【プリコラージュ】
レヴィ•ストロースは、未開人の思考を「野生の思考」と名付けました。その野生の思考を、未開人の日曜大工的な器用仕事に例えたのが「プリコラージュ」です。プリコラージュは、未開社会の特徴的な思考方法でした。その語源は「ごまかす」や「つくろう」です。未開人は、あり合わせの素材を寄せ集めて、当面の生活に必要な道具を作っていました。プリコラージュは、現代の工業製品のような設計図のある量産的なものづくりでありません。つぎはぎ細工的な柔軟なものづくりです。例えば、ものが壊れた時は、自分で修繕します。プリコラージュとは、計画的ではなく、その場の状況に応じたモノ作りです。そのため、最初の意図と合わないこともよくあります。プリコラージュは「ゆらぎ」や「ズレ」を持っているため、常に次のものが作られました。
【具体の科学】
プリコラージュは、文明の「基層」に存在するものです。未開社会にも、近代科学と同様の「分類の論理」が働いています。西洋の学問は、体系化された「科学的思考」です。それに対し、プリコラージュは、西洋の学問ほど科学的ではありません。しかし、一種の学問的な思考をしています。プリコラージュは、概念ではなく記号を用いた思考法です。その手法を「具体の科学」と言います。具体の科学に対して、現代人は、抽象な概念を用います。概念とは、特定の用途に合うように、作り出された知的な道具のことです。そのため、正確で無駄がありません。概念に対して、記号は、日常生活にある動物や植物を用います。未開社会には、抽象的な概念が存在しませんでした。具体的な記号を用いて、世界を表現していたからです。
【臨機応変】
プリコラージュは、意図的に、何かを完成させようとする目標を持っていません。そのため、計画的ではありませんでした。それは、その場の状況に応じた既存の諸事物の組み合わせです。臨機応変な相関関係による意味づけで、新たな記号の配列が作り出されました。プリコラージュは、一貫しない断片の組み合わせです。しかし、結果的には、秩序が生み出されます。また、プリコラージュは、ちぐはぐな材料で、組み立てられた意味の総体です。
【神話】
意味の総体の一つが神話という「世界観」です。世界観という枠組みは、集団的な信仰に基づいています。もし、世界観が無ければ世界を認識することが出来ません。世界観は、神話や宗教、または科学だったりします。それらには、共通のパターンがありました。ただし、それぞれの表現方法は違います。プリコラージュは、神話に特徴的な思考パターンです。その思考は、神話において働いています。感覚的に知覚した諸要素は、プリコラージュによって、関係性の中に組み込まれ、意味を持った神話に作り上げられました。神話とは、さまざまなエピソードの寄せ集めです。それには、いろんなバージョンがあります。そのため、一貫しているわけではありませんでした。
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