【アフロディーテ】
ギリシャ神話のアフロディーテは、英語でヴィーナスと言います。アフロディーテは、天空神ウラノスが、息子のクロノスに去勢された時、海に落ちた血の周りの白い泡から誕生しました。このエピソードは、はじめに殺害があり、そこから永遠の生命が誕生したという意味だとされています。誕生後、アフロディーテは、西風によって、キュプロス島に運ばれました。アフロディーテは、金髪の美しい女神だったとされています。そのため、神々の王ゼウスに気に入られ、その養女となりました。アフロディーテは、海の泡から生まれた海の女神です。そのため、図像などでは、貝殻や真珠を持っています。
【象徴】
アフロディーテは、色んな所で象徴として使われています。例えば、トランプのハートのクイーンは、アフロディーテがモデルです。♀のマークも、アフロディーテが手鏡を持っている姿を図案化したものだとされています。アフロディーテのシンボルカラーは「緑」と「青」です。そこから緑の「エメラルド」と青の「ラピスラズリ」がアフロディーテの宝石だとされています。鉱物では、銅がアフロディーテの金属です。惑星の金星にも、ヴィーナスの名前がつけられています。そこから、金曜日もヴィーナスの日となりました。芸術作品では、ミロのヴィーナスが有名です。
【愛の女神】
アフロディーテと言えば愛の女神です。愛の女神なので、異性への愛や欲望をかき立てることが役目だとされています。アフロディーテが司るのは「性」「欲望」「肉欲」「愛欲」「性交」などです。女神自身も、恋愛に対しては自由奔放で、恋が職業のようなものでした。 そのため、貞潔な三人の処女神「アテネ」「アルテミス」「ヘスティア」とは対立関係にあったとされています。アフロディーテの聖鳥は「スズメ」です。スズメは「好色」や「夫婦仲」の象徴とされています。そのスズメの卵は、媚薬として使われました。 アフロディーテは、愛の女神なので、ハート形の盾を持っています。ケストス「情景の帯」と呼ばれる魔法の宝帯は、アフロディーテを象徴する持ち物です。その帯は「愛」「憧れ」「欲望」を呼び起こすことが出来ました。
アフロディーテの恋人は、軍神アレスです。アレスは、神々の中でも、若くてハンサムでした。アフロディーテは、恋した相手を絡め取る黄金の手網によって、アレスを捕らえ虜にしたとされています。そのアレスとの間に生まれた子供が、テーバイの女王ハルモニアです。一説では、最高神ゼウスとの間には、エロスを産んだとされています。アフロディーテは、恋愛に自由だったので、子沢山でした。そのアフロディーテの夫だったのが、神々の中でも醜いとされる鍛冶屋の神ヘパイストスです。ヘパイストスは、愛妻家だったとされています。ある時、ヘパイストスは、妻とアレスとの不倫の現場を押さえ、魔法の網で捉えました。ヘパイストスは、きわめて忍耐強い性格だったとされています。そのため、どんなに浮気をされても妻を許しました。
【豊穣の女神】
アフロディーテの起源は、古代シュメール人の大地母神イシュタルです。性や愛というものは「繁殖」や「豊穣」と関連付けられます。そのため、アフロディーテは、生命を授ける豊穣の女神ともされました。アフロディーテの聖なる植物は、豊穣のシンボルであるケシです。そのケシは、媚薬として使われました。アフロディーテが好んだ花は薔薇です。薔薇のトゲは、息子のエロスを刺したミツバチの針を変えたものだとされています。アフロディーテの聖獣は「ウサギ」です。ウサギは、生殖や多産の象徴だとされています。果実では、ザクロやリンゴがシンボルです。
アフロディーテは、美少年アドニスと恋愛関係になりましたが、嫉妬したアレスが、猪に変身して狩猟中のアドニスを殺しました。死んだアドニスの血からは、アネモネが咲いたとされています。そこからアドニスは、死んで蘇る穀霊神とされました。
【ローマ時代】
ローマ時代には、元来のローマの神々とギリシャの神々との習合が進み、アフロディーテも、農園や庭園の女神ウェヌスと同一視されました。アフロディーテは、計略が得意だったとされています。そのため、謀りごとの織り手と呼ばれました。一説では、パリスの審判で、アフロディーテが、最も美しい女神に選ばれたのも、他の女神を出し抜いたからだとされています。パリスは、トロイアの王子だったので、トロイア戦争では、常にトロイア側を支援しました。人間の英雄との間に出来た子供が、トロイアの英雄アイネイアスです。アイネイアスは、敗戦後イタリアに亡命し、カエサルの先祖になったとされています。