目の前にあるものが
ほんの一部だなんて
思うには大きすぎて
認めるのには重すぎて
噂話も自慢話も
ひとつ向こうの異世界で
自分にふりかからなければ
どこか離れた物語
機織りの姿を覗いたような
後ろめたさと驚きが
のちの自分にプラスになるなら
いつもの場所の一歩先まで
進めばわかる期待と後悔
どこにいてもほんの一部
どんなに空が澄んでいても
遠すぎてその高さは分からない
良く解ってくれるとか
一番心配してくれるとか
自分から発信する信頼は
相手が受け止めてくれるから
澄み切った空でも
雲を誘い雨に隠れて
すべてのモノを上と下に分ける
反対側の違いを見せず
たったひとつを真ん中にする
人は皆
自分を照らす太陽を求めるから
変わらずそこにいるモノを
信じながら空を見る
信じたくて手を伸ばす
順番待ちの長い列が
軒下の滴に途切れる
はみ出すことを怖がって
真後ろを保っていたけれど
物言わぬ後ろ姿が近くて遠い
一歩進む度
期待に揺れる空気に押され
流されるままの足元を見る
空想の世界を雨が消しても
雨粒の間を縫うように
また新しい今が来る
あの日の笑顔だったと知れば
悲しいような切ないような
戻れるはずはないけれど
あの日があるから今日があるとは
言いたいような言えないような
自分の心のざわめきさえも
知らない振りして通り過ぎて
思わなくても今が増える
時の長さが動く分
心の中身も変わり続け
いいこともわるいことも
分別するのはひとりずつ
覚えていても忘れたくても
窓越しの紫陽花が
絵画みたいな色を付ける
雨の滴だけ転がって
いつか見た風景が動く
何か思い出せなくて
どこまで遡ればいいのか
ひと粒ひと粒落ちるたびに
締め付けられる泣き顔が
浮かびそうでぼんやりと
心の窓を曇らせた