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方広寺・京都 ~京都にも大仏があった

2018年03月10日 | お寺・神社・特別公開


かの有名な「国家安康」「君臣豊楽」の銘文の鐘

方広寺(ほうこうじ)は、京都・東山にある寺で、かつて豊臣秀吉が造立した大仏がありました。また豊臣氏が滅亡する大坂の陣のきっかけとなった銘文が刻まれた鐘でも知られており、その鐘は現存しています。

豊臣家ととても縁の深い寺ですが、大坂の陣後も存続します。近隣にあった秀吉を祀る豊国神社が破却されたのとは対照的です。江戸時代を通じて京都市民に「大仏様」として親しまれてきました。明治になって再興された豊国神社と共に、太閤人気を今に伝えるスポットです。

秀吉は1586(天正14)年、現在の京都国立博物館の敷地にあった浄土真宗の佛光寺を移転させた跡地に「大仏」の造立を始めます。1567(永禄10)年に三好・松永の乱で頭部を失ったまま野ざらしになっていた東大寺の大仏に代わるものを京都で造ろうとしたのでしょう。

大仏参拝のために五條大橋を現在の松原通から現在の五条通に移すとともに、大仏の正門に至る東西方向の道「正面通(しょうめんどおり)」を開通させます。伏見と京を結ぶ「伏見街道」も整備します。大仏を交通の要所に位置させることで、より多くの人々の参拝の便をはかるよう仕向けます。秀吉にとって、自ら手掛けてきた京都復興の都市改造の象徴が「大仏」だったと思われます。

1595(文禄4)年に完成した大仏は、木造でしたが奈良の大仏14mよりはるかに大きい高さ19mもありました。大仏完成直後に秀吉が祖父母供養のために行った法要は、日本の主要な仏教宗派から千人もの僧を集める壮大なものでした。この時集まった僧に食事をふるまうための台所が、近隣の妙法院に現存する国宝の庫裏です。

しかし華やかな時は続きませんでした。秀吉の肝いりの大仏はその後、数奇な運命をたどります。

翌年に起きた慶長伏見地震で木造大仏は、完成後わずか1年で倒壊します。伏見城天守閣を倒壊させたことでも知られる大地震です。秀吉は倒壊したことで大仏の神通力を嘆き、代わって現在の長野・善光寺の本尊・阿弥陀如来を半ば強制的に移座します。秀吉が1598(慶長3)年に死の床につくと、善光寺如来の祟りだとして、阿弥陀如来は長野・善光寺に戻されます。

秀吉の死後、嫡男・秀頼は大仏を銅像で再興しようとします。造立中の事故による焼失を乗り越え、徳川家康も協力して1612(慶長17)年に大仏殿とともに完成します。しかし落慶法要を目前にした1614(慶長19)年、かの有名な「国家安康」「君臣豊楽」の銘文の鐘に徳川家から異議が唱えられ、翌年の大坂の陣に発展します。

大坂の陣後に大仏は、地震倒壊(1662年)→木造再建→落雷焼失(1798年)→小規模木造再建、とわずかながらに生きながらえてきましたが、それも1973年の火災で完全に失われます。現在大仏をしのぶことができるのは、遺された石垣のみです。


大仏前交番

京都人は、昔そこにあった施設の名称をそのまま残すことを好みます。京都国立博物館の敷地の西南角に位置する交番は「大仏前」と名付けられています。その名称を見た多くの人が「ここは奈良?」と思うほどです。

京阪電車・七条駅から京都国立博物館に向かうと上り坂になっています。京都の大仏は少し高台に位置する巨大建築で、現在の豊国神社の位置にありました。秀吉の時代から約200年間は、東寺の五重塔とともに、おそらくほとんどの京都市中から見えたと思われます。

徳川幕府は、豊国神社は破却しましたが、大仏は残しました。豊臣時代を思い起こさせる象徴にならないよう、大阪城のように完全に作り変えるようなこともしませんでした。京都の人心の把握のために遺した方がよいと考えたのだと、私は思っています。徳川はやはり太閤人気を凌駕することができなかったのです。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



方広寺の大仏が江戸時代の京都に与えた影響とは?


方広寺(KYOTO design サイト)
https://kyoto-design.jp/spot/2836

※梵鐘は、いつでも無料で拝観・見学できます。


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