いっくら 慎重に傘をさしても 斜めにかけたカバンは濡れる
なには ともあれ まず朝めし 気心しれた いつもの蕎麦屋
こわばった 肩をすくめて 両手こすって はぁ~っと 息かけ あっためて
小銭つまんで 券売機
きつね 1枚 おにぎり 1枚
カウンターに食券2枚 “ 温でそば たらこ ”
KIRIN とかいた グラスをとって 冷水機でまず一杯
寒いし 雨だし 早朝7時 路面の蕎麦屋 けっこう繁盛
“ キツネ たらこ おまぁちぃ~ ” すかさず カウンターに駆け寄って
今日のサービス 野菜かきあげ
あっざぁ~っす 一声
今朝は 二八の大将(そば屋店主) 機嫌がいいや
おにぎり でっかい 二割増し
狐そばに 天ぷらついて おまけに でっかい 握り飯
本気にならなきゃ 喰いきれない。
割りばし 手に取り その手を合わせて “ 頂きます ”
ひととおり 提供終わって それぞれに 無言で掻き込む そば うどん
二八の大将 厨房とびだし 端の客から 声かけて
“ 来年のカレンダー ” よかったら使ってよ。
ハンドル握って二十年 03無線さん “ この前 もらったよぉ ”
空調工事の魔術師 微風さん “ おれも持ってるよ ”
就職活動中 プーさん “ ぁりがとぅございます・・・ ”
疲れた口癖 御隠居無職 “ もう曜日なんか みないよ 俺は ”
二八の大将 “ なんだよ ほしきゃ いんだよ 二冊でも三冊でも ”
いよいよ つぎは こちらに来ます
カレンダー小脇に抱えて すまし顔
“ もう あげたっけぇ 来年のカレンダー ? ”
“ 大丈夫です ”
自分に問う いったい なにが 大丈夫?
ほんとうに 俺は “ 大丈夫 ”
二八の大将 “ そう? えんりょすんなよぉ? ”
大盛分は 残せても
サービス分は 残せない
限界ギリギリ 腹いっぱい
暖簾 こじあけ ふり向いて
“ ごっつぁん ” 一言
見上げた空は 薄曇り
きょうも一日 労働日和
号砲かわりに ゲップをひとつ
会社に到着 ポストを開ければ
タウンワークからの贈り物
こころも温めて ホッカイロ 新春カイロ
今日はなんだか 貰う日だ。