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墨子10論について

2024-03-05 19:33:00 | 中国哲学

①【兼愛、けんあい】 

 墨子は、全ての人を公平、無差別に愛する博愛主義者でした。それを「兼愛」といいます。兼愛とは、自他の区別なく、他人を自分自身と同様に愛することです。それに対し、儒家の愛は、家族や年長者などと限定されています。墨子は、これを「別愛」とよび、差別的な愛だとして批判しました。 戦争の原因は、たいてい利益の不公平です。そのため、墨子は、兼愛の精神で、利益を平等に分け合えば、戦争を防ぐことが出来るとしました。

 ②【非攻、ひこう】 

 人間は、富の生産者であり、貴重な労働力です。そのため、墨子は、多くの人命が失われる戦争は、国家全体の利益からすれば、大きな損失となるので批判しました。しかし、相手が攻めてきた場合は、それを防衛する必要があります。 墨子は、侵略戦争は否定しましたが、防衛のための戦争は肯定しました。その墨子の反戦論を「非攻」と言います。

 墨子は、当時、賤しい階層とされた手工業者の出身でした。そのため「冶金」「土木」などの巧みな工学技術を持っていたとされています。「墨者」と呼ばれる築城術に長けた技術者を組織し、主に守城戦で活躍しました。ちなみに「墨」とは、受刑者のことです。墨者は、信仰的な結びつきのある集団だったとされています。 

 ③【尚賢、しょうけん】 

 墨子は、優秀な人材を正当に取り立てようとする能力主義者です。それを「尚賢」といいます。「尚」とは、尊重するという意味です。墨子は、儒家的な世襲的身分制に反対し、人材登用において、家柄ではなく、能力がある者を役職つけるべきだとしました。

 ④【尚同、しょうどう】

 墨子は、能力がある者が考えたルールに、社会全体が従うべきだとしました。それを「尚同」と言います。国家を運営するためには、優れたルールの方が効率的です。また、国民がそのルールを守れば、秩序も安定します。

 ⑤【節用、せつよう】 

 墨子は、奢侈「しゃし」を戒め、節約を主張しました。奢侈とは、贅沢のことです。無駄を省き節約することを「節用」といいます。墨子は、無駄に浪費するより、実用的な分野に投資した方が、国家の利益になるという現実主義的な考え方でした。

 ⑥【節葬、せっそう】

 墨子の節約は、葬儀や祭礼にも及びます。葬儀にかかる費用は、最低限に簡素化すべきだとしました。その費用は、生きている人々に活用すべきだと考えたからです。この点、祭礼を重視する儒家とは対立しました。しかし、墨子は、葬儀を軽視したわけではありません。葬儀の方法を明確に定め、墨者たちに徹底させました。

 ⑦【非楽】

 墨子の節約ぶりは、芸術の分野にも及び、特に音楽は、君主の奢侈だとしました。音楽を否定することを「非楽」といいます。実用的なものを好む墨子にとっては、音楽は無駄なものでした。音楽は、娯楽であって、生産的な労働ではないと考えたからです。この点においても、音楽を重視する儒家とは対立しました。

 ⑧【非命】 

 墨子は、反宿命論者でした。反宿命論のことを「非命」と言います。墨子は、努力して働けば運命は変えられるものだとしました。反宿命論の方が、勤労意欲が促進され、生産力は上がります。それに対して、儒家は、宿命論でした。宿命論とは、全ての物事が決定しているという考え方です。しかし、それには、人々が無気力になってしまうという欠点がありました。

 ⑨【天志】 

 墨子は、全ての物事を決めているのは、天帝「天」と呼ばれる最高神だとしました。天帝は、絶対的な人格神です。その天帝の意志のことを「天志」といいます。天志は、正義であり、それに背けば、災いが起こると考えられました。 

 ⑩【明鬼】 

 墨子は、善行を勧め、悪行を抑制するため、鬼神を想定しました。鬼神の存在を明らかにすることを「明鬼」といいます。鬼神とは、死者が変化したもので、善悪に応じて賞罰を与える倫理の管理者とされています。それに対して、儒家は、分からない存在である鬼神については、語ろうとしませんでした。




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