晴山雨読ときどき映画

“人生は森の中の一日”
山へ登ったり、本を読んだり映画を観るのは知らない世界を旅しているのと同じよ。
       

菫に寄せて

2009年04月06日 | 植物
 

菫は日本で60種類、世界では400種類もあると言われ、各国から愛されている花です。英語圏では”violet”ですが、やはり日本と同様に"modesty”で謙虚さの代名詞となっていました。
ナポレオンのスミレ好き、文豪ハイネは菫を「碧い春の眼」と喩え、ゲーテはスミレをポケットに入れて散策したとか有名な話ですが、イギリスの詩人ワーズワースに『ルーシー詩篇』がありました。全文を紹介します。
        ダウの泉の傍らで
        称賛されることもなく
        愛されることもなく

              岩畳に咲いた一輪のスミレ
              人の目をはばかるように
              星のような清楚な姿は
              ひそかな輝きを放っていた

                       人知れず生きたルーシーは
                       誰も知らないままに死んだ
                       彼女は墓の中で眠る
                       私にとってかけがいのない人
       2連目は原文にすると
              violet by a mossy stone      
              Half hidden from the eye!
              Fair as a star, when only one
              Is shining in the sky.

       (苔むした石の下に半ば人目を忍ぶように咲く菫は
                夜空にひとつぶきらめく星のように美しい)

かつて想いを寄せたルーシーに可憐な菫の花をたとえて読んだ詩中で、菫を夜空にひとつぶきらめく星との表現はとてもロマンチックに感じられます。いっぽうどこにでもある菫を素朴に詠った日本の描き方も大げさでなくて好きでした。どちらも納得できる私です。

「春の野にすみれ摘みにと来し吾そ 野をなつかしみ一夜寝にける」万葉集より山部赤人 
「山路来て 何やらゆかし すみれ草」芭蕉
「跡絶えて浅茅しげれる庭の面に誰分け入りて菫つみけむ」西行
「菫ほど 小さき人に 生まれたし」   夏目漱石
「骨こつ拾ふ 人にしたしき菫かな 」  与謝蕪村
「手にありし菫の花のいつかなし」    松本たかし

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6 コメント

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コートにすみれを (タク)
2009-04-07 05:33:54
ワーズワース、懐かしいですね~
学生時代、読みました。
菫、多くの文人が詠んでますね~
私も菫が大好きです。
でも、
「菫には深入りしない方がイイ」
と、そよかぜさんに言われています。
それほど奥が深く、菫の世界に足を踏み入れると抜け出せなくなるからではないでしょうか?

学生時代、みなみらんぼうの「コートにすみれを」という曲が好きでした。
http://www.youtube.com/watch?v=wbCUDiw2oCY
同じタイトルで、コルトレーンのジャズの名曲もあります。
こちらも素敵です。
この他にも、菫を題材にした曲はたくさんありますね。
多くの芸術家に愛される菫は、本当は逞しい花ですが、その儚げな風情が好まれるのでしょうね。
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スミレ (yan)
2009-04-07 21:18:10
bambooさん、こんばんわ。

スミレ、ノジスミレ、エイザンスミレ、シハイスミレ…日本では60種類 そんなに種類があるとは驚きました。

こちらの山でも、スミレちゃんは多く咲いていますので、心がいやされます。

〉(苔むした石の下に半ば人目を忍ぶように咲く菫は、夜空にひとつぶきらめく星のように美しい)

こころが打たれる名詩ですね。

そして日本の句も素晴らしいものがあります。

素晴らしい詩、句をありがとうございました。
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春を愛する人は♪~ (ばんぶ~)
2009-04-07 21:55:24
>「菫には深入りしない方がイイ」
と、そよかぜさんに言われています

今日アカバナルリハコベを観に野母崎まで出かけ、ツクシスミレも初めて知りました。一見ニョイスミレに似ていて小さなリボンのようなお顔です。とても愛らしく、たぶんタクさんもお好きでしょう。そこでもスミレは敬遠されていましたね。

「コートにすみれを」も初めてでした!フォーク時代に学生時代を送った私たちは、ギターをつまびくらんぼうの雰囲気がとても懐かしいですね。

>多くの芸術家に愛される菫は、本当は逞しい花ですが、その儚げな風情が好まれるのでしょうね
今回あれこれ調べて、スミレは見かけによらず逞しい生命力の持ち主であるのを知りますますファンになりました。
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スミレ諸々 (ミラ)
2009-04-08 08:41:41
昨日はお疲れ様でした。
「シマキケマン」に始まり、お初の花巡りで最後はあの愛らしい「ツクシスミレ」でしたね~(*^^*)

最後に見た街中での木の花バラ科の「ザイフリボク」枝先で白く集まった花の様子を武将が指揮に使う「采配」に見立てたと言う事でした。
我が家の近くに一本あるのでこの時季は眺めています~サイハイランもそんな謂れがありましたね。
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ミラッチさんへ (bamboo)
2009-04-08 08:58:49
ブログを拝見してきました。アップの早さはさすがミラさんですね。
昨日はお世話になりました。チョッとどころかだいぶ欲張ったドライブとなり、運転者は大変でした。お疲れ様でした・・・また、お世話になりそうですが、よろしくね(*^_^*)
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yanさんへ (ばんぶ~)
2009-04-08 09:02:22
>苔むした石の下に半ば人目を忍ぶように咲く菫は、夜空にひとつぶきらめく星のように美しい

色んな訳がありましたが、この訳が一番好きでした。昨日また新しいスミレを教えて貰いました。ツクシスミレを取り急ぎ掲示板へアップしています。良かったらご覧下さいませ。
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