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京都・大徳寺・黄梅院 秋公開 ~苔をとても上質に見せる庭をぜひ一度。

2018年10月01日 | お寺・神社・特別公開

大徳寺の塔頭・黄梅院(おうばいいん)は、近年春と秋に限って特別公開が行われています。織田信長と小早川隆景ゆかりの寺で、大徳寺塔頭の中では比較的境内が大きいことから、有力大名らが多く訪れていたことをうかがわせます。

境内には安土桃山時代の面影が色濃く残されています。千利休作庭の庭や本堂ほか境内の大部分が現存しているためです。境内空間はとても上質です。庭を見ていると自然と背筋が伸びてきます。きちんと手入れされた苔の庭にも見入ってしまいます。黄梅院もとても個性のある塔頭です。


苔とのバランスがとても上質な唐門

黄梅院は織田信長が父・信秀(のぶひで)の菩提を弔うために1562(永禄5)年に創建しました。本能寺の変後に秀吉が、信長の菩提を弔うには黄梅院は小さいとして、大徳寺山内に新たな塔頭・総見院(そうけんいん)を信長の一周忌に間に合わせて創建します。

黄梅院はその後、毛利の小早川隆景(こばやかわたかかげ)の帰依を受け、1588(天正16)年から翌年にかけて堂宇が再整備されます。この際に建立されたのが現存する重要文化財の本堂・庫裏(くり)・唐門です。江戸時代は毛利家の庇護を受けていました。

京都の禅寺の多くは、本堂に向かう際に通る唐門に向かって庭を通り抜ける路地を設けます。黄梅院の唐門に至る路地は、周囲の庭に背の高い木が少なく、地面の苔を目立たせるようにデザインされています。そのため苔のキャンバスの上に唐門が置かれているように見え、ことさら落ち着いて上質に見えます。この唐門は黄梅院の見事な個性の一つです。

【京都春秋サイトの画像】 雲谷等顔筆 本堂障壁画(重要文化財)

本堂には、毛利家の御用絵師を代々務めた雲谷派の祖・等顔(とうがん)による水墨画の襖絵がのこされています。毛利輝元から雪舟画の再興を命じられた等顔らしく、大胆な描き方に見応えがあります。展示されているのは複製です。

庫裏にも安土桃山時代の禅僧たちの生活の雰囲気がのこされています。禅僧たちが忙しく作務(さむ)を行っている様子が目に入ってきそうな趣があります。

【京都春秋サイトの画像】 直中庭

利休の作庭と伝わる直中庭(じきちゅうてい)は、枯山水を白砂ではなく苔で表現した庭です。緑の海の中に、瓢箪型の池や加藤清正が朝鮮から持ち帰った小さな燈篭が浮かんでいるように見えます。白砂以上に空間に生命力を感じさせます。京都でもなかなか見られない見事な庭です。

【京都春秋サイトの画像】 破頭庭

本堂南側の破頭庭(はとうてい)は本堂の表を飾る庭として、大きく、静かで、上質に造られています。本堂建立と同時期の作庭と考えられています。庭の大部分を占める白砂の奥に、苔の緑と土壁の黄色のラインが目に入ります。このトリコロールが実に上質に見えます。木々や石はわずかしか配置されておらず、シンプルさも上質さを強調します。紅葉時には白砂に赤い落葉がちりばめられます。言葉も出ないほどの美しさです。


前庭の苔

信長・秀吉・毛利とトップクラスの権力者の庇護を受けてきた寺です。来客も相応の上流階級ばかりだったと考えられます。黄梅院の空間はそうした目の肥えた来客に合わせて造られているのだと感じます。こんな黄梅院の個性を、みなさんの五感でぜひ体験してみてください。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



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大徳寺 黄梅院
特別公開
【京都春秋 特別公開サイト】

会期:2018年10月6日(土)~12月9日(日)
原則休館日:10/28, 11/5-8
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00(11/11は~14:00)

大徳寺 黄梅院
【京都市観光協会サイト】

※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
※この寺は観光目的では常時公開されていません。公開は毎年春(3-5月頃)と秋(10-12月頃)の定期・特別公開時に限られます。

◆マナー教室◆

◇写真撮影の前に確認! 撮影可能か、立入禁止でないか、三脚や一脚が使えるか?
◇カメラのシャッター音は出ないように、特にスマホは注意!
◇カメラのフラッシュがたかれないように設定、光や熱が美術品を傷つけます!
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
 手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◇靴を脱いで室内を見学する場合、床汚れ防止のため、裸足なら靴下を持参しましょう。
◇庭を散策する場合、通路以外は立ち入り禁止!コケや芝生がふまれて死んでしまいます。



◆おすすめ交通機関◆

京都市バス「大徳寺前」バス停下車、徒歩5分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→地下鉄烏丸線→北大路駅→北大路バスターミナル「青」のりば→市バス1/101/102/204/205/206/北8系統→大徳寺前

【京都春秋 特別公開サイト】 アクセス案内

※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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