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マックスウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」

2023-09-25 22:17:00 | 西洋哲学

【プロテスタント】
 宗教改革によって、カトリック教会から分離独立したキリスト教諸派の総称を「プロテスタント」と言います。プロテスタントには、カトリック教会のような全体を統括する組織がありません。その中心となった人々は、自作農民や都市の独立職人などの中産階級です。プロテスタントの生活態度は、世俗内にあっても、禁欲的で規則正しく勤勉でした。そうした精神を「プロテスタンティズム」と言います。プロテスタンティズムは、中世の魔術的な精神と異なり、合理的でした。その合理的な精神が、近代の資本主義を発展させたと言われています。

 プロテスタントは、聖書を信仰の拠り所としました。なぜなら、神と直接対面するのは、教会ではなく聖書を通してだと考えたからです。それを「聖書主義」と言います。聖書主義では、信仰によって、人々は救われるものだとされました。また、プロテスタントでは、全ての信徒が聖職者だとされます。そのため、特定の聖職者がいませんでした。それを万人司祭主義と言います。

【禁欲的な生活態度】
 プロテスタントの一派「カルヴァン派」が強いのは「オランダ」「イギリス」「アメリカ」です。これらの地域で、資本主義が発展したのは偶然ではありません。プロテスタントは、利潤の追求を倫理的なものとして正当化しました。正当な労働から得られる利益の獲得は、神の恵みだと考えたからです。信徒は、神の道具となり、仕事によって神の栄光を地上に実現しようとしました。そのために、日常生活の全てを信仰と労働に捧げます。プロテスタントは、地道に節約し、浪費することもしませんでした。その禁欲的な倫理が「資本蓄積」を促し、近代資本主義の精神につながったとされています。資本蓄積とは、労働で得た利益を貯蓄することです。その貯蓄された利益は、社会のために「再投資」されました。

【カルヴィニズム】
 プロテスタントには、カルヴァン派やルター派などの宗派がありました。カルヴァン派の思想を「カルヴィニズム」と言います。その生活スタイルは、快楽を放棄し、禁欲的に労働に励むという厳格なものでした。それが、産業資本主義の「地ならし」になったとされています。プロテスタントのそうした生活は、信仰と結びついていました。なぜなら、労働によって、良質な商品やサービスを人々に提供することが「隣人愛の精神」だったからです。カルヴァン派の人々は、労働の成果のうちに救い求め、自らの生活を律しました。その労働こそが、神の栄光を地上に実現するための働きだったからです。彼らは、一切の快楽を捨てて、再生産や資本蓄積に労力を注ぎました。そうした姿勢を世俗内禁欲と言います。

【救済予定説】
 カルヴャン派には「救済予定説」と言うものがあります。救済予定説では、神の主権は絶対的なものです。プロテスタントでは、人間は、神に絶対的に服従すべき者とされています。教会や聖職者などを神聖視せずに、神のみを絶対的なものとしました。プロテスタントでは、全ての人間は、絶対的な神の前では平等だとされています。その神の意思を、不完全な人間が、知ることは出来きませんでした。また、神が人間の行為や意思に左右されることもないとされています。救済予定説では、全ての物事を決めるのは神だとされ、救済される人間も、あらかじめ決まっていました。しかし、人間には、自分が救済されるかどうかは分かりません。それが分からないからこそ、日々の労働と隣人愛の精神を実践すべきだとしています。

【職業召命観】
 ルター派には「職業召命観」と言うものがあります。職業召命観とは、世俗的な職業こそ、神から与えられた使命だという考え方です。信徒は、選ばれた職業労働によって、直接神に奉仕しました。労働をすることが、神に応えることだったからです。人間は、それによって救われると考えられました。プロテスタントは、自己の労働を時間で管理しています。そのため、規則正しく勤勉な労働態度でした。プロテスタントは、カトリックの修道士のように、世間からは隠遁していません。むしろ積極的に世の中に出て働きました。プロテスタントは、信仰と労働によって、全生活を神に捧げていたからです。

 一般的にカトリックの国は、生産性が低いとされます。プロテスタントの国に比べて、実質的な労働時間が少ないからです。また、カトリックでは、聖と俗が分離しています。そのため、カトリック教徒は、世俗においては享楽的でした。ただし、カトリックの聖職者は、世俗から離れています。聖職者には、聖域で信徒の魂を救うという任務があったからです。



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