ノ川の大きな青空から春の陽気を存分に吸収することができます。

【わかやま観光情報】紀の川エリア観光レンタサイクル

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



司馬遼太郎が見出した紀ノ川エリアの魅力とは?

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粉河寺
【公式サイト】 http://www.kokawadera.org/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:00~17:00(本堂の内陣拝観)

※この寺は観光目的で常時公開されています。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
※境内の拝観・見学に条件はありません。いつでも無料で拝観・見学できます。



◆おすすめ交通機関◆

JR和歌山線「粉河」駅下車、北口から徒歩15分
京奈和道「紀ノ川東」ICから車で5分

JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:2時間20~40分
大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ御堂筋線→難波駅→南海高野線→橋本駅→JR和歌山線→粉河駅

【公式サイト】 アクセス案内

※鉄道は本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることをおすすめします。
※この施設には有料の駐車場があります。
※桜シーズンの現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


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