茶の湯文化の殿堂である京都・大徳寺が、秋の特別公開シーズンを迎えます。数多い塔頭や本坊は常時公開しているところが4ヶ寺しかないため、春と秋が大徳寺の美を堪能する大きなチャンスとなります。
興臨院(こうりんいん)は、能登の戦国大名・畠山氏と加賀百万石の前田氏ゆかりの寺で、室町時代の本堂と昭和の名作庭家・中根金作による前庭が絶妙に調和した空間が魅力です。禅寺らしく手入れが行き届いており、随所に可憐な花も見られます。もちろん紅葉も極上です。
興臨院は近年、春と秋に限って公開されています。大徳寺の塔頭はどこを訪れても間違いありません。拝観機会が比較的多い興臨院をぜひお楽しみください。
興臨院は、戦国時代真っただ中の大永年間(1521~1528年)、能登国を支配していた戦国大名・畠山氏の菩提寺として創建されました。その後、畠山氏は上杉謙信に滅ぼされますが、金沢の前田家が代わって寺を庇護するようになります。
明治の廃仏毀釈では相当の苦境に陥ったようで、本堂にあった狩野元信や土佐光信の襖絵が失われています。しかし1533(天文2)年頃建築の本堂をはじめとして表門・唐門といった室町時代の建築は今にのこり、重要文化財に指定されています。
受付を済ませ、開かれた唐門に向かって路地を歩きます。唐門の中には火打窓(かとうまど)があります。釣鐘型をした優美な窓はあたかも額縁のように、窓の中に見える本堂と前庭の美しさを引き締めています。
【京都春秋サイトの画像】 本堂と方丈庭園
本堂と前庭は大きすぎず小さすぎず、心地よい大きさです。室町時代の方丈建築を踏襲した低めの屋根が、その大きさにとても釣り合っています。
方丈前庭は1978(昭和53)年に完成した本堂の解体修理の際に、史料を基に昔の姿に復元されたものです。庭の奥に配置された木や石組は手前の白砂空間を邪魔することなくちょうどよい大きさに整えられています。
庭の借景には、南に隣接する瑞峯院の瓦屋根をあえて隠さずに見せています。その屋根が不思議なことに、借景として居心地よく収まっています。木々の配置はこの屋根とのバランスを計算したものではと感じました。中根金作らしい洗練されたデザインです。
本堂の縁側は広くとられており、人数が座ってもさほど窮屈感はありません。庭の大きさ、建物の大きさ、絶妙なバランスで居心地よく造られています。
大徳寺の庭は個性派ぞろいです。どの庭がみなさんのご贔屓か、じっくりと見比べてください。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
大徳寺 興臨院
特別公開
【京都春秋 特別公開サイト】
会期:2018年9月8日(土)~12月16日(日)
原則休館日:9/23, 10/1-5, 11/5-8
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00
大徳寺 興臨院
【京都市観光協会サイト】
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
※この寺は観光目的では常時公開されていません。公開は毎年春(3-5月頃)と秋(10-12月頃)の定期・特別公開時に限られます。
◆マナー教室◆
◇写真撮影の前に確認! 撮影可能か、立入禁止でないか、三脚や一脚が使えるか?
◇カメラのシャッター音は出ないように、特にスマホは注意!
◇カメラのフラッシュがたかれないように設定、光や熱が美術品を傷つけます!
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◇靴を脱いで室内を見学する場合、床汚れ防止のため、裸足なら靴下を持参しましょう。
◇庭を散策する場合、通路以外は立ち入り禁止!コケや芝生がふまれて死んでしまいます。
◆おすすめ交通機関◆
京都市バス「大徳寺前」バス停下車、徒歩5分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→地下鉄烏丸線→北大路駅→北大路バスターミナル「青」のりば→市バス1/101/102/204/205/206/北8系統→大徳寺前
【京都春秋 特別公開サイト】 アクセス案内
※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。
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