ヒカルゲンジの自然と文化

自然と文化に関する気ままな日記

「研究者が語る”野生動物の生態”」 第三講

2015年02月22日 | 講義メモ
「霊長類の社会性・相互作用~嵐山モンキーパークのニホンザル~」
    京都大学野生性動物研究センター 特別研究員  花村 俊吉

 ・伊谷(1954)『高崎山のサル』⇒オスの役割行動、二重同心円構造
   ボス 「群れの役割」のための「侵入者に治する攻撃」
   ボス見習い
   若者組
   ヒトリザル
    ※昔読んだ記憶がある。特に「ヒトリザル」に興味を持った。
 ・最近ではボスなどいないというのが一般的
   繰り返し逃避するオスが多くの個体から離れており、逃避しない
   オスが多くの個体の近くにいる。
   逃避オスにも仲良しメスがいる、非逃避オスとも毛づくろいや近接
 ・嵐山ではメスは血統がすべてわかっている。(母系社会のため)
  オスの血統も最近のDNA鑑定で分かるようになった。それによると群れ
  の子供の父親は周辺の雄、あるいは別の群れの雄であることが多いこと
  がわかった。
 ・ニホンザルの群れの雌雄比はメスの方が多い、群れ外の個体ははオスの
  ため。特に餌付けの群れでは極端、メスが強いためオスの移入が少ない。
  (※?)

 人間は、動物、とくに霊長類の社会に人間の社会観を投影しがち。
  ただしこの営為は完全に避けられるようなものでなく、動物社会につい
  て探求する際に、ある種必然的に伴うものであり、そのことを自覚して
  自身の社会観を対象化しつつ、動物の社会にそれとの差異や連続性を 
  見出していくことが重要となる。
 (フィールドワークの真骨頂:「動物」を「異文化の人間」あるいは
      何であれ自己とは異なる「他者」に置き換えることができる。)


 
   ※植物観察についてもいえる!?

   ※この講座3回とも、一線の研究者の話が直接聞け、とても刺激になり
    面白かった。植物に関するこのような話が聞ける機会があればよいの
    だが。
 
                                           以上

「研究者が語る”野生動物の生態”」 第二講

2015年01月31日 | 講義メモ
「動物もストレスを感じるの? ~チンパンジーのストレスとその対処~」
    京都大学野生動物研究センター 特別研究員  山梨 裕美

 飼育下でのチンパンジーを主にした研究
 ・上位の個体より下位の個体の方がストレスを受けやすい。(攻撃を多く受ける)
 ・もっとも上位の個体αオス(昔ボスざると言っていた)の中でも、その性格に
  よりストレスの受け方が違う。俺が俺がのαより、優しいαの方がストレスを
  受けやすい。(※ヒカルゲンジメモ;統治の方法、やり方も違う? グループの
  安定性は?)
 ・アメリカでは動物園のチンパンジーを管理し、多様性を保つ繁殖計画を実施している。
  日本でも動物園間でメスの交換などを実施。(野生ではメスが成熟すると群れを出て
  他の群れに入る。」

  ※ アメリカの動物園が参加する組織、アメリカ動物園水族館協会:AZAでは、
   Species Survival PlanR Programs:SSPという繁殖計画を立てて飼育下チンパンジー
   の種の保存に取り組んでいます。チンパンジーSSPは、現在、約250のチンパンジー
   を管理しています。(サンクチュアリ プロジェクト HPより)

追記(2015.2.3)
 ・自己鑑像認識:ヒト(2歳~)、類人猿、イルカ、ゾウのみが可能。
   社会性、脳の大きさ(体全体に対する比)に関係か?
 ・動物愛護⇔動物福祉
       (※(ウィキペディアより) 展示動物に対しては;種特有の行動の発現を
         促して健康や繁殖といった生物機能を向上することで生活環境を改善
         させる試み)


                                  以上

「研究者が語る”野生動物の生態”」 第一講

2015年01月25日 | 講義メモ
チンパンジー社会における『文化』の形成・発達過程
     京都大学野生動物研究センター  特別研究員 西江 仁徳

(レジュメより) 
 チンパンジーの「文化」研究小史
  ・霊長類学者にとっての「文化」概念
    西洋:人間中心的、「高尚な知的活動」の体系
    日本:脱人間中心的、「社会的態度」や「社会構造」などの「日常的な」生活の仕方

  ・西洋の伝統的世界観:自然nature/文化cultureの二分法
   →自然nature=動物/文化calture=人間
   →文化caltureは自然natureから卓越した人間のみが持つ能力(=動物は「定義上」文化を持ちえない)
 
  ・今西(1952):霊長類の観察が始まる前にヒト以外の動物にも(カルチュア)が存在することを予言
   →「文化」という語の「高尚な知的活動」という含意を排し、「社会的に共有された慣習的生活様式」
    意味する語としての(カルチュア)

 「静かなる侵入」(de Waal 2003)
・日本霊長類学黎明期「カルチュア」研究の前提:ヒト以外の動物にも当然「カルチュア」があるはず!
   →日本霊長類学初期「カルチュア」研究の推進力
   →のちに西洋的な「動物=自然/人間=文化」の世界観に徐々に浸透

 道具使用行動:シロアリ釣り
  ・Goodall(1963)が最初に発見した野生チンパンジーの慣習的な道具製作・使用行動
   →L.Leakey:「今や『道具』を定義しなおすか、『ヒト』を定義しなおすか。それとも『チンパンジー』を
    ヒトと認めるしかない」

 *ヒカルゲンジメモ
  ・小説「猿の惑星」フランス人 ピエール・ブール 1963年発表 →米映画 1968公開
  ・山際寿一著『家族の起源 父性の登場』(1994年)より。(「共同体社会と人類婚姻史」より孫引き)
         食虫類=巣をもち夜行性の単独生活
             |
    6500万年前 原猿類=単独とペア型が併存
             |
    5000万年前 真猿類=多くが母系的な集団生活
             ├―――――――――――――――――┐4000万年前
       <狭鼻猿類>旧大陸のアフリカ・アジア     <広鼻猿類>新大陸の南アメリカ
             |
    3000~2500 |旧世界ザルと類人猿に分岐
    万年前      ├―――――――――――――┐
    2000万年前 旧世界ザル:母系       類人猿:非母系
            (オナガザル類)    2000万年前├――テナガザル類=ペア
            母系の単雄複雌    1300万年前├――オランウータン=単独
            または複雄複雌     700万年前├――ゴリラ=父系の単雄複雌
                       500万年前├――人類
                         250万年前├――ボノボ=父系の複雄複雌
                            チンパンジー=父系の複雄複雌

                                               以上