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京都国立博物館「京のかたな」 ~刀の”魔力”が誰でも理解できる

2018年10月02日 | 美術館・展覧会

京都国立博物館で「京のかたな」展が始まっています。メジャーな博物館・美術館で「刀剣」をメインテーマにした展覧会はほとんどなく、それだけ「刀剣」への関心が高まっていると言えます。会場には若い女性の姿も目立っています。

展覧会は、日本刀の歴史を永らくリードしてきた京都の刀工たちにスポットをあてています。”みやこのかたな”が造られた時代背景をふまえながら、時の武家や公家を魅了した名刀が紹介されていきます。各時代を物語る絵巻や肖像画の展示にも国宝が含まれています。中世の京のみやこの世界を楽しめるとても魅力的な展覧会です。



刀剣は、言うまでもなく武器として用いるための”道具”ですが、きらりと光る美しい肌には神秘的でもある魅力が刀工によって表現されています。包丁や大工道具といった他の鋼の刃を持つ道具にも、同じような神秘的な魅力を感じます。

現代で浸透している日本刀のイメージは、刀身が反っていて刃が片側にしかないものです。この形状は平安時代後期になってから一般的になったもので、それ以前は刀身に反りはなくまっすぐで、刃が両側につく諸刃(もろは)形式の剣(つるぎ)が多く見られました。

刀(かたな)の語源は「片側に刃がついている」という意味です。平安時代後期に、現代のイメージの”刀”の形状が一般的になったと考えられています。平安時代の戦は、歩兵ではなく騎馬戦が中心でした。刀身に反りがあって片刃の方が、馬に乗った武士が片手で抜きやすく格闘しやすい形状として浸透したのでしょう。



中世の刀の”産地”は、江戸時代に五箇伝(ごかでん)としてブランド化されています。需要が大きい地域と原料の鉄に恵まれた地域で構成されます。山城・大和・備前・美濃・相模の五か国です。京都のある山城は中世を通じて最大の刀の需要地であり、数多くの名刀工が登場しました。

【公式サイトの画像】 国宝 太刀 銘 三条(名物三日月宗近)

三日月宗近(みかづきむねちか)は、刀身が反っていて刃が片側にしかない現代のイメージでいう”刀”の形式として現存最古の平安時代半ばの作品と考えられています。三条派の宗近による作品です。刀身の肌に三日月の文様が浮き出ているのが見えます。1,000年以上に渡ってきちんとメンテナンスされていたことに、この刀の持つはかりしれない”美”の魔力を感じます。

【公式サイトの画像】 国宝 後鳥羽天皇像

後鳥羽(ごとば)天皇は、壇ノ浦の戦いで三種の神器を抱えて海に沈んだ安徳天皇を継いだ天皇です。三種の神器の内、剣だけは海から回収されなかったことは、後鳥羽天皇にとっては皇位の象徴である三種の神器が揃わない”コンプレックス”でした。そのため”神剣”に代わる新たな刀の創作に情熱を注ぎました。

国宝の天皇の肖像画は他に長福寺蔵・花園天皇像があるだけで、繊細なタッチで気品あふれる表情はまさに最高傑作です。

刀の名称(号)には作者や所有者など人名が多くつけられています。これは作者のサイン(銘)が、刀を握る柄(つか)の内部の茎(なかご)に彫られていることが多くあるためです。作者が作品にサインをのこすことは日本美術では珍しいですが、刀はあくまで武器として造られるため、品質を示す意味で銘がのこされたと考えられています。

刀の号の見方やパーツ名称、分類といった基本的な知識は、会場内パネルや公式サイトでも解説されています。とても勉強になります。また刀の見どころや見方を学べるワークショップも毎日開催されています。知識のない場合でも、刀の魅力を存分に味わうことができます。

【公式サイト】 京のかたな 鑑賞ポイント.pdf
【公式サイト】 「京のかたな」関連ワークショップ まぢかで見よう!はじめての刀


コラボ会場の明治古都館

会期中は、現在リニューアル工事中の明治古都館の中央ホールを使って、刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞」とのコラボ展示が行われています。日本美術への関心が拡がっていくのはとても喜ばしいことです。

【公式サイト】 「刀剣乱舞 -ONLINE-」コラボレーション

究極の金属工芸のでもある刀の”魔力”をぜひお楽しみください。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



カタナを美術品として理解するバイブルのような一冊


京都国立博物館
特別展 京(みやこ)のかたな 匠のわざと雅のこころ
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧会公式サイト】

主催:京都国立博物館、読売新聞社、NHK京都放送局、NHKプラネット近畿
会期:2018年9月29日(土)~11月25日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~17:30(金土曜は~19:30)

※10/14まで、10/28まで、11/11まで、11/13以降で一部展示作品が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。

◆マナー教室◆

◇写真撮影の前に確認! 撮影可能か、立入禁止でないか、三脚や一脚が使えるか?
◇カメラのシャッター音は出ないように、特にスマホは注意!
◇カメラのフラッシュがたかれないように設定、光や熱が美術品を傷つけます!
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
 手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◇庭を散策する場合、通路以外は立ち入り禁止!コケや芝生がふまれて死んでしまいます。



◆おすすめ交通機関◆

京都市バス「博物館三十三間堂前」下車、徒歩0分
京阪電車・七条駅下車、3,4番出口から徒歩7分
JR京都駅から徒歩20分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:10分
京都駅烏丸口D1/D2バスのりば→市バス86/88/100/106/110/206/208系統→博物館三十三間堂前

【公式サイト】 アクセス案内

※休日の午前中を中心に、京都駅ではバスが満員になって乗り過ごす場合があります。
※休日の夕方を中心に、渋滞と満員乗り過ごしで、バスは平常時の倍以上時間がかかる場合があります。
※この施設には有料の駐車場があります(公道に停車した入庫待ちは不可)。
※駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。

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