美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

展覧会,美術,お寺,行事,遺産,観光スポット 美しい理由を背景,歴史,人間模様からブログします

韓国 慶州 仏国寺|日本の仏教美術の原点

2019年01月04日 | お寺・神社・特別公開

韓国の古都・慶州(キョンジュ)を訪れました。

日本の奈良のように、永らく歴史の表舞台からは遠ざかっていたことで、いにしえの趣が色濃くのこされている古都です。仏国寺(ぶっこくじ、プルグクサ)は、そうした趣を代表する空間です。世界遺産です。

  • 日本の奈良時代・8cの建立で、朝鮮半島を代表する歴史的な仏教寺院
  • 新羅時代の仏教美術が多数伝わり、韓国の国宝になっている
  • 伽藍は1,000年以上前にタイムスリップしたように美しい、大部分が現代の復元とは感じさせない


仏国寺を始めに慶州の美を、3回シリーズでレポートします。


山が借景になるよう計算された美しい伽藍

韓国にも古都と呼ばれる歴史的な都市がいくつかあります。かつて朝鮮半島を支配した王朝の主な首都をあげてみると、多くが現代の韓国と北朝鮮の大都市につながっていることが分かります。

紀元前1cに成立し7cまで鼎立した三国時代

  • 半島北部・中国東北部:高句麗(こうくり):平壌(ピョンヤン)、現在の北朝鮮の首都
  • 半島西南部:百済(くだら):泗沘(サビ)、現在の扶余(プヨ)
  • 半島東南部:新羅(しらぎ):金城(クムソン)、現在の慶州(キョンジュ)

10-14cまで半島を支配した高麗(こうらい)

  • 開京(ケギョン)、現在の北朝鮮・開城(ケソン)

14-20cまで半島を支配した李氏朝鮮(りしちょうせん)王朝

  • 漢城府(ハンソンブ)、現在の韓国の首都・ソウル


現在の慶州は、新羅が建国以来、首都・金城としていたと考えられています。新羅は、日本史でもよく知られる663年の白村江(はくそんこう)の戦いで、唐と連合して百済・日本の連合軍を破ります。668年には高句麗を滅ぼし、朝鮮半島を統一します。金城は仏教を篤く信仰した新羅の首都として、その後200年ほど繁栄します。

仏国寺は新羅の朝鮮半島統一以前からあったと推測されていますが、記録に見られるのは751年の景徳王の宰相・金大城による伽藍造立です。往時は首都を代表する大伽藍だったと考えられています。14c以降に儒教を国教とした李氏朝鮮王朝時代は、仏教が排斥されたため荒廃が進みました。復興が進むのは20cになってからです。


日本の寺の本堂に相当する大雄殿

日本の世界遺産に登録されている古刹は、数百年以上前に造られた伽藍がほとんどです。仏国寺は、伽藍のほとんどが20c以降の再建ですが、いにしえの姿がそのままのこっているような印象を受けます。日本の世界遺産・奈良・薬師寺と同じように、伽藍の大部分が違和感を思わせることなく復元されています。


奈良・法隆寺のように美しい廻廊

京都の寺のように庭園が目立つわけではなく、純粋に宗教空間としての佇まいが目立ちます。奈良の寺を訪れているようで、経過した時間の長さを感じさせます。山腹にそって段々に伽藍が設けられており、それぞれが廻廊に囲まれています。仏教寺院は本来、伽藍を廻廊で囲んでいます。廻廊の多くが現存しない日本の寺にはない、1,000年以上前の趣を感じることができます。


蓮華橋&七宝橋

入口から進むと、一段高い中心伽藍に至る橋が2か所架けられています。その一つが石造の蓮華橋&七宝橋です。8cの創建当初から存在すると考えられています。”ここからは聖域です”と、見事に俗世間との境界を示しています。廃仏毀釈で世俗化した日本の仏教寺院では失われた趣です。日本で言う神社に参拝するようです。


観音殿

建物は、日本でも中国でもない、中間的な印象を受けます。瓦葺きの屋根、室内は土間、壁がなく戸に覆われているが意匠は中国でも日本でもない、仏教が東に伝わった足跡をまさにのこしているようです。

毘盧殿に祀られている毘盧遮那仏坐像は、新羅時代の作とされる金銅製の仏像です。あでやかな金箔に覆われています。タイの仏像のように、圧倒的な存在感があります。

塔は、日本のように木造ではなく石造です。本堂の大雄殿(だいゆうでん)を囲む回廊の中に、ツインで建てられています。新羅時代の建立で、韓国の国宝に指定されています。いずれも古代を思わせるデザインが印象的です。日本の石塔の先祖であると、感じることができます。



仏国寺は日本の歴史の原点を象徴するような空間です。訪れてそのように強く印象づけられました。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



五木寛之が韓国の寺を語る

________________________________

仏国寺(プルグクサ)
【公式サイト】http://jpn.bulguksa.or.kr(日本語)
【韓国旅行情報サイト KONEST】 仏国寺(日本語)

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:7:30~16:00(3-11月は7:00~、2月・10月は~16:30、3-9月は~17:00)

※公開されていない仏像や建物・美術品があります。



◆おすすめ交通機関◆

高速鉄道KTX/SRT「新慶州(シンキョンジュ)」駅下車、700番バスで所要60分「仏国寺」バス停下車、徒歩3分
慶州高速バスターミナルから10/11番バスで所要40分「仏国寺」バス停下車、徒歩3分

新慶州駅まで ソウル駅からKTXで2時間、プサン駅からKTX/SRTで30分
慶州高速バスターミナルまで 釜山総合バスターミナルから50分

※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることをおすすめします。


________________________________

→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 奈良 西大寺 愛染明王の傑作... | トップ | 韓国 慶州 石窟庵|仏教美術... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

お寺・神社・特別公開」カテゴリの最新記事