上路(アゲロ)に山姥伝説が残っていて時々訪れる人がいる。週末には年老いた母の見舞いがてらに帰ったときテレビの現地取材に遭遇することとなった。茶の間にかざってあった謡曲「山姥」の「山廻り」の額縁を紹介していたら「踊り岩」の話が出てアサヒグラフに特集されたことや、何年か前に撮った写真があることを言ったら見たいという。結局メールで送るような羽目になった。家に帰ってしまいこんであったアサヒグラフやパワーポイントに貼り付けてあった写真を探したらFDで残っていた。さっそく、宅急便で送った。もう9年もたっていたなんて思いもよらぬほど昔のことだ。踊り岩とそこに置かれている石仏を雪を掘り出して写真に収めた。山姥が住処とするにふさわしい踊り岩なのだが写真に収めると何と無くうすっぺらな感じで精霊が住む聖域の感じがしない。その日は快晴であったので例年だと雪に埋もれて寝正月を迎えるパターンであったが一念発起して手ぬぐい1本持って出かけたのであった。途中、わさび田や五葉松の群生地などを辿って一部藪こぎしながら約2時間程で到着した。踊り岩の石仏に手を合わせそそくさと帰り支度をしながら耳に染み入る滝の音を聞いた。帰路であるが上路集落を目指してまっしぐらに降りすぎて滝に阻まれて必死のトラバースで逃げ帰ってきた。穏やかな山姥も山の掟を破ればけっして許してはくれない。
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