閏4月
しだれ柳は老いぼれて
井戸の底には くっきりと
碧空のかけらが落ちて
いもうとよ
ことしも郭公が鳴いていますね
つつましいあなたは 答えないで
夕顔のようにほほえみながら
つるべにあふれる 碧空をくみあげる
径は麦畑の中を折れて
庭先の杏の花も咲いている
あれはわれらの家
まどろみながら 牛が雲を反芻している
ほら水甕にも いもうとよ
碧空があふれている
しだれ柳は老いぼれて
井戸の底には くっきりと
碧空のかけらが落ちて
いもうとよ
ことしも郭公が鳴いていますね
つつましいあなたは 答えないで
夕顔のようにほほえみながら
つるべにあふれる 碧空をくみあげる
径は麦畑の中を折れて
庭先の杏の花も咲いている
あれはわれらの家
まどろみながら 牛が雲を反芻している
ほら水甕にも いもうとよ
碧空があふれている
(↑本書にある詩は金鐘漢の『たらちねのうた」を変奏したもの)
江戸時代中期を舞台に一人の対馬藩士が活躍します。李氏朝鮮の日本使節団「朝鮮通信使」を軸として、日本から朝鮮半島、モンゴル、中央アジアへと舞台が展開していくスケールの大きな物語です。若者の名は阿比留克人(後に金次東となる)。彼が繰りなしていく、自らの道理と使命に身を賭す壮大な冒険ロマンに、私はどっぷり引き込まれ酔いしれました。彼は対馬に古来伝わる阿比留文字の継承者でもあり、この文字が政治の舞台で「暗号」として用いられ、物語は進みます。[許されざる者」「闇の奥」も面白かったけれど、それを凌ぐような作品です。宗家文庫に書き残された膨大な資料、間者だけが知っている朝鮮半島を短距離で結んだ「銀の道」、幕府と対馬の関係など、どこまでがフィクションなのか分からなくなりました。そして彼の作品には時を超えた純愛が流れているので退屈させません。読み終えて、阿比留克人は、ただ対馬を救うためだけに命をかけて使命を果たしたとは思えません。彼の生き方を貫いた結果がそうだったのだろうと思います。
対馬の美しい海と朝鮮半島、韃靼の山並みの景観が似合う小説です。映画化を望みます。
「対馬を主人公のようにして、いつか長い小説を書いてみたかったんです」。以前、別の小説の取材で対馬を訪れた時から『韃靼の馬』の構想を温めてきたと、辻原さんは語っています。(←クリックしたらインタビュー記事)
主人公の対馬藩士・克人が帰って来る、雪のようなヒトツバタゴの花が咲く対馬の鰐浦に行きたくなりました。
ありがとうございます。
日経新聞で連載されていたらしく、阿比留の子孫にあたる対馬の方々が興味を示され、これは誰々の家系ではなかろうかと投稿が連なるサイトもありましたよ!
話題を呼んだようです。
これを読み、息子達が違う場所で生きていくのがさほど辛く感じられなくなりました。克人の妹や母らの気持ちに比べればたいしたことなどありません。
今日、図書館から小暮写真館が届き、読むのが楽しみです。
対馬に5月にまでは行きたいと思っています。さゆりさんと一緒の方が実現できそうです